ハルパスのネタ帳 07章21頁

題名:ハルパスのネタ帳

~いかにしてボクはお仕置きされたのか~4

「チソコ」
 俺は虚ろな目を泳がせながら思わず呟いた。
「グレイフォックス!」
 いつの間にそこにいたのか、ヴァッシュさんが後ろで勃っt、もとい。後ろに立っていた。
「勝負パーンツで...」
「お、訳進んでるな」
 いきなり素ですか。まあいいや。俺は昔のクセで胸ポケットを探った。ああ、そう言えば
煙草は辞めたんだった。流璃コキズムに傾倒というよりも没入していた頃の習慣だ、作業が
一段落したら煙草をくわえるのは。つまみ食いのつもりで他のジャンルに手を出して還って
こられなくなってどれくらい経っただろう。
「またマニアックだな、おい」
 確かにいろいろ微妙なネタだ。これが今までのネタ帳とは風合いが違うから俺に依頼を回
してきたということは判っていた。だが、余りにもあんまり、だ。
「ここから先以降、訳するの凄く嫌なんですけど」
 何故ならこれはハルパスのネタ帳なのだ、賢明な読者諸君は気付いたであろう、途中から
全くハルパスが蚊帳の外なのだ。当然彼はこれから登場し、八面六臂(嫌な八面六臂だな、
おい)の活躍を披露する。ここから先は彼の独壇場なわけだが...彼はどうやら相手がブ
ロケルであるのなら下半身が男性であろうと、そしてその欲情が自らの穴に向けられていて
もネタにできるらしいのだ。
「ぎゃーっ!すごいな、さすがハルパス、徹底してるじゃないか」
 ごく一部をやっとの思いで書き下した部分を見てヴァッシュさんが声を上げる。これ以上
はどうにも誰が読んでもドン退き必至だ。だが、依頼は依頼、じっくり取り組むしかない。
「ああ、今日の今日だけは煙草をもう一度吸いたい気分っす」
 ない、のか?本当に俺は、ハルパスがオカマを掘られながら射精しまくる姿をこうしてキ
ーボードに叩き付けなければならないのか?
「まあ、今日はこの辺で休んだらどうだ?明日もあるし」
 嗚呼、そのパレードh...じゃなかった。この狂ったズリネタはどこまでも続いていく。
その夜ヴァッシュさんと一緒に飲んだ酒の味はよく覚えていない。最早今訳している章には
性欲をもてあませないだろうと言う少なからず失望に彩られた明日以降の作業を思えば度を
過ごした深酒に逃避したくもなるというものだ。
 だが、間違っていた。俺はハルパスという漢、いや侠を判っていなかった。



 ハルパスのネタ帳。それは「存在してはならない書物」  とある流璃コキストの残した  厚さ10cmのイカ臭い表紙の古書    そこに記されていたのは 連載開始以来の数多の記録  ある種の性欲をもてあます 歴然としたネタ帳  それをズリネタとして認めるならば  我らの肯定してきた流璃コキズムとは何なのだろうか?  書の記述は彼の死後まで及び 一つのシチュエーションに  複数の妄想を芽吹かせ 蟲惑のオナニーを咲かせる  その最大の論点は 近い未来にこの世界のズリネタが  全て流璃子になるという願望 
引用元)姦璃人ヴァッシュ「神説・流璃コキズムの起源とその変遷」(民日月書房19XX年)69頁




 舞台は巡る。最早還れぬ楽園を胸に彼女は彷徨うように回廊を行く、だがその行く先にも
恐らく希望はない。そう、判っていた。だから彼女にとって行く先が定まっていようといま
いと彼女の足跡は彷徨に過ぎなかった。ともあれ、足を止めた彼女が見上げる表札に綴られ
ていた文字は『悪魔病院~パラケルススの無精少女幼性養成施設~』。ブロケルは眉をひそ
める。後半の文字は初めて見た。だがそれを気にする余裕は今の彼女にはない。確かにベル
ゼバブの与えた罰は先日の狂宴で終わった。地獄の植物に肛門を犯されながらハルパスを犯
しまくり、犯されながら射精し続けて精魂尽き果てた鶏ガラをうち捨てた時点で、日本での
失態は免責され、身柄の自由を得たのだ。拷問もなければ査問もなかった。だが股間に植え
つけられたその植物の分身はどうやっても除去できなかった。
「そうか。それでこのパラケルススにどうせよと言うのかね」
 恥を忍んで院長室を訪れたブロケルに投げかけられた言葉はあくまで無機質だった。
「その、この間ベルゼバブ様に植えつけられた植物の分身を取り除いていただきたいのです」
「あー、ティムンプォか」
 わざと下卑た言い回しを使いながら、無精人間の研究レポートに目を落とすふりをしたパ
ラケルススの脳内では全く違う文書の内容を反芻していた。

『いつの時代もどんな状況でも悪魔の側の人間でも性欲をもてあます』

 これもまた無駄に金の掛かった訂装(エンボス加工の中厚の表紙は黒塗りでタイトルが白
抜きの毛筆体ででかでかと記されている。フォントは地獄でも有名な毛筆家に依頼して描か
せたお手製のものらしい)の指示書。反芻しながらブロケルに背を向けたままで口を開く。
その言葉は、ブロケルにとって俄かには首肯しかねる内容だった。例えどれだけハルパスを
犯している最中でも、その腸内に精液を注ぎ込んでいるときでも、嫌悪感は片時も心の片隅
から消えることがなかった。当然だった。排泄欲を満たすその行為だが、対象が醜悪過ぎた。
「その植物の分身の力を失わせる方法は判っています」
 それは、成長しきって生殖能力を得る前に分泌液を搾り尽くしてしまえば力を失い、自ら
ぼとりと落ちるという。だが、その搾り尽くすまでにどれ程の量の射出が必要なのかは判ら
ない。そして、今もそれは成長を続けている。成長しきってしまえば、どれ程の射出が必要
なのかという問題は無意味になる。
「ですが、その、どうやって」
「簡単ですよ」
 パラケルススは相変わらず背を向けたまま、机に備え付けられた呼び鈴を押した。

 わたしはどうして逆らえなかったのだろう。胡乱な頭にそんな疑問が浮かんだのは最初の
頃だけだった。一人の無精少女に導かれるままにこの部屋に通された時、既に私の理性は壊
れてしまっていたのかも知れない。
「ブロケル様、どうか私たちの体をお役に立ててください」
「さあ、腫れあがったそれを慰めて差し上げます」
 控えめながら淫靡な誘いの言葉を吐きながら裸体を晒す無精少女達。その姿に蘇る記憶。
あの醜悪なハルパスとの交わいの前に一時与えられた禁断の美酒。彼女らの優しく淫らな愛
撫が今再び与えられようとは。そして今度はそれだけではない、その柔肉を思う存分味わう
ことが出来るのだ。想像するだに股間の熱が昂ぶっていく。
「ブロケル様の思うままに犯して、膣内でも口内でも、お好きなだけ射精して下さい」
 まるで股間のそれ自体の意思に支配されるように、燃え上がる情欲。わたしは手当たり次
第といった体で一人の無精少女を組み伏せて、そそり勃つそれを柔肉に突き立てた。そこに
はもう、逡巡は一瞬たりともなかったと思う。筆舌し難い快楽だった。未だ幼さを残す狭い
肉壷でありながら、パラケルススをはじめ多くの悪魔の側の人間達によって開発されたであ
ろう快楽器官。それはさも当然のように絡みつき締め付け、股間の雄の欲望を煽り立てる。
雄の器官から精液を搾り取るためだけに存在するようなその機能。アァ、これでは、すぐに
イってしまう。
「はぁあ、ブロケル様、逞しいですぅ」
 鼻にかかったような喘ぎ声はまるで耳から進入して脳を愛撫するように甘い。朱に染まる
肌は、女のわたしから見ても美しかった。そして、無精少女の一人を浅ましく貪る私の体に
何人かの無精少女がすがりついていた。腰の動きに合わせて揺れる乳房をつかまれる、既に
痛いほど充血した乳首をこね回される。甘い痺れが、体の芯を、背骨を駆け抜けるように、
下腹部に集まって、あ、出る、射精するっ...
「あ、出てます、お腹の中でブロケル様の子種がびゅるびゅるって」
 腰から下が狂ったように痙攣している。わたしは零れる涎も浅ましく喉を震わせる声も気
にする余裕なんてまるでなく快楽に翻弄されていた。だから、無精少女の一人が何かをわた
しのお尻に挿し込んだ時も、それが何を意味しているのか考えもしなかった。いや、理解し
たところでこの快感を一瞬たりとも手放すなんてわたしにはもうできなかった。むしろ肛門
への快感を味わいながらの射精の感覚を早く味わいたくて、無精少女の細い腰を掴んで乱暴
に抽送を繰り返す。決して豊かとは言えない乳房を揺らしながら紅潮した顔に浮かべる表情
は従順かつ淫靡。甘い喘ぎ声をあげ、お互いの快楽を高めることに集中してくれる至高の肉
奴隷。本来の『流璃子』であればそんな存在に堕とされた無精少女に同情の念を禁じ得ない
はずだった。だけどもうわたしは...
「ブロケル様っ、熱いの、お口にくださいぃ、ブロケル様のせいえき、飲ませてぇ」
 だってほら、この子もこんなに欲しがっているのだから。こんなにも皆が気持ちよくなっ
て愉しんでいるのに。私だけ理性に囚われて快楽を抑えつける意味なんてどこにあるという
の?声に応えて無精少女の股間からずるりと引き抜いたそれは愛液と、そしてわたしの精液
でぬらぬらと光っていた。それを扱き、無精少女が舌を突き出す口に向けて欲情の塊を放つ。
顔中を白濁液に塗れさせて呆けたような笑みを浮かべる無精少女の表情、それとわたしの表
情は大して変わらないものだっただろう。

 狭い部屋に複数の息遣いと湿った肉の擦れ合う音が響いていた。何人もの女性の汗と愛液
に混じってもなお際立つ精臭。ブロケルはとめどなく射精を続け、無精少女の前といわず後
ろといわず上といわず、穴という穴を犯し続けていた。一方ブロケルの肛門にはいつの間に
か件の触手が挿入され、催淫成分と一緒に分身の種を腸内に射出し続けていた。もはやブロ
ケルの股間のそれは幾度射精しようとも力を失うことなどないだろう。
「アアアアアっ!出る、また射精しちゃうゥウウ!」
 最早当初の目的を忘れて快楽の為だけに腰を振り続けるブロケル。別室でその様子を監視
していたベルゼバブは、自らの企みが完遂されつつあることに満足気に微笑んだ。そして、
その性欲の奴隷と化したブロケルに犯される自分の姿を想像して、またブロケルの後ろを犯
しながらそれをしごきたてて射精させる自分の姿を想像して、股間と期待を膨らませていた。




「後半ハルパス出てこないのかよ」
 訳を終えてプリントアウトした束を読みながらヴァッシュさんは素でツッコみを入れた。
「自分がネタである必要すらないということですね。凄まじい奴です」
 俺にもまあ経験はある。自分ではなくそこに登場する誰かとしての『考えがき』、もしか
したらハルパスは自らをふたなり化したブロケルの姿に仮託しての妄想オナニズムに挑んだ
のかも知れなかった。今となっては俺たちの解釈以外に彼の真意を伝えるものはないのだが。
「それはそうと、とげとげよ」
 ヴァッシュさんが鼻をつまみながら顔をしかめた。
「お前は俺の部屋のゴミ箱を妊娠させるつもりか」
 何のことはない、俺もまたふたなり流璃子に自らを仮託して無精少女と交わう妄想に取り
憑かれた。結果、天文学的数字の俺未満が非業の死を遂げていた。これがハルパスのネタ帳
の恐ろしいところだ。既に門外漢を自認する俺をも尚、こうして自涜の念に駆り立てるだけ
の懐の深さ。驚異的と言わざるを得ない。
「ファブ○ーズ取ってくる」
 俺の述懐など何処吹く風でヴァッシュさんは部屋を出て行った。というか、ファ○゛リーズ
しなきゃならないほどに空気が淀んでいたか。ゴミ箱に放り込まれたティッシュの塊に目を
やる。闇オナニズムは今や俺には使えない。モニターの向こう側やお人形に、ただ漫然と性
欲をもてあます萌え人に過ぎない俺は、ただ無為に散らせた命に対する言い訳一つ持ち合わ
せていなかった。
「たまにはいいだろう、流璃コキズムも」
「そうですねえ、久し振りにハルパスのぶっ飛んだ為人に触れて楽しめました」

 確かに流璃子(ハルパスにしてみればブロケルだが)で抜くということに関する執念たる
や、ベクトルは違うがヴァッシュさんに匹敵する物を感じる。だが彼のネタ帳に絶対的に不足
しているものがある。それ故にハルパスは不完全なままで冥界逆葬送の薄衣を纏った流璃子
で抜いたのを最期に地獄へと退場しなければならなかったのではないか、と俺は考えている。
「ハルパスの不完全さについて、か。確かに評価はいろいろ別れているが...だが殊ジャ
ンルに関して言うなら、フォラスや出っ歯霊気あたりの流璃コキズムや、法粛の賢者の石を
悪用した無精少女陵辱などとは一線を画する多様性を誇るぞ。触手もあり、汁だくもあり、
肛姦もあり、あまつさえ成金まで」
 確かにヴァッシュさんの言うとおりだった。だが。
「幼流璃子がないっしょ」
「...」
「ぺたんこな流璃子をこう、出っ歯霊気とかがズンパンと」
「犯罪臭がするだろう、それ」
 ヴァッシュさんが眉を潜めた。嗚呼、そうだ、ヴァッシュさんもこっちのベクトルに関しては
否定的な部分がある。『袂を別つ』程ではないにせよ、俺が別のジャンルにつまみ食いに走
った理由もこのあたりにあったわけだ。
「ぺたんこ流璃子に生やしたりしたらどうですよ」
「いや、無理、それは流石に無理だから」
「ぺたんこ流璃子に生やしたら、俺姦られてもいいや」
「還れよ変態」






後書きっぽい伺か

 えー、久し振りの方よりもお初な方のほうが多いと思います。お初音、とかそんな古くて
畑違いなネタ大好きのとげとげであります。来るべき(20050803現在)壱百萬hit記念として
寄稿させていただきました。えー、実は当方、2NDも霊牙も読んでません、知識やネタが無印
ゴッドサイダーまでしかない身で出過ぎた話かとも思いましたが、思っただけです(ォ
 また、畑違いと言う逃げ口上を弄しやりたい放題のパクリをちりばめた作品になりました。
全てのサンホ○ーの方々、M@DGEAR職人の方々にはお詫び申し上げたい気分です。でもお詫び
申し上げるくらいなら最初からパクったりしませんので、気分だけです(ォ
 当然のことながら、この作品中に登場する全ての団体と人物はフィクションです。誰かの名
前と似ているとか何かの漫画の登場人物に似ているとか、そういったツッコみは「察する心」
でスルーしていただければこの、ご乱交ベルク伯コキフレッド、オルガスムスの極み。意味わかりませんね、はい
 
 何にしても、最期まで読んでいただいた方、途中で放り投げた方全てに深くお礼を申し上げ
たいと思います。
 最後になりましたが、妄想を開示する場を下さった姦璃人様にも、あがとりい(謝辞

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