「ADVENT」

題名:#1 黒き館の三姉妹

第1話「黒き館の三姉妹」

大都会の片隅。人気のない深夜の公園。眠る木々の中で三人の娘が「闇」と戦って
いる。
舞のような一糸乱れぬ華麗なユニゾン。常識を超越したスピードで繰り出される技
の数々。しかし。
「何てこと!"トリプラー"もJSAも全然効かないなんて!」
薙刀を持った娘が悲鳴を上げる。
「姉様、あいつの強さは桁外れだわ!こんな相手がいるなんて......」
つがえていた弓を降ろして、もう一人の娘が呻く。
長姉らしい娘は双剣を構えたまま叱咤する。
「まだよ。まだ負けたわけじゃないわ!」
相対する「闇」。漆黒の衣装を纏い、悠然と立っている女。
「ほっほっほっほ。まだ私を楽しませてくれるのですか?可愛いお嬢さん方。夜遊
びは危ないですよ。」
「くっ......。余裕を見せていられるのも今のうちだけよ!"デルタエンド"、行くわ
よ二人とも!」
「はい、姉様!」
残像を残し、三人の娘が高く跳躍する。
「ほっほっほ。せっかくですから、お手並み拝見しましょうか。」
身じろぎもせず、妖しく微笑む女。

その日、主は上機嫌で黒い館に帰還した。美しい連れを伴って。
「ほっほっほっほ。地獄帝国にようこそ。さあ、見えてきましたよ。あれが私の館
です。しばらくは館で働きなさい。そのうちこの世界にも慣れていくでしょう。」
「はい......。」
巨大な門をくぐり、二人は広大な前庭を通り、玄関に立つ。音もなく厚く大きな扉
が音もなく開く。
「お帰りなさいませ、ご主人様。」
ホールにずらりと並び、一斉に頭を下げる使用人達。執事。料理人。庭番。御者。
そして三人のおどろくほど良く似たメイド達。
「ほっほっほ。ただいま帰りましたよ。変わりはありませんね、ゾヅーカさん?」
「はい、何事も。ご主人様。」
大きな執事が、巨躯を折って恭しく答える。
「ほっほっほ、そうですか......皆そろっていますね。丁度いいからご紹介しましょ
う。」
主は連れの少女に手招きする。
「皆の者、聞きなさい。こちらはブロケルさんです。今日からしばらくこの館でメ
イドの見習いをしてもらいます。」
執事の目が一瞬妖しく光った気がした。
「ご主人様......それでは、この者も......?」
「ほっほっほ、残念ですがゾヅーカさん。ブロケルさんは訳ありなのです。躾は私
がしますからね。」
ギリッ......
歯を食いしばるような音が微かに聞こえたような気がした。
「......かしこまりました、ご主人様。」
何事もなかったように、執事が恭しく頭を下げる。
「ほっほっほ......。ブロケルさんをお部屋に案内してあげてください。ブロケルさ
ん、着替えたら私の部屋にいらっしゃいな。」
「はい......。」

巨体の執事に連れられて、流璃子は小さな部屋に入る。
「...ブロケルと言ったな。ここがお前の部屋だ。その箪笥に制服が入っている。着
替えるがいい。」
「はい......。」
(ブロケル......ああ......これからはその名なのね......)
憂い顔でうつむく流璃子。気を取り直してワンピースの背中のジッパーを下ろそう
として、じっと見つめている執事に気付く。
「あの......着替えますから......。」
「気にするな。新参者が凶器など隠し持っていないか、確認するのも俺の務めだ。」
「で、でも......。」
「......早く着替えろ。ご主人様がお待ちだ。」
顔の向きさえ変えようとしない執事に、やむを得ず、背中を向けてワンピースを脱
ぐ流璃子。絡みつくような視線が淫らに全身を這うような気がした。そして、それ
は気のせいではなかった。
「ぐ、ぐへへへっ、ブロケル...綺麗な体だな......。」
部屋の片隅で小さく身をすくめて着替える流璃子に、いつのまにか執事が近づき、
首を伸ばして、形良く盛り上がった胸のふくらみを覗き見る。
「ぐへへへへっ......いいおっぱいだなあっ、たまんねえぜっ。」
地であるらしい野卑さを丸出しにした執事は、流璃子の華奢な背中から巨大な手を
回し、純白のブラジャーごと両胸を鷲づかみにする。
「きゃっ!...な、なにをなさるんです!離してください!!」
声を張り上げ、執事の腕をもぎ離そうとする流璃子。が、びくともしない。執事の
芋虫のような指がいやらしい蠢きを開始する。
「ぐへへへっ、な、なんて柔らかさだ。我慢できねえっ、挨拶代わりにやらせろや
っ!」
執事の右手が下半身に伸びていく。必死に逃れようとしゃがみこむ流璃子。うずく
まる流璃子に、執事の巨体が圧し掛かる。
執事の左手がブラジャーの中に潜り込み始める。右手の掌は、パンティの上から誰
も触れたことのない神秘の部分にぴったりとあてがわれる。嫌悪の悲鳴を上げる流
璃子。

「ゾヅーカ様......ご主人様の言いつけに背かれるのですか?」
背後から突然の冷たい女の声。
ぎくりと硬直する執事。慌てて流璃子から離れる。
開け放たれたままの部屋の扉の前に、一人のメイドが立っている。氷のように冷や
やかな表情を飾る漆黒の髪は、艶やかに、まっすぐに、背中まで伸びている。
「お、お前か......誤解するな。着替え方を教えてやっていたまでだっ。」
「そうですか...では後は私が。ゾヅーカ様、ご主人様がお呼びです...早く行かれた
ほうがよろしいのでは...。」
「わ、わかっておるわっ!」
憤然とした表情で足音も荒く部屋を出て行く執事。直前、メイドをねめつけ、吠え
猛る。
「今日の当番は誰だっ!?」
「......イツキルです......。」
「......そうか。お前じゃないのは残念だが...身代わりに思いっきり楽しんでやる
っ!!」
にやり、と下卑た笑いを残して執事は去っていった。

メイドは一瞬目を閉じ、沈痛な表情でうつむいたが、やがて目を開けると冷たく流
璃子を一瞥する。
「......大丈夫?」
「は、はい......。あの...ありがとうございました。」
「とりあえず着替えなさい。手伝うわ。」
半袖の濃紺のワンピース。白いエプロンを着ける。
メイドは流璃子を鏡の前に連れて行き、背後からヘッドドレスを整えてやる。
「ベルゼバブが直々に連れて来るなんて......。あなた、何者なの?」
メイドが流璃子の耳に囁く。
「!」
耳にかかるメイドの熱い吐息。流璃子の背中が一瞬仰け反る。
「......ブロケルといいます。新参者のデビルサイダーです......。」
「嘘。あなたはデビルサイダーなんかじゃないわ......。」
冷ややかに囁きながら、メイドのしなやかな指先は流璃子の首に黒絹のチョーカー
を結んでいく。
「これでいいわ......。さあ、ベルゼバブの所に行きましょう。」
素早く背中を向け、廊下に向かうメイド。自分と全く同じ衣装の後姿を見つめなが
ら、流璃子は首をかしげる。
(......あの人...首輪をしているの......?)

「ほっほっほ。キリエルさん、ご苦労様でしたね。ブロケルさん、よく似合います
よ。まあ仕事は難しくありませんから、ゆっくりキリエルさんに教えて貰って下さ
い。」
流璃子達は上機嫌のベルゼバブに愛想よく迎えられた。
「はい......。ベルゼバブ様。」
「ほっほっほっ、いけませんねえ。ブロケルさん、この館では私を『ご主人様』と
お呼びなさい。キリエルさん、大事なことはきちんと教えてあげなければいけませ
んねえ。」
ベルゼバブの一瞥を受け、キリエルと呼ばれたメイドが震える。
「......も、申し訳ありません...ご主人様...ど、どうかお許しを...。」
「...まあいいでしょう。今日は気分がいいですからね。特別に許してあげますよ。
ほっほっほっほっほ。」
「...あ、ありがとうございます、ご主人様......」
「ほっほっほっ、いいんですよ。ところでブロケルさん、地獄のことを早速いろい
ろと教えて差し上げるつもりでしたが、急用がありましてね。3日もすれば戻りま
すから、それまでいい子にしていてくださいねえ。」
「はい......。」
「ほっほっほっ...ああ、忘れていました。これをプレゼントしますよ。」
ベルゼバブはどこからともなくそれを取り出して、流璃子に差し出した。黒い首輪。
「こ、これは......?」
「ほっほっほ。この館のメイドさんのコスチュームなのですよ......キリエルさん、
着けておあげなさいな。」
「...はい、ご主人様......。」
メイドが流璃子の正面に立つ。白く綺麗な指が、チョーカーを巻いた流璃子の細い
首に首輪を結ぶ。流璃子は、キリエルの首にも同じ首輪が黒く輝いているのをはっ
きりと見た。
「ほっほっほっほ、お似合いです......さ、もう下がっていいですよ。」
なかば追い立てられるようにベルゼバブの居間を退く流璃子。再び長い廊下を歩き
ながら、メイドがぽつりと呟く。
「きっとフォラスの所に行くのね...。それにしても、あんなに機嫌がいいベルゼバ
ブは初めてだわ......。」
立ち止まり、流璃子を見つめる。
「......あなたはベルゼバブにとって、よほど大事な人なのね...。」
突き刺すような視線にたじろぎ、ふっと目を逸らす流璃子。その目が突如驚愕の光
景を捉え、大きく見開かれる。
窓越しに見える建物に囲まれた中庭。花壇や噴水に美しく飾られた庭に、二人が居
た。執事と、キリエルそっくりなメイド。メイドは、犬のように四つんばいになり、
腰を高々と上げている。首につなげられた太い鎖は、執事に握られていた。
「...あ、あれは......!!」
「......イツキル......私の妹よ。お願い......見ないであげて......」
キリエルは背を向け、急ぎ足に廊下を去っていく。流璃子は我に返り、慌てて後を
追う。

「天より来たれ、銀の三角!」
闇の女を囲む三人の娘が形作る三角形が銀色に輝く。
「ほう......?」
回転を始め、三角錐を作る銀の三角。その中心部に捉えられた女が興味深そうに呟
く。
三人は位置を変え、先ほどとは逆の三角形を形成する。
「金の三角、海より来たれっ!」
「聖なる六芒星よ、我らが敵を封じたまえ!」
金色の三角形もまた三角錐となり、銀色の三角錐とは逆に回り始める。
「デプスゾーン完成っ!姉様っ!」
「これで終わりよ!」
三人は拳を突き出し、突き立てた親指を下に向け、声を揃える。
「ショック!」
二つの三角錐が静止し、重なる。内部で大爆発が起きる。バリアー内に猛り狂うエ
ネルギーの奔流が白熱する。
「やったわ......。」
だが、その時。
「ほほほほほほほほっ」
聞き覚えのある高笑いが響く。三角錐に無数の亀裂が走り、粉々に吹き飛ぶ。姉妹
達も悲鳴とともに吹き倒される。
何事もなかったかのように闇を纏った女が現れる。
「ほっほっほっほ......なかなか面白い手品でした......。」
長姉らしい娘だけが、よろめきながらも立ち上がる。
「そんな......無傷なんて......。」
「ほっほっほっほ...自信がおありでしたか。それは悪いことをしましたねえ。」
漆黒の女がゆっくり近づいていく。
「悪い技ではありませんでしたよ。一瞬とはいえ、この私の動きを止めましたから
ねえ。ゴッドサイダー風情にしてはよくやりました。」
さらに近づく。
娘の長い黒髪が逆立つ。右腕が輝き始める。裂帛の気合とともに放つ俊速の抜き手。
しかし、漆黒の女は壊れ物でも扱うように、静かに、やんわりと受け止める。
「......ご褒美に、飼ってあげましょう。ほっほっほっほっほっほ......」
響き渡る哄笑の中、絶望に闘志を失った娘ががっくりと膝をつく。

御者が操る不気味な怪物が引く豪奢な車に乗って、館の主が上機嫌で出て行く。完
全に気配が去るのを確認して、見送っていた執事が大きく伸びをする。
「ふわああああーっ。やっと行ったか!この姿は肩がこっていけねえ。」
巨体を覆う剛毛。長大な醜い鼻。二本足のマンモスのような奇怪な姿を顕わす執事。
気付けば、庭番も料理人も怪物のような姿に変じている。
「なんだ、ブロケル?お前は本性を出さないのかあ?」
ヒキガエルのような庭番デビルサイダーが覗き込む。
「ぎょえっへっへっへ......知っているぜ、俺はよお......」
アンコウに手足がついたような料理人のデビルサイダーが得意そうに胸を張る。
「なんだよ、もったいぶらないで言えよ。」
マンモスが小突くと、アンコウは4,5メートルも吹っ飛び、額から伸びた疑似餌
を不満そうに振る。
「ひでえなあ、ゾヅーカさん......まあいいや。この前フォラスの奴が来ただろう?
あの時こっそり聞いちまったんだが......このブロケルってのは鬼哭一族の出らし
いぜ。」
流璃子が体が硬直する。
(!......こんなに早く知られてしまうなんて......)
「ぐへへへっ、相変わらずの出歯亀野郎だ。で、その鬼哭一族ってのは何なんだ
よ?」
「なんだい、ゾヅーカさんは知らないのかい?」
呆れ顔のヒキガエルが会話に加わる。
「天使と悪魔と、両方の血を引く一族なんだってよ。戦闘力はスゲエらしいけど、
呪われし一族だって両方から嫌われててさ。どっかに隠れて細々と暮らしているら
しいぜ。」
「ふーん。」
ヒキガエルの得意面から顔を背けて、マンモスが流璃子を見つめる。
「強そうにゃあ見えねえがなあ......じゃあ、それが本性ってことか、ブロケル?」
「......はい......。」
「くそっ、勿体ねえ。ベルゼバブの命令さえなけりゃあ......」
「......確かに私は鬼哭一族ですが...。私は選択したのです......デビルサイダーにな
ることを。」
三匹の怪物が哄笑する。
「ぐははははははっ!デビルサイダーだと......お前がデビルサイダー......笑わせ
てくれるぜっ!」
「ゾヅーカさん。きっとこいつはベルゼバブに騙されて、何も知らないまま連れて
こられたんっすよ。」
「そんなところだろうぜ。......まあいい、ベルゼバブはいなくなっちまったんだ。
せいぜい羽を伸ばすとしようぜ。」
顔一杯に淫欲を顕わし、鈍くぎらつく目つきで、メイドに手招きするゾヅーカ。
「イツキルゥ......さあ、お仕置きの再開だ。夜までたっぷりと可愛がってやるから
なあ。来いっ!。」
「......はい......。」
「いいよなあ、ゾヅーカさんは。俺たちは命令で手出しできねえってのによお。」
「そうだよ、俺も思いっきり苛めてみてえなあ。」
「ぐへへへへ......まあベルゼバブの野郎の言いつけじゃあ仕方ねえ。今日はお前た
ちにも見物させてやるからよお。」
ゾヅーカはイツキルを抱え込むようにして奥に消えていく。ヒキガエルとアンコウ
も、ぶつぶつこぼしながらも奥に向かう。流璃子はメイド二人と取り残される。
「......鬼哭一族...本当なの?」
キリエルが尋ねた。
「ええ......あなた方は?デビルサイダーではないの?」
「違うわ。そう...鬼哭一族...」
キリエルはそっくりなもう一人のメイドとうなづき合う。
「......話があるわ。夜になったらあなたの部屋に行って良くて?」

夜。流璃子の部屋。
館の奥からは、途絶えることなく、嫋々と女の悲鳴が聞こえてくる。キリエルとタ
キツルは青白い顔であえて無視し、流璃子に語りだした。
「ブロケル。本当の名前を教えて。」
「......流璃子です。」
「私の名は聖子。こちらは下の妹の奈保子。さっきゾヅーカに連れて行かれたのが
上の妹の順子よ。見ての通り、私達は三つ子なの。宗像三女神の化身たるゴッドサ
イダー......」
「ゴ、ゴッドサイダー!?どうしてこんな所に...?」
奈保子が答える。
「私達は三人でデビルサイダー狩りをしていたの......あの日まで。」
聖子が続ける。
「そう...ベルゼバブに遭遇するまでは。...全然歯が立たなかったわ。」
奈保子は遠い目で囁くように話す。
「ベルゼバブは、私達を奴隷にしたの......この首輪で、天界からの全ての神霊力を
遮断された私達は、この地獄で最も無力な存在になってしまったわ。」
聖子が流璃子を見つめる。
「ベルゼバブがあなたにも首輪を差し出したので、デビルサイダーではないことが
判ったわ......でも鬼哭一族とは......」
廊下に響く女の悲鳴が一段と高くなる。それは喘ぎ声も含んでいるようだった。
「ゾヅーカは......私達を代わる代わる凌辱しているの。毎日毎日。首輪のせいで、
死ぬことも狂うことも許されない私達は、いずれ身も心もゾヅーカの奴隷に堕ちる
わ......それがベルゼバブの罰なの。」
「ああッ...ご主人様ッ!......ご主人様ああッ!!」
「ぐおおおおおおっ!」
魂を引き裂くような絶叫と巨象の咆哮が轟くと、世界はしんと静まる。針一本落ち
る音も聞こえそうな静寂。
「......終わったようね......。」
聖子は奈保子を促し、立ち上がる。
「ちょっと待って......順子を連れてくるわ。」

「私のことは好きにして。でも、妹たちは助けて。」
女の前で跪き、懇願する美少女。
「ほっほっほっほっほ。面白いことを言いますねえ。あなたはデビルサイダーを見
逃したことがおありですか?」
言葉を失い、唇を噛み締める聖子。
「ほっほっほ......光と闇の闘いに妥協はありませんよ。勝つか負けるか、二つに一
つ。そして敗者は全てを失うのです。」
黒き館。玉座のベルゼバブが哄笑する。
「だったら......殺しなさい!今すぐに!」
「ほほほほほ......いずれ殺してさしあげますが、その前に...この私に戦いを挑んだ
罪を償ってもらわなければなりません。あなた方はからは誇りも、純潔も、愛も、
希望も、羞恥も、何もかも全て奪ってさしあげます。生き人形と化すまで、ここで
奴隷として暮らすのです。腕のいい調教師も用意しましたからねえ...どのくらい耐
えられるか、楽しみにしていますよ。せいぜい助け合って長生きしてくださいな...
ほっほっほっほっほ。」

メイド服をずたずたに引き裂かれ、全身血まみれになった順子が、息も絶え絶えに
ベッドに横たえられた。
「......今日は特に酷いわ。体中に傷が......」
痛ましそうに妹を見つめる聖子。
「......私が邪魔をしたのが、よほど腹立たしかったんでしょうね......」
「......ごめんなさい......私のせいで......」
瞳に涙を一杯に浮かべて、水に浸したハンカチを順子の額に乗せる流璃子。
「......ゾヅーカは...、いいえ、すべてのデビルサイダーは、私達を凌辱したがって
いるわ...。料理人も庭番も、ベルゼバブの許しがあればすぐにも襲い掛かってくる
でしょうね。」
奈保子の言葉に聖子が続ける。
「昼間、中庭で見たでしょう?私達は、交代でゾヅーカから一日中あらゆる辱めを
受けるの。それをベルゼバブは嘲笑いながら見下しているの...。」
ふっと自嘲の笑みを漏らす聖子。
「地獄の日々......ここは地獄だから当然かしらね。」
自嘲の乾いた笑い。かける言葉もなく痛ましく見つめる流璃子。

「姉さま......奈保子......」
ベッドから上半身を起こした順子の声に二人が慌てて振り向く。
「順子!?」
「順子姉様、大丈夫なの?」
「ええ......この部屋に入って急に具合が良くなってきたわ。もう大丈夫...」
「どうして?さっきまでのあんなに酷い傷が、こんなに良くなっている!」
驚きと喜びがないまぜになって奈保子が泣き笑いの表情になる。
「流璃子......流璃子の力ね......」
「わ、私の...?」
「ええ......間違いないわ......流璃子が傷を癒すのよ......」
「で、でも!私達と同じ首輪をしているのよ。力は全て封じられているはずじゃ...」
「天界の神霊力じゃない......流璃子自身が内に秘めた力なんだわ。」
聖子が流璃子の瞳を覗き込む。
「流璃子。鬼哭一族は戦闘に長けた一族と聞いていましたが...中でもあなたは貴重
な能力を持っているようね。癒しの力...あなたが傍にいれば、戦士達は何も恐れず
戦うことができる。あなたを手元に置くことは、ベルゼバブにとってひどく重要な
ことなんだわ。」
すっかり元気になった順子がベッドから起き上がり、流璃子の背後からそっと囁く。
「流璃子。あなたはここに居てはいけない。ベルゼバブの手から逃れなくては。」
「で、でも...私はデビルサイダーになる覚悟をしました...それに、この首輪があっ
ては...」
奈保子が横から寄り添うように近づき、内緒話をするかのように流璃子の耳に唇を
近づける。
「デビルサイダーは人間に化けられるけど、本性はあのとおりよ。私達やあなたと
は全然違う存在なの。あなたはベルゼバブに騙されているのよ。」
聖子が正面から流璃子を見つめながら、キスの距離まで接近する。
「首輪は天界の神霊力を遮断してしまうけど...あなた自身の内なる力までは封じ
られないわ。その力を開放すれば、必ず首輪を外すことができるはず。」
「そのためには力を溜めて、一気に開放する術を修得しなくては駄目。」
背後の順子。
「力を溜めるためには、耐えて、耐え抜かなければ。」
耳元の奈保子。
「訓練が必要よ、流璃子。私達が手伝ってあげる。」
目前の聖子が甘く囁き、流璃子の唇を奪う。驚愕に大きく見開かれる流璃子の瞳。

「ぐへへへへっ...おらおら、イツキルっ、もっとしっかりしゃぶらねえかっ」
「くうっ......」
順子が巨根を苦しげに頬張る。ゾヅーカは艶やかな黒髪を鷲づかみにし、乱暴に順
子の頭を上下させる。
喉の奥まで突かれた順子が苦しげにえづくが、一切お構いなく今度は両手で順子の
頭を抱えて一層激しくスライドさせる。
「ぐへへへっ......いいぜっ!どうれ......」
胡坐をかいたゾヅーカは、ようやく順子の唇を解放すると、向きを変え、背後から
軽々と抱き上げる。
「昨日は姉ちゃんの処女をいただいた......良かったぜ。お前は後ろの処女から捧げ
てみるか?んんーっ?ぐへへへへへっ......」
「い、嫌っ...許してください......」
恐怖に顔をこわばらせた順子の哀願を、平然と聞き流し、ゾヅーカは粘液まみれに
そそり立つ巨根の照準を、順子の秘めやかなすぼまりに合わせていく。ぴたりと突
きつける。ひっ、と息を呑む順子
「ぐへへへへっ、さあ、いくぜっ!」
力任せに一気に突き入れる。
「あぐううッ!!」
消え入るような悲鳴を残し、順子が失神する。力が抜けぐったりとした体を抱き締
めながら、泡を吹き、ゾヅーカは一心不乱に腰を揺すりたてる。歯をむき出し、順
子の裸体のところかまわず噛み付いていく。

「ぐっ...くふっ...んんっ...」
獣の姿勢でゾヅーカを迎え入れさせられた奈保子。激しい揺さぶりに耐えて歯を食
いしばる。
太く短いゾヅーカの指が、豊かな乳房を揉みしだく。
「ぐへへへへっ......いいぜっ、タキツルっ......もっと尻を振りなっ!」
有頂天のゾヅーカが、突然本性を表す。巨体がさらに二回り以上も膨らむ。突如膨
れ上がった一物に、膣を一杯に塞がれ、奈保子の背中が大きく仰け反る。
「あああうッ...!はあんんんんッ...!!」
ゾヅーカの鼻が触手と化す。粘液をしたたらせながらうねうねと伸び、背後から奈
保子の唇を探る。そして圧倒的な力で食いしばる奈保子の歯をこじ開け、くねりな
がら口腔内に侵入していく。
上下の唇を、同時に、奥まで奪われる奈保子。何か大切なものを失った感覚。白く
輝くような体が、激しく痙攣する。
「うおっ?おおおおおうっ!」
そのヴァイブレーションに、不覚にもゾヅーカが達する。巨根から、熱く、夥しく、
粘り気の強い精液が迸り、奈保子の胎内深くに注ぎ込まれていく。同時に、口腔を
犯す触手の鼻からも、同様のおぞましい液体が喉奥に注がれる。喉を鳴らして飲み
込むことを強要される。声も出ない奈保子の目から、大粒の涙が溢れていく。

「ど、どうだっ、キリエルっ、泣いて許しを請え!ご主人様になあっ!」
全裸で不気味な木馬に乗せられる聖子。両足には無残に重石が括り付けられている。
激しく鞭打つゾヅーカ。
「ぐぐっ...んんっ...あぐっ...」
股間が引き裂かれるような痛み。肌を切り裂く鞭。背を仰け反らせ、苦痛に顔を歪
めながら、聖子の顔は矜持を失わない。
「くそっ...!妹たちはとっくに屈服したってのに。なんでこの女だけは堕ちねえ...
...。次は熱い熱い蝋燭責めだ。その次は針を刺しての電気責めだ。最後は、ぶっ太
い浣腸責めと行くぜ。どこまで耐えられるかな?ぐへへへへっ」
身の毛もよだつフルコースメニューを聞かされ、意識が遠のきそうになる聖子。必
死に唇を噛み締め、正気を保つ。
(......私までが絶望に心を蝕まれたら、誰が妹たちを護るの......。まだっ、まだよ。
ベルゼバブに一矢報いるその日まで......)
怒涛のように押し寄せるゾヅーカの責め。それらを次々に甘受しながら、聖子は歯
を食いしばって耐える続ける......。

「な、何を......?」
流璃子はあっという間にベッドに押し倒され、三姉妹から同時に愛撫を受ける。聖
子は流璃子の両手を頭の上で一つに束ねて左手で押さえ込む。その唇は流璃子の唇
を塞ぎ、口腔深くに侵入する聖子の舌は、流璃子の中を縦横無尽に動いて絡め取る
べき舌先を求める。必死に逃げ回る流璃子。
その隙に、順子が白いエプロンを外し、メイドの制服の胸をはだける。露わになっ
た純白のブラジャー越しに、美しい膨らみを両手でゆっくりと揉み始める。流璃子
の胸が大きく上下する。
奈保子は流璃子の両脚を抱きかかえ、スカートをたくし上げる。白い脚を包む白い
ストッキング。それを留めるガーターベルトだけが鮮やかに黒い。奈保子の手が太
腿を這い回り始める。

流璃子は必死にもがき、逃れようとするが、ゾヅーカに仕込まれ続けた三人の技巧
は、たちまち流璃子の抵抗を封じてしまう。
順子の熱く柔らかな舌がブラジャーの中に侵入し、乳嘴に触れる。
奈保子の指がパンティラインに到達し、両脚の狭間に忍び込む。
同時攻撃にうろたえ、おろそかになるガードをかいくぐり、遂に聖子の舌が流璃子
の舌先を捕らえる。絡みつき、吸い込む。
流璃子は上気した頬を必死に振って逃れようとする。しかし流璃子の可憐な舌はあ
えなく聖子の口腔内に連れ去られてしまう。二人の唾液が混じり合う。美少女達は、
いつか呼吸を合わせ、交互に吸い合い、流し込み合っている。

流璃子のたわわな胸はすっかりはだけられ、美しい桃色の乳嘴が二つとも外気に曝
される。うっとりと見つめる順子は、形の良い唇でその一つをついばむ。吸い取る。
舌で転がす。歯で微かに噛む。唇と舌と歯とが送り込む絶え間なき刺激に、びくっ
と流璃子の体が弾ける。順子はその反応に妖しい微笑を浮かべると、もう一方の乳
嘴にも細い指先でいたずらを始める。

奈保子の右手の指先は暖かな谷間に深く深く入り込んでいた。微妙で淫靡な振動が
伝えられる。よじりあわされる流璃子の双脚。熱と湿り気を帯び始めるその部分を
震わる右手。抵抗が弱まっていく。いたずらっぽく笑った奈保子の左手は、パンテ
ィの中への侵入を企てる。

長い長いキスの後。ようやく聖子が唇を離す。透明な唾液が二人の唇に糸を引く。
自由になった唇で酸素を貪る流璃子。既にその喉は喘ぎ声しか出せないようになっ
ている。
「流璃子、可愛いわ。もっともっと良くしてあげる。でもいっては駄目。耐えるの
よ、精一杯。」
うなじや耳に口付け、舌と唇と歯の責めを再開する聖子に、流璃子の喘ぎが一層高
まっていく。

顔、胸、股間。流璃子の三箇所の急所を、同時に、交代しながら責め続ける三姉妹。
既に流璃子の制服は完全に脱がされ、白いヘッドドレスとストッキング、そして黒
いガーターベルトだけを許された淫靡な姿に変えられている。
今、奈保子は流璃子の乳嘴に吸い付き、聖子は流璃子の秘密の花園に口付けている。
「ああッ!...も、もう許してッ!...私、私、もうッ...!」
順子が流璃子の火照った耳朶に唇を押し当てる。軽く噛みながら、熱く囁く。
「流璃子は本当に敏感ね。だけど、いっては駄目。力を溜める訓練をしなきゃ、ね。」
濡れた舌が外耳道に深く侵入し、蠢く。
「あああッ...駄目ッ、耳は...耳は弱いのッ...!」
大きく首を仰け反らせる流璃子。全身が桃色に染まり、汗が光る。
奈保子と聖子の舌の動きも一段と激しくなる。完全にシンクロした三位一体の攻撃
に、流璃子の全身は痺れきる。
「はッ...!あッ...!も、もうッ...!嫌ッ...!駄目よッ...!」
激しく首を振って抵抗する流璃子を、耐え難いほどの絶頂が貫く。
「はあああッ...!いくッ...!いきますッ...!ごめんなさいッ...!ああああああ
ッ!!」
恍惚感に全身を震わせた流璃子は腰を浮かし、背を弓なりにして、ベッドの上にア
ーチを描く。

どれほど時間が過ぎただろう。
流璃子の呼吸は浅く、速く、断続的な喘ぎ声を響かせている。
「はッ...あッ...あッ...はッ...んッ...んあッ...はあッ...」
「まあ。またいく気なの?流璃子。」
「あきれた。何回いけば気が済むのかしら?」
「少しは我慢なさいよ。本当に淫乱ねえ、もう。」
体の各所から聞こえてくる三人の揶揄と嘲弄。一方的に浴びせられる恥辱の言葉さ
えもが、流璃子の嗜虐心に火をつけ、昂ぶらせていく。
「はッ...ああッ...だって、だってッ...!こ、こんなにされたらッ...だ、誰だって
...!」
「感じすぎよ、流璃子は。」
「そうよ、本当に処女なのかしら?」
「私達はこんなに乱れなかったわよ。」
勝手なことを言う口が、手が、指が、舌が、流璃子を一方的に責め立てていく。
「はあああッ...!許してッ、お姉様ッ...!ああッ...ま、またいっちゃうッ...!」
十度目の絶頂。腰を高く大きく突き出し、全身を痙攣させた流璃子の意識は、闇の
中に深く深く沈んでいく。

朝。流璃子は三姉妹に寄り添われてロビーに姿を現し、執事達を待つ。
流璃子の両手は順子と奈保子に握られ、肩は聖子に抱かれている。
「可愛かったわよ、流璃子。」
聖子に左の耳元で囁かれ、甦る昨夜の痴態の数々。首まで真っ赤に染まる流璃子。
「どうして...どうして、あんなことを......?」
「あなたの内なる力は癒しの力...。それはとても貴重な力だけど、そのままでは破
壊エネルギーには転換できないの。」
順子が右耳に囁く。
「首輪を破壊するためには、触媒として外部から破壊的エネルギーを得る必要があ
るわ。」
奈保子が流璃子のうなじに口付け、肌を震わせて囁く。
「そう...きっとゾヅーカがその役目を果たしてくれる......でも、それはもっと先で
なくては......。」
聖子が囁いた時、館の奥から騒がしい物音が接近してくる。

ゾヅーカが二本足のマンモスのような本性のままで現れる。
「かーっ!ベルゼバブのいねえっ朝は爽快そのものだぜっ」
アンコウが姿を見せる。
「ゾヅーカさん。昨日はお楽しみでしたね。」
ヒキガエルもやって来る。
「むせび泣く声が廊下中に響き渡ってましたぜ。こっちは蛇の生殺しでさあ。」
「ぐへへへへっ、妬くな妬くなっ。おう、メイド共、来やがったか。」
四人のメイドが姿を見せると、ゾヅーカの目が鈍い光を放った。
「いいかっ!俺がこの館のご主人様だからな。わかったな!」
四人を嘗め回していた瞳が、流璃子に釘付けになる。
「おおーっ?昨日よりずいぶん色気が出たような...?ぐへへへっ、堪んねえなあ、
ブロケルっ!」
ゾヅーカがいきなり流璃子を抱き締める。抱え上げて、首筋に口付ける。長く太い
鼻が、襟元から内部に侵入しようとする。
「い、嫌っ!...は、離してくださいっ!」
おぞましさに鳥肌を立てる流璃子。
ぐへへへへっと下卑た笑が止まらないゾヅーカの目が狂気を帯び始める。必死にも
がく流璃子の体を軽々と抱えたまま、奥に消えようとする。
「ゾヅーカ様。」
三人のメイドが立ちふさがる。
「ご主人様は、ブロケルには手出し無用と申されました。なにとぞお留まりくださ
いませ。」
「そ、そうですぜ、ゾヅーカさん。ばれたらえらい事ですぜっ。」
アンコウやヒキガエルも必死に引き止める。
ようやくゾヅーカの目に正気の色が戻る。名残惜しそうに流璃子を下ろす。
「ぐうーっ、くそ面白くもねえっ。何でこいつに手を出しちゃいけねえんだっ!」
憤怒に顔を朱に染め、三姉妹を睨み付ける。
「どいつだっ、今日の当番はっ!」
「はっ、はい......私、タキツルです......」
「ふん、末娘か...。覚悟しとけ、今日は朝から夜までたっぷりと躾けてやるからな
あっ!!」
青ざめる奈保子。一瞬よろめく体を聖子と順子が支える。
「来いっ!」
ゾヅーカは強引に奈保子の手を取り、引き摺るように連れ去っていった。

その日は、館のどこに居ても、奈保子の悲鳴と喘ぎが聞こえない時はなかった。夜、
聖子と順子に抱きかかえられて流璃子の部屋に運ばれた血まみれの奈保子は、昨夜
の順子以上に痛めつけられ、完全に意識を失っていた。
「奈保子さんっ...!ひどい、ひどすぎるっ...!」
終日ほとんど拷問のようなゾヅーカの責めを受け続けた無残な姿に、流璃子が嗚咽
する。
「流璃子、お願い...。なるべく奈保子の傍にいてやって。」
聖子に頼まれるまでもなく、流璃子は奈保子の手を握り、髪を撫でる続ける。
「あっ...!見て姉様。奈保子が!」
順子が指差す。見る見る奈保子の傷はふさがり始め、頬に生気が戻ってくる。
「凄い...本当に凄いわ、流璃子の力は。」
十分後。意識を取り戻した奈保子が立ち上がる。
「今日はきつかったわ...。本当に死ぬかと思ったけど、嘘みたい。」
流璃子を見つめる奈保子の瞳が潤む。
「ありがとう、流璃子。」
「そんな...お礼なんて言わないで。奈保子さんは私をかばって酷い目にあったのに
......。」
うつむく流璃子に三人が寄り添う。
「さあ、奈保子が元気になったところで今日も始めましょうか。」
「え、ええっ?ま、また...?!」
「もちろん。遊びじゃないのよ、流璃子。」
「楽しいのは確かだけどね。うふふっ。」
「今日はしっかり頑張るのよ、流璃子。」
美しい三姉妹に絡みつかれ、流璃子の終わらない夜が再び始まる。

「まあ、流璃子。もうしっとりと濡らしているじゃない...。」
「うふふっ...触れただけで、こんなに硬く尖って...可愛い娘。」
「駄目よ。こらえなさい、流璃子...。」
掌の責め。指の責め。唇の、舌の、歯の責め。さらに言葉の責めが流璃子を狂わせ
ていく。涙を一杯に溜めた瞳を見開き、哀願する。
「お姉様ッ...そ、そんなに苛められたらッ...!お願いッ...い、いかせてッ!」
「堪えなさい、流璃子。まだいっては駄目よ。」
きつく窘めながら、三姉妹の責めはいよいよ激しさを増していく。
「んあッ...あはあッ...も、もう駄目ッ...!あッ、はあッ...い、いきますッ!...ゆ、
許してッ...お姉様あッ...!ああああッ...!!」
ビクッ、ビクッ...流璃子のヌードが大きく仰け反り、快感に激しく打ち震える。

翌朝。
「ゾヅーカはすっかりあなたに夢中よ。流璃子。」
聖子が頬ずりしながら囁く。
「間違いなくあなたを襲うわ。ベルゼバブの命令に背いてでもね。」
順子が流璃子を抱き締め、胸元に口付けながら囁く。
「でも、それがつけめよ。破壊的エネルギーを得る唯一のチャンスなの。」
奈保子が甘い吐息を耳に吹きかける。
「そのためには、もう少しだけ時間が必要......。私がなんとかしてみせるわ。」
覚悟の瞳。聖子が決然と言い放つ。
暗がりからゾヅーカ達がやって来るのが見える。

一層艶かしさを増した流璃子に、ゾヅーカは恍惚の表情を浮かべる。
「ぐ、ぐへへへへっ...ブ、ブロケルよおっ......」
両腕を突き出し、つかみかかろうとするゾヅーカの前に、聖子が進み出る。すぐさ
ま跪き、両手を胸の前で交差させ、頭を下げる。
「ゾヅーカ様......。本日の当番は私、キリエルでございます。どうか私にお情けを
......。」
「ぐ、ぐおおっ!ど、どけいっ、キリエルっ!お、俺は今日こそブロケルをををー
っ!」
「......お気をお静めください。ブロケルは新参者ゆえ、どうか明日までお待ちくだ
さいますよう。今日は、キリエルが心をこめてお伽します......。」
かろうじて正気を取り戻したゾヅーカが、ようやく荒い呼吸を整える。
「ぐ、ぐふふふふっ...ブロケルに嫉妬しているなあっ、キリエル。ようやく俺様に
心が傾いてきたか...。ぐへへへへっ...いいだろうっ!来い、キリエルっ!たっぷり
たっぷり可愛がってやるっ!」
ゾヅーカは聖子を小脇に抱えると、足音も高く去っていく。

「あはあッ...ああうッ...ゾ、ゾヅーカ様あッ...!」
聖子が全身を汗で濡らし、悶え狂う。両腕は背中でかっちりと緊縛されている。
「ぐへへへへっ...どうしたんだ、キリエル?いつも無表情なお前がよおっ!」
「あ、あはあッ...だってッ...だってッ...ゾヅーカ様が、る、流璃子をいやらしい目
でご覧になるからッ...!」
「ぐへへへっ、妬いてるのか、お前っ!このゾヅーカ様が横取りされそうでよお
っ!」
下からの激しいピストン運動。騎上位の聖子がロデオのように翻弄される。
「こんなに乱れちまってようっ!妹たちに見せられねえ様だぜえっ!」
「ああッ!お、おっしゃらないでえッ!」
狂おしく全身を揺さぶる聖子。
「ぐふふふふっ、俺が好きかっ、キリエルっ!」
「そ、そうですッ!キリエルはッ...キリエルは、ゾヅーカ様がッ...ああうッ...!」
「やっと身も心も俺様に捧げる気になったか、キリエルっ。ようし、今日という日
を祝して、たっぷりと可愛がってやるぜっ!」
「はッ、はいッ...!う、うれしいッ...!ゾ、ゾヅーカ様あッ...!んああああッ...あ
ふうんッ...あはああッ...!」
「ご主人様と言いなっ、キリエルっ!」
聖子を征服し、得意満面のゾヅーカが叱咤する。
「は、はいッ...ご、ご主人様ッ...ああうッ...い、いきますッ...ああッ...ご主人様...
ご主人様のをッ...く、くださいッ......!」
「ぐへへへっ、ようし、たっぷり出してやるからなっ!子宮でしっかり受け止めろ
よおっ...!う、うおおおおおうッ!」
「!!......はああはッ...う、うれしいッ...ご主人様あッ......!!」

夜。全身を揉み抜かれ、果てしなく絶頂を迎えた聖子が、疲れきった体を力なくベ
ッドに横たわる。手を握る流璃子。
「だ、大丈夫。大したことないわ......。」
「でも、姉様。今までどんな目にあっても理性を失わなかった姉様が、今日はすご
い乱れっぷりだったわ...。」
「そうよ。あんな姉様、初めて...。」
「そ、そうね...ゾヅーカも上機嫌だったわ...。やっと見えた希望の光に、私自身も
変わったのかしら?」
目を閉じたまま、うっとりした表情で聖子が呟く。
「それ、流璃子の事?」
「そうよ...。」
流璃子の手を強く握り返す聖子。そのまま流璃子を引き倒し、抱き締める。
「ゾヅーカの奴、流璃子を見るたびにどんどん狂ってるわ。連中は一旦寝込むと、
何があっても朝まで起きないけど、流璃子が毎晩奏でる淫らな喘ぎ声は無意識に聞
き続けているはず。欲情するのも無理ないわね。」
「ベルゼバブも帰ってくるはずだし...いよいよ明日の朝は流璃子が襲われるわ
ね。」
順子が添い寝するように体を横たえ、流璃子に寄り添う。
「ベルゼバブの命令を無視するだなんて、ゾヅーカも命知らずね。」
流璃子の背中に覆いかぶさる奈保子の柔らかな身体。
「それだけ流璃子が魅力的なのよ。本当に色っぽくなったわ。特訓の成果ね。」
聖子が流璃子に口付け、耳元で囁く。
「今夜が最後...。明日は努力の成果を見せてね、流璃子。さあ、はじめましょう。」
「は、はい...お姉様。」
その夜。美しい楽器のカルテットが奏でる密やかな喘ぎのハーモニーは、一晩中や
むことはなかった。
「お姉様ッ...!お願いッ...!い、いかせてッ...!」
「駄目よ、流璃子。聞き分けなさい。」
「許しがあるまで、いってはいけません。」
「こういう責めにも耐えるのよ、流璃子。」
「あうッ...!そ、そんなッ...!る、流璃子はもうッ...もうッ...!」
「うふふっ...おとといは十回。昨日は五回。今日は二回だけ許してあげる...。もう
いっちゃうと、後が大変よ、流璃子...。」
「あはああッ...で、でも...こ、こんなにされては、...だ、誰だってッ...あはああッ
...い、いきそうッ...!」
「流璃子。本当に感じやすい娘ね...。でも、官能に溺れては駄目。」
「んあはあッ...!ど、どうすればいいのッ...!あッ!だ、駄目ッ...!そんなにしち
ゃ、駄目えッ...!」
「この技にも耐えるのよ、流璃子。」
「私は、ここをこうしてあげる。うふっ。」
「ここを責められると弱いのよね、流璃子は。」
弱点への一斉攻撃に悶絶する流璃子。
「あああッ...も、もう駄目ッ...!ご、ごめんなさいッ、お姉様ッ...!る、流璃子は
いきますッ...!いってしまいますッ...ゆ、許してッ...!あはああああああッ
...!!」
美姉妹の総攻撃に、たまらず最初の絶頂を迎える流璃子。汗のベールをまとった全
身が、薔薇色に染まっていく。

最後の朝のホール。
流璃子は三姉妹に寄り添われ、小刻みに震えていた。廊下の奥から、狂乱の絶叫が
急速に近づいていく。
「ブ・ロ・ケ・ルゥウウウウーッ!!」
血走った目を爛々と輝かせ、完全に欲情の虜となったゾヅーカが突進してくる。理
性のかけらもみられない。
「...しっかりね、流璃子。」
「...大丈夫。今の流璃子ならゾヅーカに耐えきれるわ。」
「...汚されるなんて思わないで。利用するだけよ。私達を、そして自分を信じて。」
めいめいに言葉をかけ、離れていく三人。
ゾヅーカは突風のように流璃子駆け寄り、抱え込み、我慢できずにそのままホール
で凌辱を開始する。
「ぐへへへへへっ......もう辛抱たまらんっ!ベルゼバブがなんだっ!堕天使ごと
きが新参者が偉そうにようっ!ここは俺たちの世界なんだっ!!」
「お、おいおい、ゾヅーカさん......。」
「やばいって、ゾヅーカさん......。」
ヒキガエルとアンコウがおろおろと声を掛ける。
床にどっかと足を投げ出して座り、その上に流璃子の華奢な体を乗せ上げるゾヅー
カ。いやらしい両手が全身を撫で回し、衣服をはだけてさせて行く。伸びに伸びた
醜い鼻が胸元に侵入していく。悲鳴を上げる流璃子。
「ぐへへへへっ......やればいいだろうっ、お前らもよおっ...やっちまえよ、メイド
達をよおっ...お、俺が許してやるっ...ぐへへへへっ」
「!...えっ?!」
「い、いいんですかいっ、ゾヅーカさんっ!」
「ああ、ああ、やっちまえ!お前らの趣味は知ってるぜっ!好きにしちまいな!」
喜色を浮かべて、ヒキガエルとアンコウが三姉妹に迫っていく。

「...お、お姉様...!」
思わず手を伸ばす流璃子。
「ブロケルゥゥッ...!人の心配している場合じゃあねえぜっ!ぐへへへへへへっ
...!」
醜怪で強靭な鼻が流璃子の胸元に潜り込み、一気に毟り取る。制服が、エプロンが、
ブラジャーが無残に飛び散る。
「きゃあっ...!」
思わず両手で胸元を覆う流璃子。すぐさまゾヅーカの左手が伸び、流璃子の両腕を
一つに縛める。
「う、うへへへへっ...こいつは絶景だぜっ!」
淫らな光を浮かべたゾヅーカの目が、流璃子の輝くように白い胸元を這う。粘液が
鈍く光る長い鼻先が接近し、這い始める。
「うっ...くうっ...ああっ、嫌っ...」
おぞましい感覚にかちかちと歯を鳴らして耐える流璃子。だが、ゾヅーカの巧妙な
鼻先の責めは、恐怖と嫌悪に青ざめていた流璃子の頬に、次第に熱を帯びさせてい
く。
「あんっ...あふっ...い、嫌...嫌なのに、ど、どうしてっ...くふっ...」
「ぐへへへへっ...感度抜群だなあっ、ブロケルっ...!。こ、これはどうだっ...!」
ゾヅーカのおぞましい鼻先が流璃子の唇を塞ぐ。
「むうっ...むむんっ...んんっ...」
真珠の歯を食い締め、必死に侵入を拒もうとする流璃子。が、ゾヅーカの右手がつ
いと伸び、左胸を揉みしだく。芋虫の指が器用に乳嘴をつまみ、捏ね回し、捻る。
「あっ...あはあっ...!」
突如加えられた思いもかけぬ繊細な責め。流璃子は思わず大きく喘ぐ。その瞬間を
ゾヅーカは逃さなかった。
「うぐっ...くふっ...んっ...かはあっ...」
触手と化した鼻先が花びらのような唇を割り、美しい歯列を乗り越えて、流璃子の
清らかな口腔に、深く深く侵入していく。桃色の可憐な舌が絡め取られる。異様な
粘りと強烈な臭気を放つ粘液が注ぎ込まれていく。流璃子の顔が苦しげに歪む。粘
液の責めを逃れようとして、左右に激しく首を振る。が、許されず、遂に流璃子の
喉は、汚れた粘液を迎え入れてしまう。
「んんんっ...むうっ...こくっ...んふ...こくっ...こくん...」
あまりの汚辱感に流璃子の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。だが、それは凌辱のプ
レリュードに過ぎなかった。

ゾヅーカの触手がさらに伸びる。スカートの中に入り込み、白いストッキングを粘
液で汚しながら、奥へ奥へと這い登っていく。
やがて、花園を覆う純白の三角地帯にたどり着く。興奮に震え、せわしなく蠢く触
手。
「やっ...嫌あっ...お、お願いっ...もう、もう許してっ...!」
必死に足を閉じようとする流璃子。だが、ゾヅーカの膝の上に、双脚を大きく割り
裂かれ、対面座位で乗せ上げられてはどうしようもない。
やがて、ゾヅーカの淫らな触手が、下着の隙間から侵入を試みる。
ずるっ、
ついに触手が下着の内部に入り込む。清らかな花園が、人外の醜悪な触手に思いの
ままに踏み荒らされ、汚されていく。
ゾヅーカが流璃子の花弁を探る。襞々を執拗になぞる。小さな秘密の蕾を発見し、
触れ、弄び、吸う。流璃子のもっとも恥ずかしい部分が、粘液まみれになっていく。

嫌悪の悲鳴を上げ続ける流璃子。が、次々に押し寄せる異様な感覚の襲撃に、次第
に悲鳴が甘美さを帯びていくのを抑えることができない。喘ぎが切なくなる。吐息
が浅く、早く、熱くなっていく。
「あっ...んっ...ふっ...くふっ...んあっ...か、堪忍...ああうっ...」
ゾヅーカの驚くほど伸びた触手は、遂に流璃子の胎内にまで侵入していく。もはや
それは、彼の陰茎そのものであった。
「き、きゃあああッ...!!」
初めて異物の侵入を許した流璃子が悲鳴を上げる。が、次の瞬間、触手が繰り出す
技巧が放つ快美感に、背筋を大きく仰け反らせてしまう。
「はあうッ...やあッ...あはあッ...くううッ...!いッ...やッ...いいッ...駄目ッ...ん
んッ...いいいッ...いやあッ...!」
官能と嫌悪の相克に、心と体を悩ましく揺さぶられる流璃子。
「お、おおうっ...素晴らしいっ、素晴らしいぞっ!ブロケルっ!」
秘めやかに触手を締め付け、吸い込むような感触に、ゾヅーカが歓喜の声を張り上
げる。

そそり立つ真の巨根を流璃子に見せ付け、繊細な手指で愛撫させる。両手で流璃子
の頭を抑えて、口付けさせる。美しい二つの乳房で挟み、こすり、揺すりたてる。
ゾヅーカが強要する奉仕に翻弄される流璃子。征服感に全身を包まれ、有頂天にな
る醜悪なデビルサイダー。

やがてゾヅーカは、切ない喘ぎ声を上げるだけになった無抵抗の流璃子を強く抱き
締めると、再びしっかりと抱え上げる
「ぐ、ぐへへへへっ......そ、そろそろ止めを刺してやるぜっ......!」
この上なく美しい生贄に獣欲が沸騰する。そそり立つ陽物が自らの粘液にてらてら
と照り輝く。
「さ、さあっ...いくぜっ...!!」
ぴたりと流璃子の濡れに濡れた花弁にあてがわれる。息を呑む流璃子。挿入の瞬間。
「!!...あッ、あああああああッ......!」
硬く、あまりに太い凶器の侵入。火のような悲鳴を上げ、激しく仰け反る流璃子。
歯を食いしばり、必死に腰を浮かしそうとするが、ゾヅーカの太い両腕が、がっち
りと流璃子の腰を掴んで逃がさない。それどころか、さらに凶器に流璃子の胎内に
沈め込もうしていく。白くか細い両手で、はかなくもゾヅーカの腕を押さえながら、
流璃子が高い悲鳴を上げ続ける。しかし、流璃子の秘苑は驚異の柔軟性を示し、ゾ
ヅーカを深々と呑み込んだのみならず、苦痛以外の切ない感覚をも流璃子に伝え始
めていく。
「やああッ...あああッ...いやあああああッ...あふッ...んああッ...ああんッ...」
根元まで侵入したゾヅーカは、感激に包まれてピストン運動を開始する。
「うおおおうっ...お、思ったとおりだ...さ、最高の女だぜ、ブロケルっ!!」
感動のあまり、ゾヅーカが口から泡を吹き出す。

ゾヅーカは必死に噴射を抑えながら、体位を変える。流璃子に獣の姿勢を取らせ、
背後から貫きながら、両手で艶かしい双丘のふくらみを思いのままに揉みしだく。
「あッ...はあッ...んんんッ...かはッ...ああんッ...!」
「ぐへへへへへっ......いっていいんだぜっ、ブロケル!。いきたくてたまらねえん
だろう?」
熱く生臭い吐息を可憐な耳朶に吹きかける。ビクッと首を仰け反らせる流璃子の敏
感な反応に、何度も何度も吐息を吹きかけて弄ぶ。
「ぐ、ぐへへへへっ...そ、それっ、もっともっと気持ちよくしてやるぜっ!」
ゾヅーカは第二の陰茎と化した鼻の触手を一層伸ばし、流璃子の秘蕾にあてがう。
官能の虜に堕ちようとしていた流璃子が気付き、高い悲鳴を上げる。
「あッ!だ、駄目ッ...!そ、それだけは許してッ...!お願いッ!助けてッ...お姉様
あッ!」
「ぐ、ぐへへへへっ......!」
懇願を聞く耳も持たずに、一気に菊座に侵入するゾヅーカ。
一人の男から同時に前後から犯される。自分の身に起きた信じられない状況に、流
璃子の頭の中は白熱し、思考が飛んでしまう。全身から汗を滴らせ、激しく身悶え
する。甘く切ない喘ぎを止めることができない。
「あはあんッ...そんなッ...嫌ッ...んんッ...いいッ...嫌ッ...い、いいいいッ...!」
「いいかっ、ブロケルっ...?ああんっ...!?」
「あはあッ...い、いいッ...いいですッ...ゾヅーカさんッ...!」
「ぐへへへっ、そうか、そうかっ...俺もいいぜっ...もう離さねえ...お前は、一生俺
の奴隷だからなっ......ぐへへへへっ......!」
完全にシンクロして蠢くゾヅーカの前後の陰茎。翻弄され続ける流璃子が正気を失
っていく。
「ああッ...そ、そうですッ...!ブ、ブロケルはッ...あはあッ...ゾ、ゾヅーカ様の...
...ど、奴隷ですッ......!」
「おおおうっ、ブロケルッ...!可愛い奴ッ!」
人生最大の感動に打ち震え、流璃子の体を強く強く抱き締めるゾヅーカ。
「あああッ...い、いくッ...ゾヅーカ様あッ...ご、ご主人様あッ...!流璃子はッ...流
璃子はッ、いってしまいますッ......!」
絶頂の急接近。思わず本名を口走る流璃子。だが、興奮の極にいるゾヅーカは全く
気付かない。
(......いいこと。必ずゾヅーカを先にいかせるのよ......)
昨夜の順子の囁きが甦る。
(ああッ...駄目...まだッ...お願いッ...も、もう少しだけッ...!)
狂おしく快楽の頂点を求めようとする己の肉体。流璃子は唇を噛み締め、必死に耐
えようとする。
「お、おおおおうッ...いくぞッ...俺もいくぞッ、ブロケルッ!ぐ、ぐへへへへッ...
熱くて、濃いのを...たあーっぷり中に出してやるからなあッ...しっかり受け止める
んだッ!」
(......耐えに耐えて蓄えた内なるエネルギー。ゾヅーカの凶悪な精のエネルギーに
ぶつけて、絶頂と共に解き放ちなさい......)
奈保子の囁きが胸にこだまする。
「は、はいッ...!あはああッ...ゾ、ゾヅーカ様の...あ、熱くて濃いのをッ...あああ
んッ...た、たっぷりと、流璃子に、くださいッ...あはあんッ!!」
「う、うおおおおおッ...!ブロケルッ!ブロケルッ...!!」
花弁と菊座を貫く二つの陰茎が、ひときわ大きく震える。灼熱の粘液が二つ同時に
迸る。
(......お願い。汚されたなんて思わないで。どんな辱めを受けようとも、あなたは
美しい......)
聖子が、流璃子の心に優しく囁く。
「あ、あああああッ...あ、熱いッ...い、いくッ!...る、流璃子もッ、流璃子もいく
ッ...!!」

その瞬間。
絶頂に弓なりに仰け反り、背後のゾヅーカに頬ずりする流璃子の下腹部から、白熱
の輝きが生じる。その光は、瞬く間に流璃子の全身を包み込んでいく。
「ぐ、ぐはあああっ...な、なんだこれはあっ......!!」
二重噴射の快感にすっかり酔い痴れていたゾヅーカの体も、白い光球の中に消えて
いく。そして、一気に弾ける。

大音響とともに、黒い館が吹き飛ぶ。庭の大木に三人のメイドを吊るし、思う様に
鞭打っていたアンコウとヒキガエルも、奇声とともに光球に飲み込まれ、消滅して
いく。茨の鞭で制服を引き裂かれた、血まみれの三姉妹も、光球に包まれていく。

黒き館の残骸の中、爆心地に流璃子が白く輝く姿で立っていた。宝玉が輝き、神々
しい薄物を纏ったその姿に、三人のゴッドサイダーが近づく。
「私達を縛めていた首輪も消えたわ。想像以上の力ね、流璃子。」
「ありがとう。これでまた戦えるわ。」
「ベルゼバブはすぐに戻ってくるはず。早くお逃げなさい、流璃子。」
美しい三姉妹が口々に言い募る。
「お、お姉様...。流璃子を一人にしないで...。それに...一体どこに行ったらいい
の?」
流璃子が心細そうに、両腕で自分の両肩を抱き締める。
「この館に囚われていた間に聞いたことがあるの。ここから遥か西に、ベルゼバブ
も一目置く大物のデビルサイダーがいるそうよ。」
「私達にもよくわからないけど...ゾヅーカ達の様子を見ると、彼らは決して一枚岩
ではないようね。」
「西にお行きなさい、流璃子。あなたならきっとこの地獄を脱出できるわ。」
「で、では...お姉様たちも一緒に...。」
「いいえ。私達はここでベルゼバブを迎え撃ちます。」
「これまで耐えてきたのは、せめて一矢報いるため。今こそその思いをぶつける
わ。」
「今度は最終奥義"エクスクラメーション"をお見舞いしてやるんだからっ!」
遥か彼方から、微かに邪な気配を感じる。
「ベルゼバブが戻ってくる。時間がないわ。」
三姉妹が、順番に流璃子を抱き締める。
「さよなら、流璃子。あなたに会えてよかった。」
「短い間だったけど、楽しかったわ。」
「さあ、お行きなさい。あなたにはきっと大きな使命が待っているはず。」
美しき女戦士達は、瞬間、武装形態に変化すると、黒い気配に向かって走り去る。
水着のように身体にフィットしたボディースーツ。ブーツ。リストバンド。
「お姉様ああっ......!!」
流璃子の悲鳴のような叫びは、轟く風にかき消され、届くことはなかった。

(第1話終了)

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