ハルパスのネタ帳 07章21頁

題名:ハルパスのネタ帳

~いかにしてボクはお仕置きされたのか~3

 パラケルススが中座し、そこに残されたのは濃密に淀んだ快楽の残滓と、今まさに新しく
生み出されてブロケルを犯す快楽。そして行き場を求め空気に染み出すようなハルパスの欲
情。女性には興味がない(鳥は元から考慮の外側だった)ベルゼバブだが、退廃や堕落を好
む悪魔の側の人間としては、それは心地よい空気だった。
「ハルパス、その触手がしっかりと効果を発揮するのにはもう一つ触媒が必要なのです」
 触手がしっかりとブロケルの直腸に達したのを見計らって指を鳴らす。呼応した髑髏ぱん
つが唸りを上げ、今度は後ろを塞ぐ触手も並行してぐねぐねとくねり始めた。
「あ゛、かはっ」
 それと意識しないままに突き出されたブロケルの舌から涎が糸を引いて床に零れた。既に
髑髏ぱんつに膣内を散々に蹂躙され、本来なら炎症を起して痛みしか感じないほどの長時間
犯され続けているにも関わらず催淫成分のために苦痛を感じることはない。更に肛門という
未知の官能器官を侵略され、直腸の粘膜から別の催淫成分を吸収させられているとなれば、
最早それは快楽なのか苦痛なのか判らないくらいに強烈だ。
「お゛っ、お許しを...お願い、これ以上は、おかひくなりっ、ひぅ!あぁ!」
 ブロケルの言葉への返答の替わりにベルゼバブが行ったのは、髑髏ぱんつと触手の同時射
精だった。腰から背中をふいごのように波打たせながら強制された絶頂に咽ぶ姿に、ハルパ
スの股間にそそり立つ一物は幾度も放ったにも関わらず、未だ物欲しげに我慢汁を零す。
「その触手の効果を呼び起こすもう一つの触媒とは」
 ベルゼバブの表情が、少し変わった。皮相な笑みはいつしか、本当に楽しそうな笑みに。
つまらなそうに見ていた目の奥には、僅かながらも黒い炎が宿り始めている。ぺろりと唇を
一舐めしてから、ハルパスのそれを指差した。
「精液ですよ。ですが残念ながら前も後ろも塞がっていますから、そうですね、口を塞いで
おあげなさい」
 きょとんとして動きを止めたハルパス。一瞬見せた探るような目の光はしかし、即座に燃
え盛る情欲の前に溶けて消えていく。唸りを上げて膣内に射精し続ける髑髏ぱんつ、肉の壁
を挟んで隣の穴にねじりこまれて波打ちながら射精し続ける触手、その快楽地獄に喘ぐブロ
ケルの口を凝視したハルパスが固唾を飲み下した。

 細いあごを掴んで上を向かせる。最初は少し抵抗されたけど、炎魔溶断火車用の第二第三
の首を出して乳首を舐めさせたら大人しくなった。考えてみたらさっきまでオマ○コとお尻
は散々責められても胸は誰も責めていなかったから、感覚が新鮮なのだろう。ちなみに汗ば
んだ乳首の味は天上の果実、もとい、地獄の底に吹き溜まった瘴気のように甘かった。だが、
それよりももっと脳が甘くなれるもの目の前にある、ボクが突き出したそれから逃れるよう
にブロケルが顔を背けた。勢い余って頬に押し付けてしまったが、これはこれで柔らかくて
気持ちいい、こう激しくコスりつけて射精してしまいたい衝動にかられた。
「ブロケル、余り抵抗するなら耳から一匹ハエに入ってもらいましょうか?」
 恐怖と絶望に見開かれた目、だがそれこそ今更だった。例えばここでベルゼバブ様が、ボ
クにブロケルをレイプしろと言われても逆らえないのだ。本来なら直接姦るよりもネタにし
てぶっこく方がボクとしては美しいと思うのだけど、そう、逆らうわけにはいかないのだ。
まあそれよりも、だ。
「んぅむ、もごっ」
 唇を押しのけて、温かい口内に先端が包まれただけでボクは頭の中が真っ白になるほどの
圧倒的な快感に脊椎が抜き取られたようになってしまった。押し込もうとするボク、押し出
そうとするブロケルの舌、鬩ぎ合うようにしながらボクは押し上げられていく。くぐもった
吐息の熱、粘膜の湿った感触、何と言う快感だろう。
「ウゥ!ブロケル、ブロケルゥ!」
 我を忘れて腰を振る、喉の奥を突かれたブロケルが苦しそうに咳き込むけど、それくらい
で止まるボクの股間の紳士ではない。飲み下しきれなくなった涎とボクの我慢汁が口から溢
れてぼたぼたと零れていく様はなんて美しいのだろう。そして股間で唸りを上げる髑髏ぱん
つ、内側からじゅぼじゅぼと湿った音が漏れている。後ろにもぐりこんだ触手もびっくんび
っくんと波打ちながら直腸のなかで射精し続けている。何度目か判らない絶頂に体をこわば
らせるブロケル。ああ、髑髏ぱんつや触手、ブロケルばかりがイって、ずるいじゃないか。
ボクも射精したい、ブロケルの口の中にたっぷりと、袋に溜まっていたボクの分身達が堰切
って駆け登ってくる、を゛~、イキそうだ、ブロケルの口で、イカされるっ!

どぷっ、ごぷっ、ごぷっ

「クェエエエエエ!!」
 ハルパスが仰け反ってブロケルの頭を抱え込んで腰を痙攣させる。見ていて判るくらいに
脈打つ股間から、幾度も幾度も噴出す精液がブロケルの口の中に注ぎ込まれた。行き場をな
くしたそれの半分は飲みくだされ、もう半分は口の端から零れ、今なおブロケルを捉えて離
さない絶頂の残滓に震える乳房をぼたぼたと汚した。
「んっぐっ、ん゛っ、ごはっ、ぷぁあっ」
 ハルパスの腕から力が抜け、ブロケルの口が解放される。吐き出された男根は未だ萎える
ことなく、あまつさえ射精し続ける。びゅるびゅると間欠泉のように吹き上がる夥しい量の
白濁液。束の間の解放の間に酸素を求めて呼吸を荒げる口元に、窒息寸前の苦しみとそれで
も取り憑いて離れない快楽に汗と涙でくちゃくちゃになった顔に、すっかり乱れてなおその
艶は衰えることのない菫色の髪にふりかった。催淫成分で敏感になっている体には、その粘
ついた感触や温度、精臭までもが、快楽の焔を煽り立てるものでしかない。
「はぁっ...はぁっ...ベルゼバブ様、どうか、お許しを」
 驚くべきことにブロケルの理性はまだ決壊していなかった。嘆息したベルゼバブは指を鳴
らす。と、髑髏ぱんつの内側の張り型と肛門に挿さっていた触手は硬さを失った。最早開き
っ放しの花弁がひくつく度に、胎内に残っていた髑髏ぱんつの精液がごぽごぽと溢れて床に
水溜りを作る。後ろでもほぼ同じことが起きているだろうが、それはベルゼバブの方向から
はよく見えなかった。ハルパスは不本意半分、いよいよ自分の番かと覚悟半分で顔を伏せた。
「ところでブロケル、何か体に違和感は感じませんか?」
 ブロケルは蕩けてしまったような頭でベルゼバブの言葉をゆっくり反芻する。違和感と言
うなら全身違和感の塊のようなものだ。強制的に繰り返されたオーガズムの影響で意識は朦
朧、関節という関節には力が入らない。前も後ろも穴は開きっぱなしになっている様な感覚
がある。それなのに未だ体の芯には熾き火の様に残る快楽の残り香。そして、それを意識し
た時にはっきりとした違和感に気付く。
「ブ、ブロケル?それは一体」
 ハルパスが後ずさりブロケルを指差した。あるべきものがなくなっていく、そしてあるべ
からざるものが出現する、そんな絶望的な違和感。見たくもないのに、ブロケルは自らの股
間に視線を落とさずにいられない。そして、そこには。
「イヤァァアアア!!」
 ブロケルの絹を裂くような悲鳴。うろたえて意味もなく右往左往するフライドチキン、ブ
ロケルが両手で股間に現れたあるはずのないモノを押さえつけるが、進行しつつあるその変
化は止まらない。口元に手を当てて笑みをかみ殺すベルゼバブ。説明する義理はなかったが、
恐慌をきたしている者に対するネタ晴らしもまた愉悦。
 
『その植物が触手から分泌する成分には催淫作用があり、男女問わずに強制的なオーガズム
と幻覚とによって虜にしてから、自らの分身を植え付けると言われている』

 その分身とは他でもない。
「ホホ...立派なモノが生えましたね、ブロケル。清純ぶっても髑髏ぱんつや触手に全く
抗えなかったメスブタのあなたにはお似合いですよ、オホホ、オーッホホホホホ!」
 ベルゼバブのそれは哄笑であり、同時にまた歓喜の笑みでもあった。ベルゼバブの企図し
たブロケルへの懲罰。それはまさに。
 一体誰が知るであろう。ベルゼバブの執務室兼プライベートルームには『ブロケルちん娘
化計画!~ふたなりプリ○ュア~』と銘打たれたオフセット印刷の冊子がおかれていたこと
を。ベルゼバブがフォラス将軍と愛人関係にあったことは悪魔の側の人間なら誰でも知って
いる。だが、一体誰が知るであろう。普段から『女性には全く興味がない』と公言するベル
ゼバブが実はふたなりっ娘に性欲をもてあますという事実。
「いや、こ、こんなものがっ...しかも、どうして、熱いっ」
 ブロケルは思わず股間を両手で覆って体を丸めたが、その細腕では隠しきれぬ程の怒張は
太さと大きさを増すばかりだった。口をあんぐりと開けてその様子を見守るハルパス。その
様子が、ブロケルの身に起こっていることが幻覚の類ではないことを物語る。丁度そこに、
席を外していたパラケルスス医師が戻ってくる。
「お待たせいたしました、ベルゼバブ様...ウオ!?これは」
 その表情はハルパスが浮かべたものと大差なかった。だが、すぐに彼の悪魔医師としての
知的好奇心が勝ったようだった。
「これは一体どのような秘法を使われたのですか?応用すれば私のホムンクルスにも男性体
を作ることができるやも...いや、そんなことをする意味もないか」
「パラケルスス、研究熱心なのは結構なことですが、準備は整ったのですか?」
「は。いつでも」
「よろしい。では、ブロケル。条件次第では、今回の失態の追及はここまでにして差し上げ
ます」
 ブロケルの瞳が安堵に揺らいだ。問題は山積だが、少なくとも今ここで理性もなにもなく
なるまで拷問を受け続けることはなくなったわけだ。髑髏ぱんつだけならまだ少しは耐えら
れそうだったが、最後の触手肛姦は危なかった。催淫成分の効果もあるとは言え、まさか肛
門であれほどの快楽を感じてしまうとは思ってもいなかった。いずれせよ、これで、条件さ
えクリアすれば望みは見えてくる、次回出撃の機に乗じて神の側の人間達に帰順してしまえ
ば...ハルパスが何やら隣で喚きたてているが、彼にすれば次は自分の番なのだから無理
からぬことだろう。理解は出来るが同情する義務も義理もないのだった。
「条件、ですか?」
 問題はそこだった。
「ホホ、そんなに警戒しなくても簡単なことですよ」
 ベルゼバブが何故か上機嫌な笑顔で、これまた何故かブロケルとハルパスに交互に視線を
投げる。
「あなたが、それでハルパスをレイプするのです」
 余りに予想外過ぎる言葉に、ベルゼバブ以外の全員が意識の空白を覚えた。一瞬だったの
だろうか、それともそれよりも幾許かは長い時間だったか。最初に動いたのはハルパスだっ
た。悲鳴に似た声を漏らしてへたり込むが、何故かその表情には仄暗い愉悦が浮かんでいる。
ハルパスが取り乱して有耶無耶になるような展開も期待したが、この様子では無理そうだっ
た。しかしハルパスを?このハゲ頭の自己認識の誤ったとっちゃん坊やをか?自問するだに
吐き気を伴った嫌悪感がこみ上げてくる。だがその程度の感情的な嫌悪ならむしろ目を瞑る
べきだ、ここを切り抜ければブロケルの、いや『流璃子』としての未来がおぼろげながらも
見えてくるのだ。そう思っても尚、ここでベルゼバブに従ってハルパスを犯すのは抵抗が強
かった。僚友と思ったことなど一度もない。彼の尻がどんな惨状に陥ろうと同情など全くす
る必要もない。抵抗の理由はそういうことではない。強いて言うなら勘、理由付けをしよう
と思うのなら本来の巫女としての能力に基づく直感。今ここでそれを行ってしまったら...
そんな正体不明の忌避にも関わらず、股間にそそり勃つそれは勢いを失うことがない。
「まあ、そこでブロケルが躊躇するのはわかっていましたよ。ですがそっちの快感も一度覚
えてしまえば病み付きになりますよ。パラケルスス」
「は」

 わたしはすぐに気付くことになった。希望など泡沫のものに過ぎなかった。もとよりそん
なものはこうして地下牢に拘束された時点で皆無だった。
 パラケルスス医師が扉の外に向かって何事か合図をすると、彼の研究の結果生み出された
無精人間(ホムンクルス)の少女達が何人か牢に入ってきた。違和感を感じたのはその目つ
き。本来彼女らは無精人間と言っても悪魔の側の人間ではない。身体能力が並外れているだ
けで普通の女の子なはずなのに、わたしに送る視線はとてもそうは思えないものだった。
「さあ無精人間達、皆さんでブロケルにソレの使い方を教えて差し上げなさい」
 彼女らはどこか虚ろなくせに奥底に得体の知れない色の光を湛えた瞳でわたしを見据え、
艶然と微笑む。そして、未だ固さを残したような未成熟な肉体とその笑顔のアンバランスさ
に、股間が反応した。どうして?わたしの感情の振幅とは全く関係のない思考回路をそこは
持っているというの?
「クェェエ!ボ、ボクは関係な...はぁあんっ」
 巻き添えを食らって既に射精しまくっている(早いな、おい)ハルパスは最早埒外だった。
無精少女の一人がわたしの唇を塞ぎ、その舌がわたしの口の中に滑り込んできた時には、甘
い痺れが体を支配しかかっていたので。髑髏ぱんつと触手のせいだ、体の中に催淫成分が残
っている上に、散々イかされたせいで敏感になっている。舌から脊髄を伝って全身に広がっ
て股間に集まっていく甘い痺れに、状況を忘れて陶然と酔う。だがそんな穏やかな快感に身
を任せていられたのは最初だけだった。更に二人の無精少女の唇が両方の乳首を咥え込む、
痺れるような快感に思わず声が漏れるけど、絡められた舌、塞がれた唇から零れたのはくぐ
もった吐息だけ。既に固く尖った乳首をミルクを飲む子猫のような音をたてて吸い立てる無
精少女、息も出来ないほどに深く唇を交わらせて舌を躍らせる無精少女、それだけでも腰の
後ろ当たりに熱い何かが凝り固まっていくのを感じる、これが、男の快感なのか。止せばい
いものを、自らの股間に視線を落とさずにいられない。へそまで反り返って血管を浮き出さ
せた赤黒い物体、びくびくと震えて透明の粘液を先端から染み出させるそれが、果たして本
当にわたしの意志と無関係なのか、もう自信がなかった。何故なら、無精少女たちが丹念に
舐め上げる脇の下や足の裏、全身を這い回る快楽の小波が収斂していくその部分に触れられ
ずにいるのがもどかしくて仕方なかったのだから。
「ホホ、どうやら焦れてきたようですね」
 悔しいけどその通り。わたしは、そこをこすって欲しくて、溜まりに溜まったものをそこ
から吐き出したくて仕方ない。
 そう、すぐに気付くことになったのだ。わたしは与えられる快楽に逆らえない。
 
 一瞬後には無精少女の一人が、先ほどの触手をブロケルの肛門にねじりこんだ。声になら
ない吐息の塊を吐き出してブロケルは体を弓なりに反らせる。後ろから押し込まれた触手に
押し出されたが如く、小規模な射精のような勢いでカウパー腺液を噴出させるそれにはしか
し、未だ誰も触れようとしない。蠕動しながら熱い液体を腸内に放つ触手、無精少女達の体
中を舐め上げる舌、それだけでは決して達することのできない快感。そこに辿り付いたなら
それは一体どれほどの快楽なのか。期待と恐れがブロケルの脳内を曇らせていく。
「ハァ、ハァ、お願いです、もう...お許しを」
 腰をくねらせるのはもう快感を享受するため以外どんな理由もなかった。彼女が求める
『許し』とは一体何を指すのだろう。だがとにかくにも快楽を求めて腰をくねらせて怒張し
たそれを無精少女に押し付けようとするブロケル、器用に身をかわしながらそれ以外の部分
に絡みつき、決してその部分だけには触れない無精少女、もどかしく昂ぶる性戯は続く。女
性としての快楽には何とか耐えてきたが、初めて知る男性の快感は抵抗し難かった。しかも
目前に見える頂にいつまでも届かずに嬲られ続ける。理性が蕩けていくのが自分でも判るよ
うだった。ベルゼバブが目を細める、もう一押しで崩れるであろうその理性を、自らの手で
崩れ堕ちさせるのもまた一興か。
「手枷を外してみましょうか」
 言葉どおり、無精少女達の手によって手枷が外される。ほぼ反射的に手が股間に向かいか
けてぎょっとした。そこには赤黒く腫れ上がったように怒張した見慣れない器官。血管を浮
かせて先端から透明な液体を零す、浅ましい欲望の塊。無精少女達が触れてくれないからと
言って今何をしようとした?そこに手を触れたところでどうしようというのか。
「どうしました?辛そうだから手を自由にして差し上げたのですが?」
 唇を噛んで固く目を閉じるブロケル。だが無精少女達は耳元でくすくすと笑いながら耳朶
を舐め上げ、舌先を耳に押し込み、囁きかける。ネエ、モットキモチヨクナリタイデショ?
イキタインデショ?まるで声を振り払うように頭を振っても、頭の中は靄がかかったように
なって、甘ったるい熱に浮かされた思考は快楽に身をゆだねたがっている。
「なかなか頑張りますねえ」
 ベルゼバブがもう一度指を鳴らす。どうしてこういちいち合図が指ぱっちんなんだろうか、
パラケルススは言葉に出さずにツッコみを入れた。ハルパスは何発抜かれたか判らないがぐ
ったりと床に伸びている。それはともかく、合図に呼応して無精少女の一人がどこからか広
口の瓶に入った粘性のある透明な液体を持ってきた。
「成分は企業秘密ですが、ちょっと楽しい薬です、じっくり楽しんでください」
 傾けられた瓶からねっとりと糸を引きながらブロケルの体にかかる液体、熱を持った体に
ひんやりと心地よい温度で絡みついたその絶妙の粘性。ぬちゃぬちゃと音をたてながら塗り
広げられ、塗りこまれるたびごとに体の芯に灯った情欲が発熱する。痛々しいほどに固くし
こった乳首をしごかれ、脇腹や脇の下から足の指のまたにいたるまで愛撫され、相変わらず
直腸を犯され続け、それでもなお射精だけはさせてもらえない。多分簡単だ、今それを握っ
てしごけば瞬く間に絶頂を得られるはずだ。だが、きっとそれは戻れない何かを踏み越える
瞬間だと直感している。
「では、これはどうでしょう」
 もうベルゼバブの声は聞こえていなかった。ただ、瓶の口からぬろりと流れ落ちるその先
に自分の股間があることに気付いて、ああ、と溜息を漏らす。耐えられるはずがなかった。
液体の重みだけ、その心地よいぬめりに包まれるだけでも悲鳴に似た声をあげてしまったが、
当然ながらその瞬間だけの快楽で、もうあとは歯止めの聞かない絶頂への渇望だけが残る。
今までの逡巡がまるでなかったように、ブロケルの右手はあっさりとその根元を握り締めた。
左手が、ローション塗れの乳房をぎゅっと掴み、人差し指の腹で乳首をこね回す。
「んあ゛ぁっ」
 涎と一緒に甘ったるい、だが切羽詰って濁音交じりの喘ぎが漏れた。その声は浅ましい。
その表情もまた淫らな色を湛えている。来るべき絶頂に必死に駆け上るその姿は、最早鬼哭
一族の巫女としての流璃子でも、怜悧で冷徹な悪魔の側の人間の仮面を被ったブロケルでも
なかった。その事実すら彼女の劣情を駆り立てて、彼女の唇から淫らな喘ぎ声を漏れさせる。
「んおっ、オオっ、気持ち...ぃい、気持ちいいっ!」 
 ごしごしとしごきたてられて殆ど白濁した先走りを迸らせているその尿道口を無精少女の
一人の唇が包み、そのまま口の中に上半分が収められてその舌技を思う存分味わうことにな
った。溜まりに溜まった情欲を、壊れたような嬌声とともに解き放つ、初めて知る射精の快
感に身を委ねてだらしなく涎を零す口から誰にともなく絶頂を告げる。
「んぉっ、イ、イキますっ、出しますぅぅぁあ゛あ゛っ」
 腰を突き上げて無精少女の口内を犯しながら根元をしごきたて、自らを頂に押し上げる。
 
 どびゅるっ
「あ゛~っ♥出てるぅっ」
 ぶびゅるるっ
「射精してるぅ、わたし、精液どぴゅどぴゅしてるぅ♥」

 猛烈な勢いで吹き上がる白濁液、びくんびくんと、陸に打ち上げられた魚のように激しく
のたうちながら留まる事を知らずに射精を続けるシャフトを、これまた止まらずしごき続け
る右手。びゅるびゅると際限なく吐き出される精液はブロケルの胸や顔にまで届いてびちゃ
びちゃと肌を汚していく。
「オホホホ、すごい、素晴らしいですよブロケル。なんていう量ですか、私よりも大量では
ないですか、オーッホッホッホッホ!」
 ブロケルは焦点の合わない瞳を虚空に泳がせながら、息を喘がせる口の中に飛び込んだそ
れを、躊躇することなく飲み下した。舌に絡む粘っこい感触も、鼻につく青臭い匂いも、そ
れを放った股間の欲棒に更なる活力を注ぎ込む。

『止まらない、狂ってしまう...ああ、狂えばいい、だって気持ちいいもの』

 心のなかに残る理性が音もなく崩れ去っていく、いやそれすらもブロケルはもう感じてい
なかった。それは、恐らく相手がハルパスであろうと穴さえあれば性欲をもてあます、性欲
の奴隷が性誕した瞬間だった。かくして狂った宴は新しい局面を迎えた。いやに嬉しそうな
ハルパスの悲鳴、嫌悪を上回る快感に嬌声を上げながらハルパスの腸内に射精し続けるブロ
ケル。ベルゼバブはその姿に、滅多に見せることのない愉悦の表情を浮かべていた。


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