「シリーズ”雷鳴”」

題名:雷鳴

雷鳴

 退屈だった牢番。俺はこうしてずっと牢を眺めているだけで一生を過ごさなければなら
ないかと思うと気が狂いそうだった。俺達の種族は、類まれな破壊力を持ちながらも行動
速度の遅さから戦闘においては予備兵力として扱われ、前線に立って先陣を切る機会には
ほとんど恵まれなかった。普段は忍耐強い性格を買われ、こうして牢番として来る日も来
る日も牢獄を眺めることが重要な役目とされていた。いつ終わるともわからない任務の中
で、明らかに俺は倦怠感に包まれていた。

  そんな俺でも楽しみが無かったわけではなかった。そう、それはある非番の日に見た"あ
の光景"のことだ。俺はヘルス・ボーダーに流れる地下水脈の近くの岩道を歩いていた。
ちょうど足元に見下ろすように水脈が流れており、少し歩いていくと岩を降りて水浴びが
出来る河原に到達することができた。俺は、退屈な仕事が終わると決まって川で体を洗う
ことにしていた。特に綺麗好きというわけではなかったが、川の流れを見ながら体を洗っ
ているとなんとなく詰まった気持ちが流れていくような気がしていたからだ。
  いつものようにその水浴び場に向かっていると、その日は先客が来ていた。構わず近づ
いていこうとしたが、俺は先客の体の特徴に目を疑った。そいつは、人間の女の体、それ
も10代後半ぐらいの張りのある美しい胸と引き締まった腰元を備え、綺麗に伸びた長い髪
をたなびかせ、これ以上ないと言わんばかりの体を人目を憚らずに惜しげもなくさらしな
がら水浴びをしていた。水を一浴びするごとにまるで体から光が発せられるかのごとく美
しい体に磨きがかかっていくのが少し離れた場所からでも十分にわかった。
  俺は、呆然とその姿を眺めていたが、ふと我に返り慌てて岩陰に隠れて女の水浴びを一
瞬たりとも見逃さないようにじーっと覗き込んでいた。それが「水魔ブロケル」とのはじ
めての出会いだった。この日以来彼女の水浴びを見ることは出来なかったが、あの美しい
体を思い出すだけで俺の男性器は天に届かんばかりにそびえ立ってしまった。
「もう一度あの女に会いてぇ!!」
これが俺の心の叫びであり、そしてこれが俺がこのクソ退屈な任務をどうにか遂行しうる
心の拠り所でもあった。そして俺は運命の日を迎えるのだった。

「第1話 牢番の役得」

「きいているね、死魔使いウトック!!」
「ハッ!!」
「存分に手柄を立ててくるがいいわ!!」
「ハハーッ!!」

「さて、ウトックが霊気と遊んでいる間に、あなたに罰を与えねばなりません。どうして
かわかりますか?」
「そ、それは・・・・」
「流璃子、あなたの生まれた日本では"恥"というものを大切にすると聞きました。なの
にあなたは我々を裏切り霊気を見逃したばかりか、先ほどは私に色目を使って助かろうと
しましたね。これは、あなたの生まれた日本では"恥知らず"とののしられる行為に他な
りません。よって今からあなたに私が"恥"というものを教えてあげましょう。」
不敵に笑みを浮かべるベルゼバブは、一瞬鋭い眼光を放つと、
「全デビルサイダーに告ぐ!わたしはフライマスター・ベルゼバブ。これより裏切り者の
公開再教育を行う。ヘルス・ボーダーに駐屯する全デビルサイダーは、わたくしベルゼバ
ブの謁見の間に直ちに集合なさい!」


「ファイエル!(撃て!)」
14:30、ベルゼバブの号令一下、全裸で吊るされている流璃子を東西南北に4人一列横隊
に整列したデビルサイダーが取り囲み、たちまち流璃子に接近して思い思いに自慰をして
半人前の人間を発射していく。ベルゼバブによってよく訓練されたデビルサイダーたちは
一列が自慰して果てると即座に後列に下がり、後方に待機していたデビルサイダーと交代
でどんどん流璃子に半人前の人間を浴びせ続けた。
「わたしは、日本の兵法というものにも興味がありましてね、戦国時代織田信長という大
名は、鉄砲の運用に非凡な才能を示し、伝説ではこうして鉄砲隊を組織して順番に単発式
の火縄銃を撃たせては交代を繰り返して間断なく相手方の武田騎馬隊に銃撃を加えたらし
いです。歴史上は確固たる裏付けの史料に乏しく、真偽の程は定かではありませんが、現
代に生きる我々にとっても十分に示唆に富んだ戦術と言えるでしょう。日本生まれのあな
たにこうして敬意を払って故郷の戦術でもってあなたを再教育してあげていることに感謝
なさい!オーホッホッホッホッホ!」
  ベルゼバブの組織したデビルサイダーの陣形は、崩れることなく間断なく流璃子に半人
前の人間を浴びせ続けた。10万になんなんとするデビルサイダーを見事に統率し、一人の
脱落者も無く交代させていくベルゼバブの手腕は尋常ではなかった。そして、この戦術が
さらにダイナミックな戦術へと変化していくのが、初撃を発射してから2時間30分後の
17:00だった。ベルゼバブは、前線で間断なく半人前の人間を浴びせ続けたデビルサイダ
ーたちが疲弊するのを悟ると、今度は流璃子を四方から囲んでいた陣形を解き、高台に立
たせた一撃大量発射型のデビルサイダーたちによる遠距離射撃に切り替えた。
「ファイエル!続いて斉射三連!」
勢いよく出される精子はさらに流璃子の体にへばりつくようにかかり、流璃子の呼吸すら
も圧迫した。体中精子まみれにされ、呼吸もままならず哀れな表情をただただ浮かべるだ
けの流璃子。もう限界は目前に迫っていたが、ベルゼバブはそんな流璃子の様子にはあえ
て目を向けずに、"教育"の手を一向に緩めようとはしない。
それどころか、さらに流璃子にぶっかけを続けようとしている最中、一匹のベルゼバブの
使い魔の蠅が帰還してきた。
「大変です!ウトックが霊気の前に遅れを取りました!!!」
「やはり、ウトックごときでは足止めすらも敵いませんか。仕方ありませんね。撃ち方や
め!!」
そう言うと、ベルゼバブはにわかに微笑した。何か思いついた様子であったが、鋭い眼光
を放つと
「この裏切り者をおろしてやりなさい。この"恥知らず"の裏切り者にもっとも効果的な
罰を与えてあげましょう。この者を連れてわたくしが、霊気さんに直接ご挨拶に向かいま
しょう。」
と一気に言い放った。すると、それまで流璃子に対して盛りたっていた10万人のデビルサ
イダーたちは一瞬で凍り付いてしまった。ベルゼバブがこういう表情を見せるときは、決
まって大掛かりな仕掛けを施すときである。命令に背こうものなら一瞬にして命を絶たれ
てしまう。実際、ベルゼバブの命令に反応が遅れて、これまでにも多くのデビルサイダー
たちがベルゼバブの逆鱗に触れて命を落としてきた。そんなベルゼバブの気性を知るが故
に、10万のデビルサイダー達は慌てふためくように流璃子に対する囲みを解き、その中の
数人のデビルサイダーがガタガタ体を震わせながら慌てて天井から吊るされていた流璃子
をおろし、そそくさと2人のデビルサイダーが流璃子の両脇に入って抱えながらベルゼバ
ブのもとへ走っていった。

ベルゼバブのもとに届けられた流璃子は、それまでの拷問で流した血と、さっきまでの浴
びせ続けられていた精子とが入り混じって体にへばりつき、見るも無残な姿をさらしてい
た。"ハアハア"と呼吸をするので精一杯の流璃子は、虚ろに目を開きながらベルゼバブの
ほうに目を向けていた。ベルゼバブはそんな流璃子を両手で抱え、霊気たちが映し出され
ているスクリーンの前に立つと眼光一閃、呪文を唱えだした。するとどこからともなく蠅
たちが、霊気いる魔法陣近くの上空で大量に終結していく姿がスクリーンに映し出されて
いく。
ニヤリとベルゼバブは笑うと、ウトックの攻撃をはねのけて魔法陣にたどりついた霊気た
ちに高らかに宣戦布告をした。
「ホホホホ・・・ようこそゴッドサイダーの諸くん わたしがこの魔法陣を守るフライマ
スターベルゼバブです この流璃子と一緒に首を長くしてまっていましたよ」
「る・・・流璃子・・・」
見るも無残な流璃子の姿に絶句する霊気。
そのあと、勝者の笑みを浮かべながらお決まりの挑戦状をたたきつけたベルゼバブは、霊
気たちのとの交信を断ち、抱えている流璃子を地下牢に移すように指示をした。慌ててベ
ルゼバブの近習たちが流璃子を抱えて地下牢へと向かっていった・・・・。


そうだ、俺の運命ってやつは一方的に俺のほうに押しかけてきやがったんだ。あの「水魔
ブロケル」と呼ばれた流璃子と言う女とともに。


「おーい、裏切り者がここに移されるそうだ、空いている牢は無いか?」
「俺の見張っている牢なら一つ空いている。」
「よし、お前に任せる。しっかり見張っていてくれよ、こいつはとんでもない裏切り者だ
が、すっげぇべっぴんさんだからよ、くれぐれも逃げられたりするんじゃねえぞ」
そう言うと奥からベルゼバブの近習に両脇を抱えられて流璃子が運ばれてきた。その姿を
見て、俺は思わず声が漏れた。
「ん、こ、、、こいつは・・・」
「なんだ、お前知っている奴なのか?」
「いや、知らない」
「まあいい、しつこいようだがこいつはとんでもない裏切り者だ。べっぴんさんだからっ
てホレ込んで、ドジこくんじゃねぇぞ!」

運命の雷鳴が、今、俺の心の中で鳴り響く。。。。。。


次回予告
ベルゼバブの拷問の手を逃れた流璃子を待っていたのは、また地獄だった。拷問の後に住
み着いた欲望と青い衝動。静寂と雷鳴、頽廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてブ
チまけた、ここはヘル・ストリート地下3000mの牢獄。
  次回「瓦解」。来週も流璃子と地獄に付き合ってもらう。

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