題名:「ラグナロク。そして・・・」

「ラグナロク。そして・・・」

ラグナロク。そして...

「霊気達は一体どこに行ったんだ...!」
苛立つ阿太羅が声を荒げる。
明日は魔都突入。ゴッドサイダー達が一同に会している。
「どこかにしけ込んだんじゃねえか、ハッハアッ!」
「父ちゃん、しけ込むってなあに?」
「トミー、あんたはまだ知らなくていいのっ!」
クラッシュ一家は脳天気に騒がしい。
「......行仁様。二人の居所が判りませんか?」
冷静な法粛が尋ねる。言われるまでもなく行仁は、先ほどから流璃子の行方を追っていた。しかし、
地下三千メートルの牢獄に囚われた流璃子すら見通した行仁の霊力を持ってしても、流璃子の気配
は全く掴めないでいた。
「ううむ......」
行仁が焦燥の汗を流したその時。
突如、ゴッドサイダー達が円陣を作るその中心の空間が歪んだ。何者かが出現しようとする。
「あ...!あれは霊気?!」
憂い顔に沈んでいた鶚が驚きの声を上げる。
空間に突如現れた、それは確かに霊気の姿だった。だが、霊気の纏った圧倒的な気配が、ゴッドサ
イダー達を釘付けにする。濃密な狂気が広がっていく。
「いかん!皆逃げるのじゃ!」
老人とは思えぬ跳躍で背後に飛び退る行仁。
しかし遅かった。
《......ミンナ......ミンナコワシテヤル...!》
巨大な意志が咆哮する。瞬間、霊気は弾けて渦巻く闇の奔流となる。
あっという間にゴッドサイダー達は闇の奔流に飲み込まれていく。
一人脱出を試みる行仁にも闇が圧倒的な速度で迫る。
飲み込まれようとする瞬間、行仁の肉体は消滅し、一筋の巨大な光が天に向かって駆け上がる。

魔都。
魔都は今や混乱の極にあった。
「一体何事だ!状況を報告せよ!」
巨体を震わせて怒鳴る副王ルキフグス。空気が震撼する。ようやく魔尉の一人がやってくる。
「敵襲のようです。『輝く闇』が迫ってきております!」
「『輝く闇』だと?なんだそれは!」
「判りません。先ほどから何度も斥候を出しておりますが、一人も戻って参りません。監視塔の物
見の報告では、『輝く闇』がまっすぐにこちらに向かってくると......」
「ふん......。どうせゴッドサイダー共の小細工であろうよ。いずれ奴らが来ることは判っておった
わ。」
ルキフグスが立ち上がる。
「戦力逐次投入の愚は犯さぬ......!全軍出撃!余も出るぞ!!」

デビルサイダーの軍勢が魔都正門前にひしめく。
「見えました!あれです!」
参謀が指さす方向を見る。確かに巨大な闇が迫ってくる。漆黒でありながらまぶしいほどの輝きを
みせるそれは、確かに『輝く闇』の形容がふさわしかった。
「全軍展開せよ!魔力を余に集めい!」
整然と魔法陣に配列した軍勢から、魔力が中央に立つルキフグスに流れ込んでいく。
「一撃で吹き飛ばしてくれるわ。喰らえ、王都魔陣砲!!」
ルキフグスが差し出す両手の間から、凄まじい魔力が放出され、真っ直ぐに『輝く闇』の中心部に
吸い込まれていく。が、何事もなかったように直進を続ける『輝く闇』。
二撃目を放つゆとりもないまま、ルキフグスとデビルサイダーの軍勢は、魔都とともに闇に飲み込
まれていく。

地獄界。
魔皇宮周辺が騒がしい。
「クックック...地上を席巻した霊気がとうとうこっちに近づいてくるか...」
アスタロト邸の窓から外を見ていたサルガタナスがエデンを振り返る。一体何度目の営みなのか、
果てしなく絡み合う二人が天蓋から垂れる桃色の薄絹越しに見える。
「いつまでもよくやるぜ...クックック...知らねえってのは幸せだね...」
再び窓から魔皇宮を覗く。
「クックック...サタン...お手並み拝見といくぜ...」
サルガタナスの嘲笑が部屋一杯に響いた。

魔皇宮。
ハルマゲドン......天界との決戦に常に備えている地獄の警戒網は完璧だった。巨大な玉座に座るサ
タンの元には次々と情報が入ってくる。
「地上軍は壊滅!連絡途絶えました。」
「敵は魔都のゲートを突破、こちらに降下しつつあります!」
「全土に警報発令!」

「サタン様...これは一体...?」
玉座の傍らに控えるリリスが心配そうに尋ねる。
「霊気だな...」
サタンが静かに呟く。
「霊気...?ゴッドサイダーがこれほどの力を?」
半信半疑の表情のリリス。
「奴には超魔神となる可能性があった...それゆえ味方に引き込もうとしたのだが...どうやら恐ろし
い形で覚醒してしまったようだ...」
サタンが淡々と語る。
「今の奴は純粋な破壊欲望の化身...新たな大神魔王の誕生か...」
「大神魔王...!?そ、それは...パズスのことでは...?」
甦る忌まわしい記憶。ぞくりと震えが走り、思わずリリスが両腕で自身の肩を抱きかかえる。
「うむ...パズスは食欲の権化であった。が...霊気はひたすら破壊を欲しているようだ...。その力も
欲望も、パズスの比ではない。まさに破壊神...」
サタンが玉座から立ち上がる。命令が地獄界全土に響き渡る。
「魔尉・魔佐達は全員魔法陣に展開、侵入を食い止めよ!魔将軍達は急ぎ魔皇宮前に召集せよ!全
土の王族・貴族は玉座前に伺候せよ!」

降下していく霊気。行く手に魔法陣が輝く。配置された将校達の魔力で増強された防御結界。闇を
纏った霊気がためらいなく激突していく。

魔皇宮謁見の間。
続々と地獄の王族・貴族が集まってくる。到着を告げる声がこだまする。その間にも矢継ぎ早に伝
令が駆け込んでくる。
「第7魔法陣、突破されました!」
「敵は第8魔法陣に激突中。長くは持ちません!」
サタンがため息を吐く。
「13もの防御魔法陣の突破も時間の問題か...将軍達を出陣させよ。地獄門で迎撃!」
周囲を囲む地獄の精鋭達を見渡す。
「ベリアル様ご到着!...ベルゼバブ様は再生にもうしばらく時間が...モロク様、プルトン様ご到
着!」
リリスは先ほどから気が気でない。弟たち...アスタロトとサルガタナスだけが依然姿を見せない。
「あの子達は一体何を...サタン様の側近でありながら、肝心な時に...!」
「どうしたのだ?リリス...」
サタンが問いかけたとき、急報が入る。
「敵、全魔法陣突破!地獄門に接近します!」
「魔将軍、迎撃開始!」

地獄門。
まさに地獄界への扉であり、天国の門と対をなす存在である。ぴたりと閉ざされたこの門に、霊気
が一直線に激突する。門扉が一瞬で消し飛ぶ。その瞬間、魔将軍達の一斉攻撃が開始される。無数
の光の矢が輝く闇に叩き込まれる。押し戻されるかに見える霊気。が、速度がやや鈍っただけで、
依然降下を続けていく。

魔皇宮謁見の間。
「将軍達も長くは支えられぬか...卿ら、出撃するぞ。共に闘おうぞ...!」
「サタン様...私も...」
リリスが進み出る。
「愛と美の天使であったそなたに闘いは向かぬ...我らの凱旋を待つがよい...」
「いいえ、生も死もあなたと共に...もう、もう二度と離れません...!」
「リリス...気持ちだけいただく...そなたを失う訳にはいかぬ...」
サタンの腕が一閃すると、リリスを透明な球体状の結界が包む。結界はそのままリリスを彼方に運
んでいく。リリスは内側から結界を叩き、何事か叫んでいる。
「戦の後にまた逢おう!」
叫ぶサタン。
(...達者でなリリス...愛しているぞ...!)

サタンが出陣しようとしたその時。
《待て...サタンよ...!》
声ならぬ声が謁見の間に響いた。
一同がざわめく。
「その声は...ミカエル!貴様...この機に乗じて攻めてくるとは...!!」
《...待て...まずは話を聞くがよい...》
ミカエルの声がなおも響く。
《あれが霊気であることはそなたも存じていよう...理由は不明だが、霊気は世界の全てを破壊し尽
くそうとしている...》
「...そのようだな......」
天井を仰ぎ見るサタン。
《我らは世界の覇権をかけて戦ってきたが...我もそなたも世界の破壊は望んではおらぬはず...》
「無論の事。支配すべき世界を破壊して何とする!」
《我らとて気持ちは同じ...そこでだ...ここは一つ手を組もうではないか...》
サタンが牙を剥く。怒気に顔面が紅潮する。
「貴様と組むだと...仇敵の貴様と...!」
《霊気を倒すまでのことだ...決着をつけるのはその後でよかろう...まずは誠意を見せよう...!》
「......?」
伝令が慌てふためいて走ってくる。
「ほ、報告します!天軍が...天軍が来ました!現在背後から霊気を攻撃中!!」
驚愕のどよめきが起きる。
「まことか...!」
「はっ!後続の天軍も続々来着中!ミカエルとおぼしき大物も降下中とのことです!」
「ううむ...!」
苦悩の表情を浮かべるサタン。理性は状況を認識するが、感情が追いつかない。
《...サタンよ...今だけだ...今だけは共に...この世界を守るため...!》
ミカエルの説得に苦笑を漏らすサタン。
「フッ...皮肉なものだなミカエル...天使と悪魔が世界を守るために共闘する日が来るとは...」
真顔に戻る。
「が、それしかないようだな...暫し共に戦おうぞミカエル...!。もの共、続け!!」
皇宮の天井を突き破ってサタンが飛翔する。次々と従う魔の眷属達。

地獄界上空。
戦いは新たな展開を迎えていた。霊気を包囲し、天使と悪魔が猛攻を行う。突き刺さる無数の光の
矢。サタンとミカエルが肩を並べ、戦況を見つめる。周囲は熾天使と魔王達が固めている。
だが、凄まじい猛攻にもびくともしない霊気。ますます猛り狂い、輝く闇は周囲の天使や悪魔を次々
と飲み込んでいく。
「あれだけの攻撃が通用しないとは...」
「うむ...むしろ我々の攻撃をもエネルギーに転換しているようにも見える...」
「どうする...このままでは...!」
「...力を合わせねばなるまい...」
「?...今、そうしているではないか...」
「そうではない。単に共闘するだけではだめなのだ...すなわち...」
ミカエルが一人の熾天使を指さす。
「汝、魔界に墜ちし恋人を持つ者...今こそ和解の時来たれり...一つとなりて我が前にその真の姿を
示せ...!」
指された天使が一人の魔王に近づき、名前を呼ぶ。魔王も天使の名を呼ぶ。蘇る過去の記憶。引き
裂かれた恋人達の再会。二人がひしと抱き合うと、まばゆい光に包まれる。
現れたのは......天使と悪魔、二つの特徴を併せ持つ、堅固に武装した異形の姿であった。
「こ、これは...!?」
「そう...天使と悪魔、二つの特徴を併せ持つ究極の戦士、天魔...」
「ううむ...これならば...これならばあるいは...!」
サタンに希望の光が射す。それほどに天魔の姿は力と威風にあふれていた。

周辺を飛び交う天使と悪魔の軍勢を一掃した霊気。魔皇宮へと進もうとするその時。
「そうはいかんぞ霊気!我らの真の力を思い知れ!」
生き残った熾天使と魔王が次々と合体する。ウリエルがベリアルと、ラファエルがアスモダイと。
次々と生まれていく天魔達。
相手を探すガブリエル...天界の副将の相手はなかなか見つからない...。
「フッ...ガブリエルさん...私がお相手しましょうか...」
再生したばかりのベルゼバブが現れる。蠅の帝王なら異存もなく、ガブリエルが接近していく。ま
ばゆい光の中から出現する大天魔。

天魔達が霊気を攻撃する。さしもの『輝く闇』も、天魔は容易に消し去ることができない。
ミカエルがサタンに呼び掛ける。
「皆悉く天魔となった...我々も覚悟を決める時だ...」
「やむを得まいな...いくぞ、ミカエル」
激突するようにぶつかる二人。ひときわ大きな光が、柱のように立ち上る。
神が降臨する...。
この世界を創造し、その後いずこかへ消えた唯一神......YHWH!!
《我はアルファにしてオメガである......!》
遂に、創造神と破壊神が激突する時が来た。

アスタロト邸。
「クックック...さあて、どっちが勝つかな...」
サルガタナスが窓から見上げる。傍らのエデンには、なおも愛を貪り合う二人の姿があった...。
「よう...そろそろ兄貴を出しといてくれよ...」
独り言のようにつぶやくサルガタナス。
「......承知した......」
彼方よりの応え。

「今です、我が神...!栄光あれ!」
全ての天魔達が霊気を押し包む。急速な巨大質量の集中。空間が歪んでいく。
《破壊神を滅すること叶わぬ...これより他に術はなし...!!》
YHWH渾身の一撃が霊気を目掛けて殺到する。さらに圧縮された霊気が、臨界点を超える。空間
が縮退する。全てを吸い込むブラックホールの誕生。霊気と天魔達は、一つに凝縮されて墜ちてい
く。YHWHが最後の力を振り絞って穴を閉じ、空間の歪を修復する。
全ての力を使い果たして倒れた神は消滅し、やがてミカエルとサタンが姿を現すが、二人ともぴく
りとも動かない。

《霊気を異世界に送るのが精一杯だった...》
《ああ...一体奴はどこに行ったのだ...》
《わからぬ...が...もはや余に力は残っておらぬ...》
《我もだ...サタンよ...》
動けぬ二人がかろうじて思念で会話する。

「サタン様―!!」
結界から解き放たれたリリスが、彼方からサタンの元に走り寄ってくる。
しかし、それより先に姿を現す二人の影。
「クックック...兄貴...約束だぜ...」
「ああ...姉さんを助けるためだ...迷いはない...」
サルガタナスとアスタロト。
サルガタナスは、剣をミカエルに突きつける。
「クックック...ミカエル...霊気との一戦ご苦労さん...褒美に死を賜る...」
サルガタナスの剣が一閃する。声もなく転がるミカエルの首。
「クックック...さあ、兄貴...」
アスタロトが剣を振りかぶる。
《な、何をするのだ...我が弟よ...》
驚愕するサタン。
「弟だと...姉さんを辱めた貴様など...こうしてやる...!!」
「やめて―!!」
絶叫するリリス。しかしアスタロトは何の躊躇もなく剣を振るう。血しぶきとともに切り離される
サタンの首。
「クックック...この状態で首を落とされてはもはや再生もできまい...クックックックックック...」
サルガタナスの哄笑が周囲にこだまする。
漸くサタンの元にたどり着いたリリス。
「サタン様!サタン様......!目をお開け下さい!」
サタンの首を抱いて号泣するリリス。
そのリリスにアスタロトがふらふらと近づいていく。
「姉さん...これで...これでもう二人だけだよ...」
サタンの首を奪い、投げ捨てる。両腕でリリスの体を抱き締める。
「!!......な、なにをするのです、アスタロト!」
「姉さん...姉さん...」
うわごとのように姉を呼び、唇を求めるアスタロト。両腕はリリスの体をまさぐり始める。
「や...やめなさい、アスタロト...あなたは一体...!?」
アスタロトの唇を必死に逃れながらリリスが悲鳴を上げる。
「クックック...姉貴。兄貴は姉貴が好きだったんだよ...気付かなかったのか...?つれないねえ...」
サルガタナスが嘲弄する。
「サルガタナス...!あ、あなた一体アスタロトに何をしたの...!」
もがきながら詰問するリリス。
「クックック...俺は兄貴の夢を叶えてやっただけさ...これは兄貴が望んだことなんだぜ...」
「そ、そんなはずは...!」
「クックック...秘めた想いは愛しい人に届かずか...悲しいねえ...兄貴...」
そんな二人のやりとりも、アスタロトの耳には届かない。ひたすらエデンの続きを求めるアスタロ
ト。ついにリリスは地上に押し倒される。次々と衣服をはだけられていく。
「や、やめなさい...やめてッ、アスタロト!」
「もうサタンはいない...ずっと...ずっと一緒だよ姉さん...」
ついにアスタロトがリリスの唇を奪う。リリスは必死にもがくがアスタロトの唇が離れない。
「クックック...姉貴...もうサタンはいねえんだしよ...兄貴の望みをかなえてやれよ...」
アスタロトの体を押し返そうとするリリスの手が、偶然短剣に触れる。五大元素剣......覇王!
アスタロトに唇を奪われ、大きく顔を仰け反らせたリリスは、夢中で短剣を引き抜いていた......

荒い息で立ちすくむ、半裸のリリス。傍らには物言わぬアスタロトの死体が転がっている。
「クックック...酷いねえ姉貴...兄貴を殺しちまいやがった...」
呆然とした表情のリリスにサルガタナスが近づく。リリスの手は血にまみれた短剣を握っている。
「これでこの世界には姉貴と俺だけだ...クックック...寂しいねえ...」
ふと我に返ったリリスがサルガタナスを見る。転じてサタンの首を、アスタロトの死体を見る。
「い、いやあああああッ......!」
絶望の呻き声を上げ、発作的にリリスは短剣を己の胸に突き立てた。

「クックックックック......!!」
世界に一人残されたサルガタナス。哄笑が止まらない。
「遂に...遂に俺一人だ...クックックックック...」
周囲を見渡すサルガタナス。
「これで...これで俺は作り出せるんだな...俺の新世界を...!」
ミカエルの首を、サタンの首を、アスタロトの死体を、リリスの死体を見やる。
「くだらねえ感情に...愛や憎しみに囚われた者ども...愚か者ども...だが、俺はてめえらが羨ましか
ったぜ...てめえらの愛と憎しみが、表裏一体だったように、俺の嘲笑は羨望と表裏一体だった...心
が欲しい...ずっとずっとそう思っていた...もう邪魔する奴はいねえ...新たな天地創造だ...なあ
...?」
ドムゴオォォォ......!!
巨大な気配がサルガタナスの半身から近づいて来る。
「フッフッフ...サルガタナスよ...大したものだな...」
超次元の魔神。常に巨大な気が、以前にも増して膨れ上がっている気配がする。
「俺はやったぜ...これでいいんだろう...?これで俺が世界を...俺の望む世界を...!」
「フッフッフ...素晴らしいぞ、サルガタナス...霊気をまるごとこっちに送ってくるとはな...危うく
こちらが呑まれるところであった...」
「クックック...この世界の騒乱がお前の力の源だったよな...どうだ、俺の働きはよ...」
「フッフッフ...実験は想像以上の成果だった...」
超魔神の手がサルガタナスの体に掛かる。
「......?な、なんだ......!?」
「フッフッフ......ご苦労だった、サルガタナス......実験動物としてのお前の役割は終わった......!」
「な、なんだと......!?」
嘲笑も忘れて驚愕するサルガタナス。次の瞬間、サルガタナスの体が内部空間に引き込まれ、ぴし
ゃりと閉じられる。一瞬にして消え去るサルガタナス。

生命の耐えた空虚な大地。
全てのエネルギーを失い、空ろで広漠たる地平が広がる。
たった一つの物体だけが残っている。
天蓋付き寝台......エデン。

ドムゴオォォォォ......!!

超次元の魔神が降臨する。
《...これは一体どうしたことだ...》
超魔神はとまどっていた。エネルギーを吸収し尽くし、用済みになったはずのこの世界に、どうし
てこの自分が下りてきているのか...。
超魔神の向かう先に、エデンが姿を現す。足取りが速くなっていく。
エデンの薄絹の向こうに、眠れる流璃子の肢体があった。緩やかに息づいている胸。
超魔神が薄絹を捲って中に入っていく。ゆっくりと目覚める流璃子。超魔神を見つめ、両手を差し
出す。
「来て...霊気...」
超魔神の腕が流璃子を抱き締める。ベッドの上で一つになった影がゆっくりと沈んでいく。

流璃子を抱く超魔神。その後ろ姿は、いつしか霊気に変わっている。

《これが...我が待ち望んだ結末......?我と...俺と...流璃子が...》

時の止まった小さな小さなエデンの園。二人は永遠の愛に溺れていく......。
新たなアダムとイヴとして......

(了)

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