ノンタソさん

題名:「パズズ教団に潜む淫獣」

後編

第七章 出口のない迷路
(何・・・暗いよ・・・ここはどこなの・・・)
  意識を取り戻した紗耶香の前には、漆黒の闇しかなかった。紗耶香はアイマスクをつけ
られ、後ろ手に手錠、足は縛られ、身を守っていたプロテクターはもうない。上半身はタ
ンクトップ、下半身は下着だけだった。
(これからどうされるのかな・・・怖いよ・・・誰か助けて・・・)
  紗耶香は今にも泣き出したいくらの恐怖を必死にこらえていた。
ギィィィ・・・カッカッカッ・・・・
  扉を開け、誰かが入ってくる気配がした。更なる恐怖におびえていいたときだった。何
者かが紗耶香の腕をつかみ、無理やり立たせた。
「誰・・・何をするつもりなの・・・」
「フフフ・・・そんなにおびえなくてもいいのよ。」
  アイマスクをはずされた紗耶香の前には、憎んでも憎みきれない存在・・・両親の命を
奪ったリリスが立っていた。紗耶香は恐怖をこらえながらも必死ににらみつけた。しかし
リリスはまったく気にもせずに紗耶香の全身を舐めまわすかのように見ていた。
「麻生の娘か・・・あの青臭かった娘がこうなるとはねえ・・・じっくり楽しませてもら
おうかしら。」
  リリスは紗耶香の頭を抱き寄せると、無理やり唇を重ねた。
「んん・・・・・ん・・・・」
  必死に逃れようとする紗耶香の努力のむなしく、リリスはむさぼるように続ける。
「ん・・・んっ?イタッ・・・・」
  紗耶香はリリスの唇をかんだ。リリスの唇からは血が滴り落ちている。リリスの思いも
よらぬ行動に、明らかに動揺していた。
「ちょっと刺激が強すぎたかしら。まだまだ子供ねえ。」
  紗耶香はその言葉に顔を赤らめた。
「いったい何が目的なの・・・・」
「ゴッドサイダーについて知ってることを全部話してほしいの。もしくはわが教団に入信
し、忠誠を誓ってもらえないかしら。両方なら大歓迎よ。」
「どっちもいや・・・と言ったら?」
  紗耶香は少し笑みを浮かべながらリリスに問いかけた。
「わざわざ聞くことでもないでしょう・・・・烏慶!」
  リリスの目つきが変わり、烏慶に鞭を用意させた。それを見た紗耶香の顔に、恐怖が走
る。親衛隊は一度紗耶香の手錠をはずすと、手首を縛って天井から吊るした。そして烏慶
は鞭の柄を紗耶香の顔に突きつけ尋問を開始した。
「知ってることを全部言え。」
紗耶香は何も話さない。
「もう一度聞く。知ってることを全部言え。」
  紗耶香は反応を示さない。その態度を見て、烏慶は鞭を振り下ろした。拷問用に強化さ
れた鞭の威力は想像を絶するものであった。しかし、紗耶香は激痛に目を閉じ身をよじら
せながらも悲鳴を上げず耐えていた。
  そんな紗耶香にリリスは怒りがこみ上げてきた。
「烏慶、鳴くまでしっかり打ちなさい!」
烏慶の鞭は無慈悲に紗耶香の体を打ちつける。瞬く間に紗耶香の体のいたるところに鞭
の痕がついた。タンクトップや下着もボロボロにされ、血がにじんでいた。痛みに耐え切
れなくなり、徐々にあえぎ始めた。そして烏慶の鞭が左の乳房を打ったときだった。
「ぎゃぁぁぁぁーーーひぃぃぃぃーーー・・・・・・」
  紗耶香は激痛に顔を歪め、涙を流し、絶叫した。しかし鞭は休むことなく振り下ろされ、
紗耶香の体を引き裂いていく。鞭で打たれる度に、体をよじり、悲鳴を上げ続けた。
「あがぁぁぁ・・・・ぁぅぅぅ・・・」
  悲鳴は徐々に小さくなっていった。
「そろそろか・・・フッ、まあ死んでは意味がないからな。」
  烏慶は鞭を打つのをやめた。その表情は満足してはいないようだ。紗耶香はうなだれた
まま、ただあえいでいた。その前に烏慶と入れ替わるようにリリスは歩み寄り、あごをつ
かんだ。
「鞭で打たれてずいぶんきれいになったわね。どう、話す気にならない?」
  紗耶香は無視したまま黙っている。
「リリス様、私に考えが。」
  烏慶はリリスに耳打ちした。リリスは話を聞き終わると、笑顔を浮かべながら紗耶香の
方を向いた。
「紗耶香、今からゲームをしましょう。もしお前が流璃子の元へとたどり着いたら、二人
とも開放してやるわ。どう、やってみない?」
「・・・本当なの?」
「本当よ。お前は流璃子を助けにきたんでしょう。それにここに監禁されているよりは可
能性だってあるわよ。」
  紗耶香は今の状況に可能性を見出せなかった。もはや方法はそれしかなかった。
「わかったわ。絶対に約束は守ってもらうから。」
「じゃあ、はじめましょうか。」
  開放された紗耶香は扉を開け、走り出した。
「フフフ、さすがは烏慶。一縷の望みまでも奪い去るなんて。最高の拷問師ね。」
「リリス様もお忙しいですから、あとは私に任せてください。」
  この計画の恐怖も知らないまま、紗耶香は出口のない迷路へと駆け出した。

  紗耶香は流璃子を助け出したい一心で走り続けた。しかし、どこにいるかわからない。
さらに、親衛隊が通路をふさぐ。
「そこ、邪魔よ!」
  幾度となく親衛隊を押しのけて通ろうとするも、親衛隊に跳ね飛ばされてしまう。
「ガハハハハハ・・・通路ならいくらでもあるぞ。もっとも通りたい通路ではないかもし
れんが。ククク・・・・」

  一晩経っても帰ってこない紗耶香を心配した綾乃は、街に出ていた。
(紗耶香・・・きっと無事だよね・・・)
  何もできない自分が歯がゆかった。自分にできることを必死に探していた。
(自分にできること・・・こんな私にいったい何ができるの。紗耶香や流璃子さんみたい
に誰かのためにできることって・・・)
  綾乃は孤児院へ行こうと思った。流璃子へ連れられていった孤児院。そこの子供たちに
触れて以来、紗耶香をつれてよく訪れていた。
(私たちに流璃子さんがしてくれたように、私は何か子供たちの役に立ちたい・・・子供
たちに明るい未来を見せてやりたい)
  綾乃の心の中に、何かが芽生え始めていた。
  その頃、リリスは支所を回る車の中にいた。リリスらは必要以上に一般人に超能力を見
せつけない様に、常に車で移動していた。
「ん?あの娘は確か・・・」
「牧村綾乃という娘です。流璃子や麻生紗耶香とは深い関係にありますね。捕らえます
か?」
「そうね。紗耶香ともども流璃子に口を割らせる道具にはもってこいだわ、フフフ・・・」

親衛隊が通路をふさぐため、紗耶香の行ける通路は限られていた。リリスらに拷問を受
け、親衛隊に跳ね飛ばされ、紗耶香の体力は限界に近づいていた。
(もういや・・・なんでこんな目に・・・)
  気弱になった紗耶香はその場にへたり込んでしまった。
「座り込んでんじゃねえ!早く進めよ!」
「ひっ・・・・」
親衛隊が壁を蹴った。しかしおびえた紗耶香は立ち上がれない。
「早くしやがれ!もたもたすんな!!」
  親衛隊は紗耶香を取り囲み、集団でリンチを始めた。激痛が無抵抗の紗耶香を襲う。
(流璃子さん・・・ごめんなさい・・・迷惑ばっかりかけてしまって・・・)
  薄れ行く意識の中、紗耶香はこのあと自分に降りかかる悪夢を知る由もなかった。

第八章 突きつけられた現実
「霊気、本気なのか?!」
  霊気とラスネールを前にした阿太羅が声を荒げる。
「やつらの本当の狙いは教団の拡大ではない。邪神パズズの復活だ。やつらをたたくには
俺たちゴッドサイダーだけでは不可能に近い。しかし復活させるわけにはいかない。だか
らデビルサイダーと手を組むわけだ。」
「俺はゴッドサイダーだ。そんなことはできん!手を組めばサタンの復活にも手を貸すと
同じだぞ!」
  阿太羅はその場を離れようとした。その前にラスネールが立ちはだかる。
「阿太羅さん、あなたの言うとおりです。しかし相手はわれわれが手を組んだとしても倒
せる相手かどうかわかりません。私も同じく本来は手を組みたくはないのですが。」
「阿太羅、わかってくれ。」
「今回限りはそうするしかないようだ・・・・みんなは俺が説得する。」
  不服ながらも阿太羅は受け入れた。ゴッドサイダーとデビルサイダーの連合軍が、つい
に動き始めた。

「ここ・・・どこなんですか・・・あなたは誰なんですか・・・私を帰して下さい・・・」
  手首を縛られ吊るされたまま、綾乃は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「いろいろ用があってな。いろいろ話してもらおうと思って拉致したのだよ。」
  少し笑いながら烏慶は言った。綾乃はおびえたままである。
「流璃子を知っているな。」
「そ・・・それがどうしたんですか・・・」
「ゴッドサイダーについて知ってることを言え。たとえば隠れ家とか。」
  不敵な笑みを浮かべる烏慶とは対照的に、綾乃は表情をこわばらせ、おびえていた。
「な・・・何も知りません・・・。」
「くくく・・・そういうと思っていたよ、綾乃ちゃん。」
  烏慶は竹刀を持つと、綾乃に見せつけるかのように振り回した。綾乃はいっそう身をこ
わばらせた。
「これの意味がわかるな。話すまで続けるからな。」
  烏慶は綾乃の背中を竹刀で打った。
「いたぁぁぁーーーーーあぁぁぁーーーーーぎゃぁぁーーーー・・・・」
  泣き叫ぶ綾乃を無視するかのように、体中いたるところを打ち出した。
「ぎぃぃーーー・・・ぐえぇぇーーー」
「早く言え!」
「やっ・・・やめ・・・いやぁぁぁ・・・・」
「だったら話せ!」
  烏慶は打つのをやめた。綾乃は顔を涙でクシャクシャにしながらただあえいでいる。そ
の時、綾乃の後ろの扉が開いた。
「ずいぶん苦労しているみたいね、烏慶。」
  リリスが近づいてきた。
「申し訳ありません、リリス様。」
「あやまることはない。このお嬢ちゃんも、紗耶香と一緒で我慢づよそうね。」
  リリスは綾乃のあごをつかみ、顔を上げさせた。
「紗耶香は・・・紗耶香は無事なの・・・」
  搾り出すように綾乃は言った。リリスたちはその言葉を聞くと、ニヤニヤしだした。
「紗耶香ちゃんのことを知りたいの?だったら質問に答えなさい。」
  綾乃はリリスから目をそらした。
「・・・何も・・・知りません・・・。でも、・・・紗耶香のことを教えて・・・。」
「フフフ・・・甘く見られたものね。」
  リリスは烏慶から竹刀を受け取った。綾乃はとてつもない恐怖におびえていた。
「自分の愚かさを思い知りなさい!」
  リリスは怒鳴るように言うと、一心不乱に綾乃を打ちだした。
「ぎいぃぃ・・・」「ぐえぇぇぇ・・・」「いぎゃぁぁ・・・」
「思い知ったか!だったら言え!」
「やめてぇぇーー・・・おねが・・・・・・」
「早く言え!」
  綾乃は気を失った。しかしリリスは打つのをやめなかった。綾乃の体は柳の枝のように
打たれるがままに揺れていた。
「リリス様、お止めになっては・・・」
  烏慶の制止も聞かず、リリスは打ち続けた。やがて竹刀が折れ、ようやく打つのをやめ
た。綾乃の衣服はボロボロになり、体のいたるところにあざができ、皮膚が裂け血が滴り
落ちていた。
「お友達の哀れな姿はいいものでしょ、紗耶香?」
  ボロボロにされた綾乃の後ろに、ボールギャグをされ全裸で縛られたままの紗耶香がい
た。リリスが入ってくるときに一緒に連れてきていたのだ。口を利くことができないため
に、綾乃は気づかなかった。そして親友の拷問の一部始終を見せつけられた。
  リリスは紗耶香ギャグをはずすと、引きずるようにして綾乃の前に連れてきた。綾乃の
姿に紗耶香はおびえた。
「ひどい・・・ひどすぎる・・・。いったいあなたたちは何なの・・・。」
  涙を流す紗耶香のそばに、烏慶は透明の大きめの箱を運んできた。
「悠長なことを言う暇があったら、早く言いなさい!」
  烏慶は身をこわばらせる紗耶香を抱え上げると、箱の中に入れた。
「な・・何するの!いやっ・・助けて!」
「助けてほしいなら言えって言ってるでしょ?言わないのは流璃子のためなの?だったら
流璃子をうらみなさい。こんなに苦痛を与えているのだから。」
  リリスは親衛隊に指示して、箱にホースを入れ水をいれさせた。
「えっ・・やだっ・・・やめて!死んじゃうよ!」
「流璃子は助けてくれないぞ。私の言うことを聞けば、すぐに助けてやるのに。」
「流璃子さんを裏切ることなんかできるわけないでしょ!」
  紗耶香は強気に抵抗する。しかし水がだんだんたまっていき、あごを上げないといられ
なくなった。
「それではもっと苦しんでもらおう。」
  烏慶はふたをした。
「やめてっ・・・怖いよ・・・助けて!」
  ふたをしているために、こもって声がよく聞こえない。徐々に疲れだし、体勢を維持で
きなくなった紗耶香はおぼれ始めた。その様子を見たリリスたちは、大笑いしている。
  疲れきった紗耶香は気を失い、沈んでいった。
「よくがんばるねえ。烏慶、中から引き上げなさい。」
  気を失った紗耶香はぐったりしたまま、哀れな姿をさらしている。
「これだけの意志の強さなら結構使えそうだわ。しっかり教育しないとね。その前に流璃
子に会わせるとするかな。フフフ・・・」
  二人にとって、流璃子は唯一の希望だった。しかし、その流璃子はリリスの手によって
生き地獄の目にあわされている。そして、彼女たちを救うべく動いている男たちは、まだ
このような地獄を知る由もなかった。

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