題名:「ヘル・ストリートの罠」

「ヘル・ストリートの罠」

日本アルプス―

明治初期に来日した英国人牧師・ウエストンによって命名された、
飛騨・木曾・赤石、三つの山脈の総称。
今でこそ清冽なイメージを持つこの地帯だが、日本古来の山岳信仰を良く知っている者には
それほど安心できる場所ではない。いや、知っていようといまいと、多少の霊感を持ち
注意深い性格の人物ならば......この場の剣呑な空気に気付くはずであった、が。

「幽幻影洞穴だって...?
  んーと、この地方の魑魅魍魎伝説の発生地はこの洞穴であり...」

若い二人の登山者の前に口を開ける岩穴。
山岳地に限らず、こうした穴は昔からある種の信仰の対象になる。
注連縄が張られた鳥居......普通なら一般人にでも効果のある封印、もしくは仕切り。
連綿と受け継がれてきた伝統というものは、その意味を知らずとも「なんとなく」
そこから先への歩みを止めさせてしまう。

しかし、間違っても正式な鳥居の形状とは言えない奇妙な造形は、興味本位の心を掻き立てる。

「おもしろそうじゃないか... ねえ、はいってみない...?」

男が誘う。表情と口調、そして視線は、下心を隠す事無く表しているのだが......

「やーよ、有毒ガスが発生するって書いてあるじゃない、危険だわ」

もう慣れているのか、男の視線を外し冷静に断りを入れる女。
そのまま誘いに乗らない所は、単に理性的なのか......それとも女の勘か。
だが、その勘が働くには遅すぎた。

「な...なにあれ?」

「ン!?」

女が指差した方、洞穴の入り口に視線を戻した瞬間、二人の意識は途切れた。

触手寸止めヒロイン陵辱補完小説
ゴッドサイダー 流璃子

ヘル・ストリートの罠



ゴオオオオオォ......

一瞬にして燃え上がり、バラバラになって降り注ぐ二つの死体。
その向こうに佇む三つの影。

「日本へついたぞ...」

顔色一つ変えない彼は悪魔将軍神父フォラス。
立場こそ違えど、神父がこのアルプスの命名者だったのは浅からぬ因縁のせいか。

「............」

偶然目の前にいた不運な二人を慮ってか、伏し目がちな水魔ブロケル。

「クク... もう着いちゃったのか。
  さすがに「地獄通り」をとおれば地球の裏側だろうとあっというまなんだね......」

どこから来たのかわからんが、とりあえずどうでも良さげな炎魔獣ハルパス。
と、いうかここへ来る前に「地獄通り」のことをフォラスから説明されていたのだが。

(聞いてねえのか、このアホ鳥!!)

そう突っ込みたかったフォラスだが、伊達にハルパスの二倍以上年は食っていない。
何よりイメージというものがある、ここはグッとこらえて......努めて冷静に指令を下す。

「私は政府関係者に挨拶してくる......お前たちは脅威の芽を摘み取ってくるのだ」

「ハッ......」

流璃子とハルパス、そしてフォラスの姿が消えてゆく。
それぞれ行き先と目的は伝えてあるのだが、命令を下した当の神父は一抹の不安を抱えていた。

(ハルパス......計画を忘れておらぬだろうな......)



数時間前。
フォラスはハルパスを呼び出すと、内密の話を切り出していたのである。
三歩歩けば忘れてしまう鳥頭のことだ、複雑な内容は伝えず極めて単純な内容。

『ブロケルを見張れ、様子がおかしいようなら始末してもよい』
『ブロケルを先に戦わせ、然る後にハルパスが出よ』
『ブロケルの生死は問わぬが、ハルパスは生きて戻る以外認めない』

要するにブロケル:流璃子を信用してはいないのである。
デビルサイダーとは言っても鬼哭一族の出自、しかも今回向かうのは流璃子の故郷と言っても
いい場所。何があってもおかしくは無い、そのためのハルパスなのだ。
本筋から言えばフォラス本人が付いてもいい話だが、生憎と別にやらねばならない事がある。

(他に割ける人材は無い......やむを得まい)

半ば諦めの境地で日本へ向かったフォラスだった。



鬼哭池―

「そ...そんなバカな... 花の命は...短いっていうけれ...ど...」

霊気の「怨霊魔鬼雨」の前に、ハルパスは敗れた。
フォラスの命令など何処吹く風、やはり鳥頭には理解不能だったらしい。
当然、見張る対象であり先に死んでいても良かった流璃子は健在。
その上、行仁和尚に叱責されて「何もせず」に地底へ戻ってしまったのだ。

......フォラスはこの事をまだ知る由も無い。だが......

流璃子は水を触媒にして地獄通りを進む。
勿論行き先はアメリカ五大湖の地下、「地獄境界線」である。

「霊気のことはともかく、ハルパスは......
  ベルゼバブ様にどうお伝えすれば良いか......」

成り行きとは言え見殺しにしたのと同じ事。
加勢もしないで「ただ見ていた」とは口が裂けても言えるものではない。

ゴポポ......バシャッ!

水路が途切れ、じめじめとした洞穴に出る。
僅かな水さえあれば、それを操って移動できる流璃子。
水たまりにしか見えないそれは、一筋の奔流となってトンネルを突き進む。

いつもなら凄まじい速度で通り抜けているはずだが、今回ばかりは歩みも遅い。
何と言い訳するべきか......いや、言い訳ではなく......
他に邪魔するものの無い場所という安心感からか、思考の海に沈む。

......進行方向で口を開けている危険を知ることもなく。



「なっ、何っ!?」

気付いた時には遅かった。
目の前で口を開ける禍々しいモノは、既に彼女の纏った水を7割方吸い込んでしまっている。

躯妄虫―。

小悪魔達の体を強力な瘴気エネルギーで組み合わせた巨大虫。
その口はあらゆる悪しきものや瘴気を喰らい尽くす。
対象がゴッドサイダーであろうとデビルサイダーであろうと、そして人間であろうと。

「いったい、どうしてここに!」

その疑問に答えられる者は「ここには」居ない。
今頃は魔法陣を作っている最中......そう、フォラスのかけた「保険」。
万が一、いや万が万かも知れないハルパスの失敗を見越して、流璃子が使うであろう通路に
予め配置しておいたのだ。地獄境界線まで真っ直ぐに行けるルートを裏切り者に自由に
使われてしまっては元も子もない。

「......ハッ!? このままでは!」

躯妄虫の出現に気を取られていた流璃子が、ようやく身の危険を察知する。
水に溶け込んだまま吸い込まれてしまえば、肉体すら再構成できなくなる。
もはや一刻の猶予も無い。慌てて姿を現そうとする流璃子だったが......

ザザザァーーーッ!!

「くぅっ!」

足先の構成が不完全だ。
身動き取れないままでは、いかに水魔ブロケルといえども躯妄虫の餌食。
残された選択肢はただ一つ......身に付けた骨鎧を再構成すること。
無論、そうすれば全裸に近い姿になる。ただでさえ下等な小悪魔の集まりである躯妄虫を更に
駆り立ててしまうのは間違いない。
......周囲に残った水が減ってゆく。彼女に逡巡している暇は無かった。

タッ!

飛び退くように距離を取る流璃子。
湿った地面に着いた足先は素肌をさらし、僅かに残った水が水滴となって流れ落ちる。
本来ならば水滴どころではない、大きな水たまりを作るほどの量なのだが、今の彼女には
その痕跡すらも残っていない。そして、あるべき鎧さえも。

 ......こんな小悪魔などに、身を晒すなんて!

デビルサイダーであっても所詮は女。
うら若き処女の恥じらいは強く、その上自分より低能な者を相手にしているのだ。
羞恥を通り越して怒りさえ覚えた彼女の体は、力の暴走を抑え切れない。
わずかに残っていた力――足止めして逃げおおせられるだけしか無い――は、
あろうことか美しい肢体を隠す薄布へと変化してしまった。
だが、流璃子はそれが当然とでも言うかのように直立し、鋭い視線を相手に向ける。

「そこをどきなさい! 水魔ブロケルに刃向かうとは一体どういう了見か!」

ハッタリではない、彼女の真の力を持ってすればどうということは無い相手だ。
いや、それすら必要では無いだろう......いかに小悪魔と言えども身分の差は弁えているはず。

ピイイイィーーッ!
ゲーッ、キュッキュッ! ニョーッ!!

 ......くっ、話が通じないほど下賎とは。
  なら、実力を思い知らせてあげるわ!

地面に残る水滴程度でも十分。
水針で縫いつけてしまおう、そう思って能力を目覚めさせる、が。
吹けば飛ぶほどの水滴が微動だにしないではないか。
異変に気付いた流璃子が視線を落とす。そこには無常にも地面に吸い込まれてゆく水滴と、
身にまとう白いスカートが揺れるだけ......

 ......ま、まさか!

ここに至ってようやく状況を把握した彼女が向き直り、視線を戻した瞬間。
流璃子の視界は暗黒に飲み込まれていった。躯妄虫の雄叫びと共に......






「んっ、くぅっ......離せ、......くああっ」

私は、とぐろの中心でもがくしかありませんでした。
両足は勿論、両腕も躯妄虫の体内に半ば埋まるように捕らえられ、自由になるのは首から上だけ。
水魔ブロケルとしたことが、目の前の小悪魔ごときに飲み込まれるなんて......

キョエエエエエッ!!

おぞましい口が近づいてきます。
頭から丸呑みに出来るほどの大きさを持つその口からは何本もの触手が生え、
私の上半身を絡めとっていきました。

 ......もう、終わりね。
  鬼哭一族を迫害し続けた人間、そしてゴッドサイダーへの復讐。
  その為には手段を選ばず、ベルゼバブ様への忠誠を誓った。
  ......それが間違いだったのでしょうか。
  どんなに功を立てても、仲間が認めてくれる世界じゃなかった。
  いえ、仲間なんかじゃない......ただ同じ側にいるだけのこと。
  もしゴッドサイダーだったら、みんなは......霊気は、私を理解してくれたかしら......

私は覚悟を決め、その瞬間を待っていました。
でも、いくら経っても意識が消えることは無かったのです。
体を締め付ける感触、上半身に纏わりつく触手、衣服を舐めまわす小悪魔......!!

「なっ、あっ......何をする、い、いやあっ!!」

気がついたときには、躯妄虫の表面に顔を出す無数の小悪魔に喰らいつかれていました。
正確には......薄いワンピースにむしゃぶりつかれていたのです。
瘴気からできている以上、衣服を吸収するのは不思議ではありません。
でも、彼らの行動はそれを目的にしたものではないことを、薄々......気付いていました。
口の中で咀嚼されて消えてゆく衣、露になる私の体。
鋭い牙は私自身ではなく、衣服だけに向けられているのです。
その代わりに突きつけられたのは、下賎な舌先。

ジュルルッ!

「んんんっ!」

穴の開いた所はもとより、未だ隠されている部分にまで這い回る舌の感触。
ねっとりと絡みつく粘液を塗りつけられるたびに、全身に悪寒が走ります。
太股や脇腹、背中、そしてお尻に触れる異物の動きは、未知の感覚を与えてくると同時に
私の心の中にある恐怖を目覚めさせました。

 ......わ、私を......辱めようというの!?

確かに、デビルサイダーとしての格好は扇情的かも知れません。
時折感じる同族からの視線は知っていました。その中にどんな劣情が含まれているのかも。
しかしそれは私の力を知るものならば絶対に実行できるはずも無く、高位の者ならば
そういった行為すら特に必要としないのですから、特に気にする事もありませんでした。

でも、今はそうではないという事実を......私は身をもって味わうことになったのです。

シュルル......ピッ、ビリリリッ!!

「あっ! ......や、やめて!」

胸元辺りをうろついていた触手はワンピースに小さな穴を穿つと、そこを突破口にして
布地を大きく引き裂いていきました。
言葉が通じないことぐらい分かっていたのですが、口に出さずにはいられません。
声に応えること無く目の前で粛々と進められてゆく行為に、私の顔は熱を帯びてしまいます。
思わず目を背けようとした時でした、視界に躯妄虫の巨大な目玉が映ったのは。

血走った眼の一つ一つから注がれるいやらしい視線の先は、胸。
多数の目玉が示すように、躯妄虫は小悪魔達が集まったもの。
言い換えれば、無数の下賎な者達に自分の肢体を晒すこと......

「いっ、いやあっ! ......お願い、やめ......やめてぇーーーっ!!」

ビリッ、ビリリリリイッ!!

哀願を無視するように、私の衣服はズタズタに切り裂かれたのです。



ウギョギョギョギョーッ!! ゲショショ! ケーッ!!

遂に露になった私の胸が、巨大な目を通して全体に伝えられたのでしょう......
躯妄虫のいたる所から興奮と歓喜に満ちた叫び声が聞こえてきます。

私は、ともすれば絶望に飲み込まれてしまいそうになる気持ちを無理矢理立て直すと、

「これ以上はどうなるか、わかっているのでしょうね!」

虚勢でした。でも、その一言は相手に少なからぬ影響を与えました。
ひるんだように動きを止めた触手、その様子に安堵した私。
しかし触手は一瞬の後、勢い良く胸に殺到してきました。
そう、私の言葉は躯妄虫を駆り立てただけだったのです。

「ひっ! ......や、やめっ......んっ!」

触手が胸に絡み付いてきます。
一本一本がまるで鞭のようにしなり、ふくらみを抱えあげては揺さぶるのです。
四方八方から捏ね回される異常な感触に、嫌悪感で一杯になりながらも私の肉体は
しっかりと反応し始めていました。

「んんっ、んんん! くっ!」

繊細な肌を遠慮なく這い回るモノの動きが激しくなり、歯を食いしばって耐えなければ
不当な、それでいて当然の「声」をあげてしまいそう。
もはや見ているだけで崩れ落ちてしまいそうな光景に、私は瞼を閉じて思考を止めました。
が、躯妄虫はそんな抵抗さえ許してはくれませんでした。

「ああっ! くぅっ......!」

闇の中に落ちた瞬間、最も敏感な部分へ絡みついた触手がわななき......声を漏らしてしまったのです。

 ......そんな、どうして声が出てしまうの......
  恥ずかしい......私、こんな女じゃない! 私は水魔ブロケル!
  下賎の連中に辱められて感じるわけが......そんなの、嫌っ!!

心の中に充満しようとする羞恥と欲望を、頭を振って振り払います。
しかし次々に襲ってくる淫靡な刺激は、意思とは裏腹に肉体を反応させてゆくのです。
巻きついた触手がゆっくりと乳首を持ち上げ、何度か同じことを繰り返すと......
その部分は引っ張られた形のまま、存在を誇示するように固く突出してしまいました。

「い......いや、いやあああっ!!」

躯妄虫は、高まりを確認するや否や一斉に蠢き始めます。
しこった先端を弾かれ、乳房を締め付けられ、そして全身を舐めまわされ......
何かされる度に私の体は電気が流れるように痙攣し、震え始めます。
それが更に相手を煽るのでしょうか、一層激しく責めたてました。

「ん......んんっ! んんんんっ!!」

はしたない声をあげてしまわないよう、私は必死で堪えていました。
躯妄虫は無我夢中で私の体を貪り、余計な声は少しも出しません。
そんな中で、私の嗚咽だけが洞穴に響く状況だけは......想像するだけでも「死んでしまいたい」と
思えるほど恥ずかしいものでした。

でも、もう限界が近かったのです。
衣服はほとんど破り取られ、最後の砦とでも言うべき下着と......僅かに残った布切れが
腰の辺りに残っているだけ。踏み荒らされて居ない場所は、あと少ししかありません。

一縷の望みを賭けて、呼吸さえ押しとどめて自分を抑えこみます。が、その時。
躯妄虫が全身を大きく脈動させ、表面に浮かぶ小悪魔達の位置を大きくずらしたのです。
粘液にまみれた醜悪な外皮が擦り付けられると同時に、ちょうど真正面に現れた小悪魔の舌先が
乳房をかすめ......そして!

ジュルッ! チュルルルルッ!!

「ああっ!? あ、や、んんっ! ......あんっ!」

痛いほどに固く、熱く火照った乳首を吸われ、私は大きな声をあげて仰け反ってしまいました。
自分の声とは思えない甘美な音色に、驚いて口を噤んでみても後の祭り。
触手とは全く違う艶かしい感触は、まるで乾いた砂に零れる水のように私の体に沁み込んでいきます。

小悪魔の舌は女の肉体を知り尽くしているかのようでした。
絡んでは摘み上げ、押しつぶしては転がす巧みな動きに、私は絶対に持ってはいけない衝動を
感じてしまったのです。

 ......両方とも、舐めて......欲し、い......

吸い付かれている左胸とは対照的に、放っておかれたままの右胸。
さっきまで弄っていた触手も離れ、触れているのは空気だけ。
そのじめじめとした重い感触ですら心地良く感じていたのはもはや過去のこと。
体の奥底から湧き上がる冥い欲望は、まだ足りない、まだ足りないと突き上げるのです。

でも、どうしてもその一言だけは口に出せません。
言ったが最期、水魔ブロケルとしての私は......ただの人間の女へと堕ちてしまう。
それも、これ以上無い程に恥辱と卑猥さにまみれた雌に。

ジュルッ、チュブッ......ベロ......

「くっ、んんっ......ああっ、んああ! やっ、ああんっ!!」

私は、快楽に耐えているのかそれとも望んでいるのか分からなくなっていました。
苦しくて嗚咽をあげている? 嫌だから身をよじって逃れようとしている?
たぶん、周りから見たら何を望んでいるかなんて誰でもわかるはず。
そう、誰にでも......躯妄虫にも、霊気にでも。

「あ......いやあああああっ!!」

霊気の顔が脳裏に浮かんだ瞬間、私はこみ上げるものを抑えることが出来ませんでした。
急速に高まってゆく悦楽、それは屈辱的な行為を強いられているという羞恥心の裏返し。
溢れた涙が頬を伝い、小悪魔が美味しそうに舐めとっていきます。
その感触さえも、私を未知の境地に追い込んでゆくのです。

ふと視界に別の舌が入ってきました。その狙いは露にされた右の乳房。
遂にその時が来ることに、期待と恐怖が入り混じった叫びをあげました。

「いや、いや! やめ......やっ!! あああああああっ!!」

両胸を陵辱された瞬間、私は初めての絶頂を味わったのです......




荒い息の中、ある種の満足感と絶望感、そして恍惚感に溺れていました。
これが夢なら、と愚にもつかないことを考えていた私は、再び現実へと引き戻されたのです。

シュルル......

今まで鳴りを潜めていた躯妄虫の頭部が、胸元からお腹へと降りていきます。
肌を這いまわっていた触手は、ある部分に突き当たるとそれに絡みつき、大きく広げました。

「あっ! いや、そこは......や、やめてっ!!」

触手が下着と肌との間に隙間を作ると、そこに頭部を侵入させてきたのです。
水魔ブロケルとしての力で侵入を拒もうとしましたが、もうほとんど奪われている今となっては
到底叶う訳がありません。
絶対に治まりきれないサイズに、下着は断末魔の悲鳴をあげながら引き裂かれていきます。

 ......死んでしまっても構わない、それだけは......!!

隠し続けられてきた場所を曝け出される不安もありました。
しかし、一番の恐怖は......淫液に濡れた秘所を知られてしまうことだったのです。
絶頂に達する前から溢れ出した蜜は、自分でもはっきりと分かってしまう程に下着を
濡らしていました。あろうことかこんな低級悪魔の愛撫で悦び、絶頂に達してしまうなんて。
生きて戻れたとしても、別の悪魔に同じことを繰り返されるに違いありません。

「やっ!? あ、だめえっ!!」

なかなか入り込めないことに苛立ったのか、躯妄虫は触手を先行させてきました。
下着の中を埋め尽くす勢いで入り込んできたそれは、今までの鬱憤を晴らすように
一気に爆発したのです。

ビリリリリッ、バッ! ババッ!!

「くっ! ううっ......」

湿り気を帯びた布地が粉々になって飛び散ります。
その一片一片を、小悪魔たちは我先にと奪い合い、口にしていったのです。

その光景に、私は覚悟を決めました。
これ以上好きにさせるわけにはいかない、水魔ブロケルとして......流璃子として。
死んでしまえば何もかも終わると信じて、私は口の中で舌を伸ばすと、少しだけ顎を下げたのです。
が、その瞬間、頬に当たる異物に目を見開きました。

「ひっ!! な......いや、っく、んんんっ! んぐっ!!」

躯妄虫から生えた異物......男根が押し当てられていました。
突然のことに、そして初めて目にする男性器に怯んだ私は思わず口を開いてしまい、
その隙に別の男根が唇を奪い、中へ押し入ってきたのです。

ジュッ、チュチュッ、グジュッ......

途端に粘着音を立て始める唇。
ねっとりと纏わりついた粘液が流れ込み、乾ききった私の口内を潤します。
一瞬、その液体が心地良く感じてしまうほどの充足感に、慌てて拒絶しようと頭を振り
舌でソレを押し返そうとしましたが、何故か男根は、いえ躯妄虫は満足げでした。
その時は知らなかったのです......そうした行為が相手を悦ばせるということを。

「んんんっ、んむっ! うんっ!? んんんん!!」

無駄なこととは知らず抵抗を続けていた私に、別の感触がもたらされていました。
その方向に目をやると、そこには新たな男根。それだけではありません、周りは数十本、
いえ数百本はあろうかという男根に囲まれていたのです。
それらは思い思いに動き回ると、例外なく私の体に触れてきました。
先端を押し当てるもの、茎の部分を擦り付けるもの、脇の下や膝の裏に入り込むもの。

 ......こ、これが......男の人の......
  や、やだっ! 気持ち......悪いっ! 離して、触らないで!

おぞましい感覚が全身を這いまわります。
愛する人のものならまだしも、私の体すべてを欲望の捌け口としか見ていない連中。
性欲の塊が肌の上で蠢くたびに、強烈な嫌悪感が襲ってくるのです。
私は、うねる男根から逃れることに必死でした。身をよじり、腰を振り、足をばたつかせ......
一番大事な場所を狙う、邪悪な口のことも忘れて。

「んうっ!?」

気がつけば、絡みついた触手が太股を開かせようとしていました。
既に握りこぶしが入ってしまうほどの隙間が空き、さらに大きくこじ開けられていきます。
徐々に見えてくる躯妄虫の眼。たくさんの視線が、ただ一点を目指して集まります。

ただ見られるだけなら、全身を這い回る男根の感触よりもまだましかも知れません。
しかし今は......おそらく甘美な香りさえ立ち昇っている濡れた秘所だけは白日のもとに晒したく
なかったのです。何故なら、見られた後になされるだろう行為が......予想できたから。

「んんっ、ひゃふぇ......んんんっ! ん、んんんんんーーーっ!!」

本当なら、歯を食いしばって抵抗していたはず。
しかし口の中で暴れる男根はそれを許さず、満足に力の入らない肉体は......とうとう全てを
邪悪な視線の前に曝け出してしまったのです。
舌を噛み切ることも、拒絶の声を出すことも出来ない私をじっくりと視姦する躯妄虫。
ほんのわずかな時間だったかも知れませんが、永遠とも思われるほど長く感じられました。

それが終わりを迎えた時、私は再び絶望という名の迷路に迷い込んだのです。

ジュッ、ジュリュリュリュッ! チュルルルッ、ジュチュッ!!

「!!!!!」

突然始まったおぞましい行為に、声も出ません。
大きく開いた口が秘裂を覆い隠し、体の中から全てを吸い出されるような感触。
躯妄虫は蠕動を繰り返しながら淫液を飲み干し、更なる蜜を求めて触手が敏感な部分へ殺到します。

 ......そんな所、やだ、......っ、だめ!
  そんなにっ......そんなに広げられたら......ひうっ!!

陰唇をなぞり、貯まった蜜を掻き出す触手。それでも足りなくなると、大きく広げて吸い付く口。
同時に陰核を摘み上げて分泌を促すものの、吸収の速度には到底追いつくはずもありません。
半ば乾きはじめた秘裂に当たる醜悪な皮膚の感触は痛いほど。
デリケートな部分を乱暴に扱われた苦痛に顔を歪める私に、更なる悪夢が襲います。

ビシャアアアッ! ビチャッ、ビチャアアッ!!

囲んでいた無数の男根、その一部が暴発を始めたのです。
秘裂を目の当たりにし、舐め回し、淫液を飲み込んだことで興奮した小悪魔達の男根は
その動きを早めていました。そんな中、性的不満が溜まっていたモノ達が待ち切れずに
精を放ったのです。

吐き出される白濁液は例外なく私の肌に降り注ぎ、ねっとりと付着していきます。
途端に湧き上がる異臭。これが精液というものと理解した所でどうしようもありません。
生暖かい不気味な感触に悪寒が走ります。
しかし次の瞬間、全身に例えようの無い快感が湧いてきたのです。

 ああっ!? ......かけられた所が、変っ......
  ......体が、熱い......やだ、何? なんなのっ!!

見れば、肌に纏わり付いた白濁液が沁み込む様に消えていきます。
思えば躯妄虫の排出・分泌するものはある種の毒。性行為の最中である事を考えれば、
それが性的興奮をもたらすものであってもおかしくはないのです。

ジュル......ジュチュチュチュ! ジュルルッ!!

「んむっ、んんんんんっ! んぐっ、んんんっ!!」

一旦消えた音が、再び股間から響きだします。
まさに水を得た魚となった躯妄虫は、前にも増して大量に溢れ出た蜜を啜り続けました。
男根もまた同様に責める手を休めず、次々に精液を浴びせてきます。

 ......やめて! もう......出さないでっ!!
  これ以上、私を汚すのはやめてっ......もう、私......
  お願い、もうやめて......許して......

射精された液はすぐに吸収され、見た目は綺麗なままの体。
でも、一発ごとに与えられる恥辱感と異様な快楽に気が狂いそうなくらい。
絶え間なく続く秘裂への愛撫と相まって、私は二度目の絶頂へ駆け登ろうとしていました。

「んん、んぐっ、んんっ! んんんっ! ......ん、んうっ......!?」

あと少しでその時を迎えるという時。
躯妄虫は股間から口を離したのです。
満たされない肉体に、いくらかの不満を抱えながらも......これで終わるかも知れないという
淡い期待を抱かせました。解けてゆく触手に、ようやく太股を閉じることが出来た私は、
大きく息を吐き出しました。が、その瞬間。

ドビュルルルッ! ドクドクッ、ドプドプッ!!

口一杯に広がる、生臭い液体。
息をつくのを狙いすましたような射精に、呼吸すらままならず......
そのほとんどを飲み込むより他にありませんでした。

「......んむっ、っくあ! ......あ、ああああああっ!!」

男根の支配から解放された私は、内部から襲い掛かる異常な快感に絶叫したのです。
口の中だけではありません、喉の奥から......お尻まで、痺れるような......蕩けるような刺激。
全身を波打たせて必死に堪えても、そうすることで触れてしまう男根達にまた新たな快感を
与えられ、嫌がっているのか求めているのか分からなくなっていました。

 ......いや......こんな、こんなのって......卑怯、よ......
  これじゃ、私、このままじゃ、おかしくなってしまうっ!!

限界まで高められ、熱くなった肉体を鎮めることなど今の私には出来ません。
手足を捕らえられ、仰向けに宙に浮かされていては自分を慰めることも不可能。
いえ、もしこの場で自慰を許されたとしても、それで満足するとは思えないでしょう。
満足させてくれるのは......そう、躯妄虫だけ。

どうなってもいい、この苦しみから解放させてくれるのなら。
私は冥い欲望を押しとどめられず、視線を向けたのです。

「あ......? ヒッ!!」

目に映ったのは、希望どころか絶望でした。
いつの間にか私の足元には躯妄虫の後尾が姿を現しており、その肛門からは毒々しい色をした
巨大な一物が屹立していたのです。
周囲の男根とは一回り以上も大きく、長く、太いソレは、およそ男根とは思えないような
禍々しい形をしていました。先端にあるくびれは逆イガ状の突起に覆われ、数センチ下には
同様の突起が生えていて、ちょうど二段重ねのようになっているのです。
その上、陰茎には吹き出物のようなイボが密生して粘液を吹き出しています。
また根元にはブヨブヨとした半透明の袋が6つ、取り囲むように並んでいました。
想像するまでも無く、その中に蓄えられているのは精液だとわかります。

「そ、そんな、......い、いやっ! 来ないで!!」

肉体を覆っていた快楽の波が押し流される程の衝撃。
しかし、冷静になったのも束の間。無数の男根が、再度侵攻を開始したのです。

「んんっ!? あっ、やっ、やあっ......あんんんっ!」

快感の奔流に叩き込まれた私は、否応無く悦びの声をあげさせられました。
声だけではありません。刺激の一つ一つを漏らす事無く感じ取ろうと、全身をくねらせたのです。

 ......ああっ、いや、いやなのに......どうして?
  体が勝手に動いて......だめ、そんなのだめっ!!

儚い抵抗でした。
躯妄虫に対しても、自分の肉体に対しても。
どんなに気持ちは拒んでも、ゆっくりと開いてゆく太股を止められません。
巨根が鎌首を持ち上げて、今か今かと待ち焦がれているのが見えた瞬間。
私は、まるで誘っているかのように腰をくねらせたのです。

グチュッ......ジュブウウウウッ!!

「ひうっ! あっ、いやああああああっ!!」
 
さしたる抵抗を受ける事無く、躯妄虫は侵入を果たしました。
最後の砦を貫かれた悲鳴とは裏腹に、私の肉体は悦びに打ち震えたのです......。



ズニュッ、ヌヴッ、ジュチュッ......

巨根が膣内を擦り、密着した部分から鈍い粘着音が聞こえてきます。
躯妄虫は歓喜の雄叫びをあげ、無数の男根は相変わらず白濁液を放っていました。

「あうっ、んんっ! やん、ああっ......んあっ!」

初めて受け入れたというのに、痛みはありません。
あるのは圧倒的な快感と屈辱感でした。

 ......私の瘴気を吸い取って、こんなに......射精するなんて......
  私はそれ程汚れていたというの? ......ああっ、流されては駄目っ......
  ......でも、瘴気で......こんなに乱されてしまうなんて......
  いやらしい娘だったの? ......いや、こんな連中に犯されて感じるのは、イヤ!!

強い想いが体に伝わります。
しかし、その表現方法はある意味正しく、そして間違っていたのです。

「くううっ!!」

下半身に強烈な圧迫感が襲い掛かります。
いえ、正確には......私自身で巨根を締め付けていました。
中から追い出そうとしたものの、あまりに太く硬い一物には通用しないのです。
締め付けられたまま動きを止めないモノ、その逆イガが膣内を掻き毟っていきます。

しばらく経って苦痛からようやく解放されたかと思うと、今度は気も狂わんばかりの快楽が
待っていました。躯妄虫が体を回転させ、巨根も同様に膣内で回りだしたのです。

「ああっ、やあっ! だめ、だめえっ!! んあっ!!」

普通ではあり得ない連続的な刺激。
蠕動運動も加わって、捻り込まれるような巨根の動きに、私はただ悶えるだけでした。
いくらやめてと懇願しても、絶対に聞き入れてくれるはずのない相手。
執拗に行為を繰り返して性欲の塊を叩き込む相手。
それに必死で耐え、抗う私。
なすすべなく絶頂を迎えさせられ、遂には犯された私。

 ......これ以上、何から逃げるの?
  もう何一つ残ってはいないのに。
  全てを、死ぬことさえ奪われた私は何を恐れているの?
  復讐? そんなこともうどうでもいい。
  私の居場所は何所にもない。
  デビルサイダーだろうと、ゴッドサイダーだろうと......れ、霊気!!

不意に霊気の顔が浮かび、私はかろうじて理性を取り戻しました。
このまま犯され続けたら......最後には。
水魔ブロケルとして、いえ......流璃子として。
低俗な者共の子種を植え付けられる訳にはいかない。
下賎の者にまた絶頂を味わわされる事は許されない。
絶対に――

「ひっ、ぐっ......んんん、んくっ......」

唇を噛み締め、渾身の力で身をよじると、快楽に沈めようとする巨根が少しずつ外へ出て行きます。
前後運動にあわせてゆっくりと確実に抜かれてゆく度に、私の心は暖かいもので満たされます。
あと少し、あと......

ズンッ!!

「あうっ!!」

ほとんど引き抜かれた巨根が、奥まで一気に押し入ってきたのです。
私の考えなど見通しているというかのように、腰にはいつの間にか触手が絡み付いていました。
抵抗されることすらも、この相手にとっては遊びに過ぎなかったのです。
最初から最後までいいように弄ばれた、無力な私。
選択肢は初めから一つしか無く、それを受け入れるか受け入れないかの違いだけ......

「あっ、あっ、あああっ! ......んん、やっ! あんっ!!」

勢いに任せて激しく突いてくる躯妄虫。
既に無数の男根はその役目を終え、残るは私の膣内で暴れるものだけ。
頭から尾部まで、波打つ速さがどんどん上がっていくのがわかります。

 ......ああ、もう......射精するのね?
  中に......たくさん......
  私、こんなのに犯されて......出されるんだ......
  きっと、気持ち......良いんだよね......

針が振り切れた私は、もう止まることを知りません。
身も心もすべて......それだけを求めて走り出しました。

「あんっ、ああ、い、......いい、来て、もっと来てっ!!」

口をつく恥ずかしい言葉も、自分を高めていきます。
淫らにくねる肢体も、全部その瞬間のため。
相手がそれを理解しているはずはありませんが、目的は同じ。
今までの不協和音が急速に美しい和音になっていき、そして。

「いいっ、出してっ! 膣内に......イかせてっ!
  ......あっ、ふあっ、んっ! イクっ、イっちゃう、あっ! あああああああああっ!!!!」

完全に重なり合った私達の鼓動。
ドクドクと注ぎ込まれる熱い迸りを受け止めながら、私は本当の絶頂を迎えたのです。



それから――

躯妄虫はすべての精液を私にぶちまけるまで犯し続けました。
膣内はもちろん、口やお尻も......二回ずつ。
流し込まれる度に更なる高みへと登っていった私は、もはや神でも悪魔でもなくなっていました。

私は流璃子。
かつてヘル・ストリートと呼ばれた場所に咲く、淫らな花。
神でも悪魔でも、人間ですら無い私。

 ......今日は、どんな獲物がかかるかしら......

<終わり>

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