「ADVENT」

題名:#3 紅い森の死闘

第3話「紅い森の死闘」下

流璃子が駆け入った紅の森。下生えの雑草や、地面までが血のように紅い中、や
や黒ずんだ小道が誘うように続く。流璃子は道をどこまでも走り続ける。やがて、
木立が途切れ、館が姿を現す。屋根も、壁も、窓さえも紅に染まる館。
目の前で音もなく開いた扉に、しばらく躊躇した後、思い切って踏み入る流璃子。
背後の扉が音もなく閉まる。扉の先には広間があった。その奥には主のものと思し
き豪奢な玉座が一つ。不思議なことに入り口に背を向け、壁に向けて据えられてい
る。赤い床。紅い壁。朱い絨毯。何もかもが紅に染められている。高い天井から吊
るされた大きなシャンデリアの紅の光に照らされ、流璃子のワンピースも白い肌も
紅に染まる。広間の中央まで進んだ流璃子に向け、大広間中に轟くような声が響く。
「ふっ...ふふふふっ...ようこそ流璃子。我が紅の間に!」

周囲を見回す流璃子。しかし動くものは何一つない。
「南の王......ですか?どこにおられるのです?」
流璃子の呼びかけに声だけが応える。
「ふむ...そういう呼ばれ方もあったかな。我としては『官能の王』とでも呼んで
欲しいのだが...まあいい。流璃子、君を迎えることができて非常に嬉しいよ。」
「?......ご存じなのですか、私の事を?」
「ふっ...無論だ、流璃子。我はこの世界の全てを覚知する者。君がこの世界に来
て以来、我は君の存在の全てを我が五感で堪能してきたのだよ。君がここに来るこ
とは先刻承知さ。」
「あ、あの...全てって...。」
「ふふふっ...驚くのも無理はないが...造作もないことよ。我が目、我が耳、我が
鼻、我が舌、我が指......すなわち我が五感は、この世界の至る場所に張り巡らされ
ているのだ...。我こそはこの世界の事象全てを把握するもの。それはともかく...流
璃子、君は実に不思議な力を持っているね......」
  声だけが響く大広間。声の主を捜して周囲を見回しながら、流璃子が答える。
  「あなたには隠しようがないようですね。この癒しの力が何なのか、私にもまだ
判りませんが......」
  「ふっ...興味深い...非常に興味深いね...これまでこの世界に存在しなかった力
だ...」
  「この力に気づいたのはこちらに来てからです。しかし、ベルゼバブは以前から
知っていたようです。」
  「ふん...ベルゼバブか...不愉快な奴だ。我に類似する探知能力を持っている。無
論我には到底及ばぬが、奴はこの世界の外にまで手を広げられる...無念なことだ。」
  館全体が歯ぎしりでもするかのように、小刻みに震えた気がした。
  「この力をベルゼバブに悪用させたくありません。それに、私がこの世界に来た
ことにも、何か意味があるのかも知れない、そういう気がするのです。」
  「ふふふっ...それで、ベルゼバブにも容易く手が出せない我に助力を求めに来た
のだね...」
  「はい。ご助力いただけませんか?」
  「ふっ...我にあのベルゼバブと正面切って対峙しろと...何か代償はいただける
のかな?流璃子。」
  「は...はい。...私にできることがあれば...何でもおっしゃって下さい。」
  何とはなしに嫌な予感を感じながらも、やむなく流璃子が応える。
 
  哄笑が響き渡る。
  「ふっ、ふふふふっ...あるとも...無論あるとも。我と契約してくれぬかね、流璃
子?」
  「......け、契約ですか...それは、どのような?」
  「ふっ...何、簡単なことだ。そら、そこに椅子があるだろう?君のために用意し
た特別な椅子さ。そこに座ってくれぬかね。」
  声の主が言っているのが、目前にある玉座であることは疑いようがなかった。
  「ここに、ですか...しかし、この豪華な玉座は、あなたのものなのではありませ
んか?」
  「ふふっ...とんでもない。その椅子は...いや、この館自体も、君を迎えるために
我が生み出したものなのだよ。」
  「え...この館が?」
  改めて周囲を見渡す流璃子。
  「ふっふっふ...そのとおり...我が好意...ぜひ受け取って欲しいものだね。」
  声に勧められるままに、静かに玉座に近づく流璃子。紅一色で統一され、ひとき
わ輝くルビーのような宝石が一面にちりばめられ、全体には唐草模様のような文様
がきめ細かく彫り込まれているその玉座は、確かに膨大な手間と価値が投入されて
いることを感じさせた。
  「ここに...座ればよいのですか?それから何を...?」
  「ふっふふっ...心配ない。座るだけでいいのだよ、流璃子...」
  「わ、わかりました...」
  言いしれぬ不安を抱えながらも、おずおずと腰を掛ける流璃子。その瞬間、館が
大きく揺らいだ。
 
  玉座の宝石がひときわ輝くを増す。
  玉座の背もたれから、無数の針のように細い触手が立ち上がり、流璃子の背中に
突き立つ。
  「!きゃっ...!!」
  一瞬の激痛に流璃子の背が仰け反る。瞬間、痛みは灼熱の疼きに変わっていく。
針のような触手は凄まじい速度で前後し、流璃子の肌に奇怪な紋様を彫り込んでい
く。汚れない白い柔肌に鮮血のような紅い色素が注入されていく。糸杉のように細
長い樹木と、そこから放射状に伸びる無数の触手の形が、鮮やかに浮かび上がる。
  「く...ううっ...!」
  玉座から必死に立ち上がろうとする流璃子。だがその体からは急速に自由が失わ
れていく。がっくりと座り込んでしまう流璃子。無数にの玉座の唐草の文様が一斉
に立ち上がり、無数の触手と化して流璃子の全身を這う。触手の波に埋もれるよう
に、流璃子の体が沈み込む。
  「ふはははははははっ!。やった!やったぞ!手に入れた!さあ、君こそは官能
の座の女王だ!我とともに永遠の快楽を楽しもうぞ!!」
  「や...嫌あっ...!」
  手足の動きを封じられた流璃子が悲鳴を上げる。
  「ふははははっ。我が紋章の烙印、確かにその肌に刻ませてもらったよ、流璃子。
もう逃さぬ。紅い森は我そのもの。この館は我が中枢。そしてこの椅子こそが我が
核心たる、官能の座。さあ、全てを忘れて大いなる快楽に身心を委ねるがよい...!」

 ひしひしと押し寄せる悪意の波動を押し返しながら、眞耶子は紅い森を疾走する。
不自然に増えた落葉が視界を塞ぎ、踏みしめる下生えの雑草が足止めをするように
足首に絡みついてくる。なお進み続け、館の影が見えたその時、森は明確な敵意を
示した。上空から何本もの鞭のような紅い蔦が迫る。眞耶子が放つ雷撃に触れて千
切れ飛ぶと、代わって、鋭い切り口を向けた無数の枝が四方八方から眞耶子めがけ
て飛び込んでくる。眞耶子の全身に張り巡らされた雷電の網が、それをことごとく
弾き飛ばす。不意に地面が消失すると、大穴が口を開く。底に太くて硬い根が無数
に直立し、鋭い切っ先を空に向けている。落下しながら、眞耶子が振るう雷の槍が
次々と根を砕いていく。深い穴底に降り立った眞耶子が、凛とした声を張り上げる。
  「何者かは知らないけど、邪魔をしないで!私は姉さまを護らなきゃいけないの
っ!」
  雷の槍を大きく振りかぶる。眞耶子の一撃で、大きな横穴が穿たれ、紅い液体が
迸る。
  「やめろ...眞耶子...」
  どこからともなく声が響く。
  「南の王なのっ?姉さまはどこっ!」
  「流璃子は、今我とともにある。乱暴はよせ...案内しよう。」
  すっと音もなく横穴が開き、眞耶子を招き入れる。油断なく槍を構えながら、眞
耶子が進み入る。長い隧道の果てに階段があった。昇り切った先には紅い大広間。
シャンデリアが微かに揺れる。部屋の奥にはやはり壁を向いた玉座。人影はない。
  「さあ、眞耶子...。その椅子に座るが良い。」
  「姉さまはどこ?答えて、南の王!」
  「ふっふっふ...これまで氷の人形のようだった君が、ずいぶんと威勢良くなった
ではないか。流璃子には会わせよう、約束する。その椅子に座ったなら、すぐにな
...」
  わずかな逡巡の後、長い雷の槍を剣に変え、眞耶子が玉座に座る。
  「さあ、座ったわ...流璃子さんに会わせて!」
  「ふっふっふっふっふ...約束は守るさ。その前に...!」
  玉座の背もたれから伸びる無数の針のような触手。眞耶子の背中を貫き、流璃子
同様、紅い紋章を刻み込んでいく。眞耶子の体の自由が急速に奪われていく。
  「なっ...!」
  一瞬の苦痛に仰け反り、慌てて剣を振りかぶろうとするが、既に能力は封じられ、
具現化していた雷の剣が消滅する。
  「ここは我が繊細なる官能の中枢なのでな...暴力は謹んでもらおうか。代わりに
君に与えるは、この世のものならぬ快楽!さあ、ぞんぶんに溺れるがよい...流璃子
とともに!」
  玉座から現れた一本の触手が眞耶子の髪留めを弾き飛ばす。漆黒の長い髪を下ろ
され、妖艶さを増す眞耶子に、玉座から次々と立ち上がる触手が迫っていく。

 快楽の玉座に据えられた流璃子。
  流璃子の白いワンピースの隙間を縫って、無数の紅い触手が忍び込み、這い回る。
両足首を縛めた太い触手に開脚を強要され、肘掛けに載せ上げられる流璃子の白い
腿。両腕は背もたれの後ろに回され、固定されてしまう。
  「な...何をするのっ!離してっ!約束はどうしたのですかっ!」
  自由にならない躯を精一杯よじり、流璃子が叫ぶ。
  「ふはははははっ。君が欲するは我が保護。我が欲するは君の治癒の力...。我は
西の王のように無理無体に融合するような無粋な真似はせぬ。君にはこの世のもの
ならぬ究極の快楽を授けよう。絶頂の果てに、全ての理性と意識を燃やし尽くした
なら、君は我と一つになり、永遠に生き続けるのだよ......!」
  「そ、そんなっ...!」
  流璃子の耳元に伸びてきた触手の先端には玉座を飾っていた紅い宝石がついて
いた。それは不意に形を変えると、艶やかな唇に変化し、流璃子の形の良い耳に寄
り添って、囁く。
  「これから君が味わうのは、君の五感全てに亘る快感の嵐......抵抗する理由など
何もない。快楽の中に身も心も溶かし込んでしまうが良い。我が全身全霊の奉仕を
存分に受け入れるのだ...」
  言い終わるや、流璃子の耳たぶを優しく噛む唇。
  「くふっ...!」
  不意打ちの快感に、思わず喉をそらせて仰け反る流璃子の目に、周囲に群がる無
数の触手のうち、先端に宝石を飾るものが、次々と目や、耳や、鼻や、唇に変わっ
ていく光景が飛び込んでくる。
  唖然として言葉もない流璃子に、興奮のためか先端から透明な粘液をしたたらせ
ている触手がねっとりと絡みつき始める。
「ふはははっ!さあ、契約の儀式を始めようっ!」

 流璃子は嵐の海を漂う小舟のように翻弄されている。太く長い触手は優しく、し
かし断固として流璃子の四肢を縛め、思うがままの姿勢を強要する。そして、無防
備にさらされる流璃子の身体に、触手だけでなく、宝石が変じた無数の目・耳・鼻・
唇の各器官が殺到してくるのだ。
  腕を頭の上にまで掲げられ、白く美しい腋を大きく晒される流璃子。すぐに唇が
無防備な腋下に吸い付いてくる。舌が這う。歯が甘噛みを加える。その様子をぎり
ぎりまで接近してきた目がじっと見つめ、耳が聞き、鼻が嗅ぐ。
  流璃子の背が大きくそらされる。触手が衣服を引き裂き、奪い去ると、はだけら
れる美しい胸。興奮したいくつもの唇が押し寄せ、争って美しい乳嘴を吸い、乳暈
を嘗め、触手とともに乳房の至る所を這い回る。それを大きく見開かれた目が見つ
め、ぴくぴくと蠢く耳や鼻が、近づく。
  「ああッ...!」
  押し寄せる快感に悲鳴のように喘ぎ声を上げる流璃子。唇を噛みしめて耐えよう
とするその切なげな表情も、多くの目がじっと見つめている。流璃子の両耳には特
に大きな唇が一つずつ寄り添い、時折甘噛みしたり、舌を差し入れたりしながら、
羞恥を煽る囁きを続けている。
  「ふはははっ...流璃子は耳は弱いんだよね。ほうら、君の美しい二つの乳房が今
どういうことになっているか、見てご覧。ぎらぎらと血走った目が食い入るように
見つめているよ。蛭のような唇が吸い付いているよ。蠢く舌がしゃぶっているよ。
ほうら、あんなに激しく流璃子の匂いが嗅がれているよ。流璃子の出すいやらしい
音を耳がじっと聞いているよ。さあ、自分の恥ずかしい姿を見てご覧......」
  「ああんッ...い、いやあッ...」
  流璃子の両耳を辱める唇は、時折流璃子の局部が発する音を忠実に再現して見せ
る。
  「ふふっ...クチュ...チュッ...グニュ...どうだい流璃子...君の出すいやらしい音
は...ニチュ...グチュ...」
  「い、嫌あッ...ああッ...駄目ッ...!」
  必死に首を振り、きつく目を閉じて自分に加えられる淫靡極まる行為に背を向け
ようとする流璃子。しかし、南の王の執拗な責めは容赦なかった。特殊な触手が流
璃子の首筋に真紅のチョーカーのように巻き付く。流璃子の皮膚に接触・融合し、
中枢神経系を浸食していく。すると、南の王の触手をはじめ、各器官の官能情報が、
直接流璃子にフィードバックされていく。流璃子は自分自身の生み出す快感のみな
らず、南の王の味わう五感の官能をも伝えられ、めくるめく快楽の渦に翻弄される。
  南の王との感覚の一体化。触手に弄ばれて激しく喘ぐ流璃子。同時に触手を蠢か
せて柔肌を這う感触を楽しんでいるのも流璃子。それをじっと見つめるのも流璃子。
喘ぎ声を楽しんでいるのも流璃子。甘い芳しい髪の香りを吸い込んでいるのも流璃
子。南の王のもたらす官能の情報の洪水に、流璃子は脊髄から脳髄までも侵されて
いく。責められている自分。責めている自分。混乱の極みに達する感覚に意識が混
濁していく。
  突然、流璃子は背を大きく反らし、首を反り返らせ、ひときわ大きく喘ぐ。触手
達の責めが、遂に下半身に及び始めたのだ。
  流璃子の両脚は大きく押し広げられ、肘掛けの上に固定されている。すっかり乱
れ、ちぎり散らされたスカートの奥まで晒され、その狭間にある、かろうじて白い
下着に守られている流璃子の神秘の花弁に、いくつもの唇が先を争うように挑んで
いく。内腿や鼠径部に口付け、吸い、舌で嬲りながら、下着の内部への侵入の機会
を窺う。それをいくつもの目や耳や鼻が取り囲み、様々な官能情報を流璃子に送り
込んでいく。
  鼓動の高鳴りを止めることができない。せわしなく喘ぐ呼吸。必死に堪え忍ぼう
とする努力をあざ笑う二つの唇。そして流璃子は、遂に羞恥の源泉への責めを覚知
する。
  犬の鼻面のように変化した醜い鼻が、流璃子の花弁に押しつけられる。激しい鼻
息を感じる。鼻先が下着越しに局部に押し入ろうと淫靡に蠢く。
  「ふふふっ...流璃子...鋭敏な鼻が押し当てられているよ。流璃子の一番恥ずかし
い匂いを激しく嗅いで興奮しているよ...」
  堅く目を閉じて首を振り続ける流璃子。しかし、首に巻きつく触手によって、流
璃子の脳裏には、自分の股間に押しつけられる獣の鼻の映像がはっきりと映される。
そればかりか、蠢く鼻の立てる荒々しい音も、深々と吸い込む流璃子の神秘の香り
までもが鮮やかに再現されてしまうのだ。辱められる感覚だけでなく、辱める感覚
までを同時に味わわされる。不可能なはずの感覚の二重奏に、流璃子は酔い痴らさ
れる。全身を火柱のように焼き焦がす激しい羞恥が、一層快感を煽り立てる。
  「嫌ッ...嫌ッ...そ、そんなに押し付けないでッ...そんなに嗅いじゃ駄目えッ!...
は、恥ずかしいッ...は、鼻は...鼻は嫌あッ!」
  上気した頬を激しく振る。ぎゅっと瞑った瞳から、屈辱の涙が流れる。薄紫の艶
やかな髪が無残に散り乱れていく。
  「ふっ...鼻はお嫌いかね...。では、こちらの方がお気に召すかな?」
  触手が下着を持ち上げると、隙間から侵入した怪物のような分厚く熱い唇が、流
璃子の秘密の唇を覆う。もちろんすかさず血走った大きな目が迫っていき、その光
景を鮮やかに映し出す。
  「あッ...あうッ...!」
  訪れた衝撃に上体を弓なりに反らせる流璃子。さらに熱く太い舌が、奥深くに向
けて侵入を開始する。
  「あああッ...!!」
  激しく頭を振り、官能から逃れようとしながら、全身をわななかせる流璃子。
  「も、もう、許してッ...お願いッ...こ、これ以上されたら...わ、私ッ...私いッ!」
  「おやおや...もう降参かね...まあ、こんな感覚は初めてだろうがね。我が奉仕は
これしきで終わらぬぞ...今度は全身を同時に責めてあげよう...全身を責められな
がら、責める感覚をも味わう...この官能地獄に耐えられるかな、流璃子...ふふふふ
っ...」
  「!...そ、そんなッ......きゃあああああうッ...!!」
  これまで体の部分ごとに加えられてきた責めが、全身に繰り出される。同時に、
無数の触手や耳や鼻や目が唇が伝えてくる、感触や音や匂いや映像や味が、流璃子
の脳裏に強制的に伝えられていく。
  「お、お願いッ...か、堪忍ッ...!ふあああああッ...!!」
  もはや流璃子の声は言葉にならなかった。
  全身を触手と唇と舌と歯とに揉み抜かれ、舐り尽くされ、さらにその痴態を見つ
め、聞き、嗅ぐ。快感と羞恥とが混じり合い、流璃子の理性が激しく浸食されてい
く。
  「ああんッ...うあッ...つッ...す、凄いッ...あはあんッ...あはああッ...!」
   限りなく淫声を発するだけの器官に成りはてた流璃子の可憐な唇。それを待っ
ていたように、一際大きな唇が奪いにくる。
  「!...ううッ...むうッ...むぐッ...むむうッ...!」
  徹底的に蹂躙される流璃子の口腔。舌を吸われ、歯茎をしゃぶられる。異様に粘
度の高い生ぬるい液体が、夥しく注ぎ込まれる。
  「!!...くッ...んくうッ...んんッ...」
  逃れようと顔を前後左右に振る流璃子だが、大きな唇はぴたりと吸い付いて離れ
ず、執拗に粘液を送り込んでくる。全身から押し寄せる快感の前に、流璃子の抵抗
はあまりに儚かった。
  「んんッ...」
  ...クッ...コクッ...コクン...
  仰け反る流璃子の喉が遂に動き、おぞましい粘液が飲み下されていく。大きな唇
は、次々と粘液を注ぎ込み、流璃子の口腔と喉を犯す歓びに打ち震える。

 全身を覆う快楽の責めに、発狂寸前にまで追い込まれ、半ば意識を喪失する流璃
子。しかし、不意に責めが中断される。
  虚ろな光をたたえた瞳が、正面の壁をぼんやりと見つめる。
  いつのまにか目の前の壁は鏡となり、流璃子のあられもない姿態を映していた。
  『ああ......さらに私を辱めようというの......』
  かろうじて残っていた正気が呟く。
  触手の一本が、秘めやかな菊の蕾に侵入する。
  朦朧としていた流璃子の表情が衝撃に驚愕する。
  「うあッ...やッ...そ、そこは嫌あッ...んあああッ...!」
  回転し、こねくり回す触手の伝えるおぞましい感覚。
  瞬間、はっきりと正気を取り戻した流璃子は、眼前に菊座を貫かれて仰け反る女
の姿を見た。
  「!...か、鏡じゃ...ない...の...?」
  「鏡」の中の女の髪は艶やかな漆黒だった。
  「ま、まさか...!」
  「ふははははっ...ようやく気づいてくれたかね...」
  両耳に熱い息を浴びせながら、唇が嘲笑する。
  「そう...完全に同調した責めを受けていたから判らなかっただろう...あれは君
の可愛い眞耶子さ...どうだい、仲良く同じ責めに打ち震える感覚は...?」
  やがて眞耶子も首を上げ、流璃子を見つめる。
  「...る、流璃子...姉...さま...?」
  「ま...眞耶子...!」
  二人の耳元で、よく似た形の唇が同時に囁く。
  「ふはははははっ......計画どおり、全ては我が計画どおりだ!さあ、お互いの恥
ずかしい姿を見つめあい、一層燃え盛るがいい。二人とも、身も心も我に捧げるの
だ...!」
  「やッ...やめてッ...!」
  「...み、見ないでッ...お願いッ...!」
  己の狂態を、痴態を、最も親しい同性につぶさに見られてしまう。この上ない屈
辱に二人は悲鳴を上げるが、再開された激しい触手の責めに、同時に嬌声を上げて
しまい、背を弓なりにし、喉を仰け反らせる。その姿は、まさに鏡像のようにシン
クロしていた。
  目を閉じようとも、顔を背けようとも、ハッキングされた神経から、南の王の官
能が中継され続ける。この上なくはしたなく乱れた相手の姿態を見つめながら、自
分が全く同じ痴態を晒していることを思い知らされる。音と匂いもあわせて。屈辱
と羞恥の炎が身心を苛み、理性を、正気を全て焼き尽くそうとする。
 
  流璃子の耳を犯す唇が甘く囁く。
  「さあ、一緒に眞耶子に悪戯してやろうじゃないか、流璃子。どこから責めたい
かね......」
  悪魔の囁きに唆されるように、流璃子の唇が動いていく。
  「...ま、眞耶子にキスして...舌を激しく吸って...しゃぶって...臭くて...汚らわし
い唾液を...たっぷり、たっぷり...飲ませてあげて...!」
  その声を聞いた眞耶子の瞳が驚愕に見開かれる。
  「う...嘘。そ、そんな...姉さまッ...!」
  『わ、私...そんなこと思ってない!嘘ッ、嘘よッ!南の王が勝手に私の唇を使って
...!』
  しかし、流璃子の否定は、口を衝いて出ることはなかった。
  「ふっふっふ...そうかねそうかね。よかろう、良く見ていたまえ......流璃子。」
  一つの唇がこれみよがしに大きく醜い怪物のそれに変貌する。眞耶子に近づき、
生臭い息を吹きかける。あまりの臭気に顔を背ける眞耶子に構わず、唇は自由自在
に動き、眞耶子の唇を強引に盗むや、舌を差し入れてくる。
  「い、嫌ッ...姉さまッ...嫌ッ...むうッ...くうッ...んんんッ...」
  抵抗も虚しく分厚い舌が奥深くに侵入し、桃色の可憐な眞耶子の舌を絡め取る。
しゃぶり、思い切り吸い上げる。その感覚の一部始終は、流璃子の神経に伝えられ、
流璃子は眞耶子と直接キスしている錯覚に陥る。やがて、どくどくと音をたてるよ
うに穢れに満ち満ちた唾液が眞耶子の口腔に注ぎ込まれ、飲み下すことを強要する。
  「んんんッ...むむんッ...クンッ...コクッ...コクン...ゴクッ...んんんんッ...!」
  必死に首を振り、逃れようとあがきつつも、次々と汚い粘液を飲み込まされてい
く眞耶子。
 
  やがて流璃子は、眞耶子に囁く南の王の声を聞かされる。
  「眞耶子...流璃子はひどいことをするねえ。可愛い君にあんなことをするなんて。
さ...今度は君が流璃子を苛めてやればいい。どうして欲しいかね?」
  端から粘液の滴をとろり垂らし、虚ろな瞳の眞耶子の唇が動く。
  「...ね、姉さまの......綺麗なおっぱいを...二つ同時に...激しく吸ってね...あ、あ
そこも...ク、クリトリスも...強く吸って...ね...唇も...ね...いっぱい...いっぱい吸う
の...」
  「ま、眞耶子ッ!...ああ...そんなッ!」
  南の王に操られ、無理矢理言わされているのだと信じたい。だが、眞耶子の口を
衝いて出た悪魔の望みは、流璃子の心に激しい衝撃を走らせる。
  「ふははははッ...吸い尽くし抜くのかね...よかろう...見ていたまえ!」
  眞耶子のリクエストどおり、四つの唇が指定の場所に同時に吸い付き、激しく吸
い始める。
  「!...むうんッ...んんんッ...んああああんんッ...むむむんッ...!」
  唇を奪われて舌を吸われ、声にならない悲鳴を上げながら、全身を痙攣させる流
璃子。そして南の王の感覚は、眞耶子にも伝えられ、眞耶子の体も激しくわななく。
 
  「さあ流璃子...眞耶子に負けちゃ駄目さ...次はどうするね。」
  「しょ...触手で...眞耶子のあそこを...大きく押し広げてッ...舌を...奥深くまで
入れて...両耳にも...舌を深く差し入れて...ぐるぐるぐるぐる...回すのおッ...!」
  酔い痴れたように口走しる流璃子。眞耶子の表情が凍りつくのが見える。
  「...ね、姉さま...ひどいッ...!」
  『ああッ...許してッ...眞耶子ッ!』
  流璃子の魂の謝罪とは裏腹に、南の王が、流璃子が望むままに、眞耶子の足を大
きく広げ、触手で花園を押し広げる。花芯の奥まで外気に晒される眞耶子。さらに、
その部分に分厚く大きな唇が押しつけられ、異様に長く熱い舌が滑り込んでいく。
同時に、眞耶子の黒髪に隠れた可憐の耳にも、唇が張り付き、細長い舌が奥深くま
で潜り込んでいく。
  「ふあッ...あはああッ...つッ...くふッ...はあああんッ...!」
  眞耶子を責める感触と同時に、今度は責められて悶える眞耶子の感覚までが流璃
子の神経に伝えられる。官能の過負荷に流璃子の神経が悲鳴を上げ、激しく仰け反
らせた体を痙攣させる。
  さらに眞耶子に囁く南の王。
  「ふふふふ...眞耶子。流璃子の責めは気に入ったかね...今度は君の番さ...さあ、
どうしてやりたい?」
  恍惚の表情を浮かべながら、幼児のような口調で眞耶子が呟く。
  「姉さまのぉ...あそことぉ...アヌスにぃ...すんごくぅ...嫌らしい触手をぉ...い
っぱい、いっぱい、入れるのぉ...」
  恐怖のリクエストに全身を強張らせる流璃子。
  「そ、そんな...許してッ...堪忍してッ...ああッ...眞耶子ッ!」
  「...駄目だよぉ...許さないよぉ...」
  焦点の定まらない瞳で流璃子を見つめる眞耶子が妖しく微笑む。
  「ふははははっ...その願い、聞き届けようぞっ、眞耶子!」
  流璃子の目前にいくつもの触手が並ぶ。太いもの。先端がブラシ状に枝分かれし
て、それぞれが勝手に蠢いているもの。たくさんの吸盤が並ぶもの。開いたり閉じ
たりする赤ん坊の腕のようなもの。無数のイボに覆われたもの......。
  「さあ、どれがどこに入るのかな?お楽しみぃっ...」
  イボに覆われた触手が視界から消える。大きく広げられた流璃子の双脚。その奥
に秘めやかに息づく羞恥の菊座がノックされる。
  「!...だ、駄目ツ...そこだけは駄目ッ...許してッ...ああッ、嫌ッ...!」
  流璃子の懇願も虚しく、こじ入れられる触手。蠢き、回転しながら奥深くに侵入
していく。
  「やあッ...やめてぇッ...んんんんッ...!」
  おぞましい感覚に必死に耐える流璃子。だが、次の瞬間、前の花園に押し当てら
れる赤ん坊の拳。
  「くふッ...駄目ッ...そ、そんなッ、入らないッ...入るわけ...ないッ...」
  ぐりぐりと回りながら押し入ってくる小さな拳。美しい持ち主を裏切り、受け入
れていくふたひらの花弁。深く深く入り込んだ拳が、不意に広げられる。
  「!!くはあッ...駄目ぇッ、そ、そんなことしちゃッ、駄目えええッ!」
  流璃子の絶叫がほとばしる。失いかける意識の端で、同じ感覚を与えられ、白目
を剥いて激しく仰け反る眞耶子が見える。
  「ふははははっ、さあさあ頑張ってくれたまえ流璃子。目標は十本だよっ!」
  流璃子の魂も消え入りそうな恐ろしい台詞。嬉々として叫ぶ南の王。官能の宴は
果てしなく続けられる。

 一体どれほどの時間が経過しただろう。お互いに相手を責める方法を口にさせら
れ、南の王が実行する責め。その攻めと受けの感覚を同時に味わわされる。南の王
のおぞましい遊戯に付き合わされ続けた二人は、疲労困憊し、触手に縛められたま
ま、美しいし裸体を惜しげもなく晒して、しどけなく玉座に体を預けている。
  「ふはははッ...たっぷりと楽しんでもらえたようだね。さあっ、それではメイン
ディッシュといこうか...!二人に極上の絶頂を差し上げよう!」
  息も絶え絶えに背もたれに体を預け、両脚を大きく広げた姿勢のまま、二人の体
は触手によって持ち上げられ、すぐそばまで対面させられる。それぞれの玉座から
は、赤黒く艶やかな極太の陽根がせり上がってくる。
  「さあ、二人とも受け入れるがいいっ!」
  南の王の、そしてお互いが与えた責めによって潤みきり、しとどに濡れそぼった
二人の花弁に、灼熱の巨根が押し当てられる。
  「...んんッ...」
  「...くふッ...」
  怖ろしい凶器の接触に、失神したかのように動かなかった二人が、同時に喉を反
らせ、喘ぐ。そして。
  「はあああああああああッ...!!」
  同時に貫かれた二人の悲鳴のデュエットが部屋中にこだまする。
  「はあッ...はうッ...あうッ...はあうッ...!」
  最初はゆっくりと、だが次第に激しくつきまくる熱い欲望。二人はその動きに完
全に翻弄される。
  「あッ...ああッ...あう...んあッ...んんッ...あはあッ...!」
  深く貫かれるたびに、下腹部が陽物の形に盛り上がる二人。
  「ふはははッ...素晴らしいッ...素晴らしいぞ、二人ともッ...!」
  執拗に耳元で囁き続ける唇の口調も、興奮を隠しきれない。

 消え入りそうな僅かな理性で、流璃子は微かに想った。
  『た、耐えるの...欲望が放たれるまで...そ、そうすれば...お、お姉様...どうか、
どうか力を貸して...!』
  聖なる浄化の光が発動すれば、南の王といえども消滅は免れまい。
  「くッ...さ、さあ、流璃子ッ...眞耶子ッ...我が情熱を受け止めるがいいッ...そし
て、我と一つになるのだッ...!」
  一層はげしくなる獣欲の動きに翻弄されながら、流璃子は必死に耐える。その時、
眞耶子が大きな悲鳴を上げる。
  「あああッ...駄目ッ...も、もう駄目ッ...いっちゃうッ...いっちゃううううッ...あ
あああああああああああぁぁぁぁぁッッ!!!」
  一足早く絶頂に押し上げられた眞耶子が、全身を仰け反らせ、四肢を引きつらせ
る。
  「うおうッ!い、いくぞッ...おおおおうッ!!」
  次いで、南の王が達する。欲望は弾け、一気に押し寄せる......。
  「?!...んあッ...ああッ...あああああああああああぁぁぁッッ!!」
  同時に流璃子も絶頂を迎える。しかし...。
  浄化の光は流璃子の下腹部で微かに瞬いたかと思うと、すぐに消えてしまう。
  快感の頂点。意識を失う一歩手前で、かろうじて理性を手放さなかった流璃子。
目の前の眞耶子は失神し、がっくりと首を垂れ、その顔は艶やかな黒髪に覆われて
いる。
  「ど...どう...して...?」
  「ふははははははッ...不思議かね、流璃子?」
  絶頂時にがっくりと垂れていた耳元の唇が元気を取り戻し、流璃子の嘲弄を再開
する。
  「言ったろう?この世界に来てからの君の行動は熟知しているって。我が触手は
この世界の地面の隅々に張り巡らされ、情報を収集しているんだよ。」
  深く差し込まれたままの劣情の棍棒が、再び硬度を増していく。
  「君の能力は癒しの力だけじゃない。浄化の光ともいうべき白い光の事も知って
いるさ。直接の観測は我が触手網も消滅させられてしまうから無理だったが......ゴ
ッドサイダー三姉妹の『寝物語』が役に立ったよ。」
  くすくすとしのび笑う南の王。再び始まる律動。
  「あの時はベルゼバブがいなかったから屋敷への侵入も容易だった...君たちは
『首枷』で能力を封じられていしね...なかなかお楽しみだったね、流璃子...」
  ズンッ、ズンッ...!
  突かれるたびに双脚がビクッ、ビクッと弾け上がる。
  「んッ...んんッ...!」
  唇を噛みしめ、必死に耐えようする流璃子。
  「あッ...あふッ...ふあッ...はあああんッ...!」
  眞耶子も、意識を取り戻す。しかし、その表情は快感に惚け、開かれた唇からは
あえぎ声だけがこぼれてくる。
  「君の浄化の光を発動させるには、胎内に放たれる欲望の飛沫が必要なんだろう、
流璃子...」
  ズリュッ...クチュッ...ズニュッ...!
  二人の淫裂を責める灼熱の欲塊が、淫らな音を響かせる。
  流璃子は、快感に流されそうな心を必死につなぎ止めながら、眞耶子を見つめる。
無惨に押し広げられ、貫かれている眞耶子の股間からは、夥しい白い粘液がしたた
り落ち、花弁付近では泡立っている。
  「そう...眞耶子には我が分身を挿入し、心ゆくまで欲望を弾けさせたが...君に押
し入ったのは、触手を束ねてこしらえた、擬似分身さ...当然精液は出ないよ...ふは
ははっ!」
  絶望が流璃子の心をどす黒く染め上げていく。
  「ふッ...ふああッ...あはああんッ...んああああッ...!」
  完全に快感に流され、しどけない声を上げ続ける眞耶子。流璃子もつられるよう
に声を上げ始める。
  「あッ...ああッ...はあんッ...!」
  二人の声が重なっていく。
  「ふはははははッ...全ての望みを失ったところで、次の絶頂を迎えたまえ。これ
がとどめになるかな?もっとも...」
  ズリュツ...グシュツ...グチュッ...!
  次第に律動を早めながら、得意の絶頂に立つ南の王。
  「君の理性が完全に飛ぶまで、我が責めに終りはないのだよッ!ふはははははは
ッ!」
  「あッ...ああんッ...んんんッ...あはあんッ...ああああんッ...!」
  絶望が連れてくる快感に果てしなく押し流されていく流璃子。
  仰け反った頭をかろうじて戻し、眞耶子を見る。快感の波に翻弄されるその姿態。
  「あああんッ...お、お願いッ...ううッ...ま、眞耶子はッ...あああッ...眞耶子だけ
はッ、ゆ、許してあげてッ...あああんッ...わ、私のッ...ふあああッ...あはんッ...身
もッ...心もッ...あ、あなたにッ...んんんんんッ...さ、捧げッ...ますッ...からッ...あ
ああああんッ...!」
  「ふははははッ...この期に及んで...優しいなあ流璃子はッ!その心根に免じて、
二人とも仲良く取り込んであげるからねッ!ふははははははッ...!」
  「そ、そんなッ...うううッ...あはああああッ...!」
  最後の望みを踏みにじられ、耳に侵入してきた熱い舌の感触に、再び仰け反る流
璃子。
  その時、視界の隅に眞耶子の指先が見えた。
  虚ろな瞳で立て続けに喘ぎ声を発している眞耶子が、精一杯左腕を伸ばしている。
  「ああッ...ね、姉さまッ...流璃子姉さまッ...わ、私ッ...はああああッ...!」

 「あああんッ...ご、ごめんなさい、眞耶子ッ...わ、私ッ...あ、あなたをッ...た、
助けられないッ...許してッ...許してえッ...んあああああああッ!」
  とめどない快感に流されていきながら、流璃子も必死に右腕を伸ばす。二人の指
と指とが触れ合い、絡み合う。
  「ふははははッ...そうかッ...二人仲良く一緒にいくが良いッ...!」
  二度目の絶頂に向けて、激しい抽送が始まる。
  「さあッ、三人でもう一緒にいこうッ...そして一つになるのだッ...うおおおおお
ッ...!」
  「あああああんッ...も、もう駄目ッ...はあうッ...あんッ...い、いっちゃうぅッ
...!!」
  「はああんッ...きちゃうのッ...すごいのきちゃうのッ...あああああああんッ
...!!」
  三人三様の声が響く。そして。
  「流璃子ッ...眞耶子ッ...い、いくぞッ...う、うおおおおおおおおッ...!!」
  「ああんッ...うあああああッ...い、いくッ...ああああああああんッ...!」
  「はあッ?!...あああああああああああッ...!!」
  眞耶子の胎内に欲望が迸り、流璃子がそして眞耶子が絶頂に達する。繋いだ手が
強く絡み合う。その時。

 「!!...な、なにいっ...ば、バカなっ...!」
  絶頂の余韻にゆったりと浸ろうとしていた南の王が驚愕に震える。眞耶子の下腹
部から、あの白い光が生まれつつあった。急速にに膨れあがり、朱一色の周囲を白
く染め上げていく。
  「な、なぜだッ!流璃子には一滴もっ...!どうして眞耶子から浄化の光が生まれ
るのだっ...そんな...バカなあっ...!」
  玉座が消滅する。大広間の天井にまで達した光球は、なおも光を増しつつ巨大化
していく。
  「!!...そ、そうか...君は西の王に呑まれて...ゆ、融合能力を手に入れたと...そ、
そういうことかッ...!」
  「ぬうううっ...!ぬかったわっ...流璃子...君のいうとおり...眞耶子を解放して
いれば...策士、策に溺れるッ...!」
  館が白光に飲み込まれ、やがて紅い森までもが白光に消えてゆく。
  その時、南の王は、流璃子の裡に潜む存在を覚知する。
  「お、お前は...そうか...そういうことか...ふっ...ふはははっ...見事だ...見事だよ、
流璃子...こうなったなら...」
  南の王の意識が弱まっていく。消えていくその声は、最後にこう伝えていた。
  「...東の王も......同じく......倒すが......よい......」

 森林の中、紅い森があった場所にぽっかりと空いた大きな空間。取り残された全
裸の二人は、固く手を絡めあったまま、寄り添い、互いの体を支えあっていた。
  手を取り合ったまま立ちつくす二人に、彼方から大きく手を振って駆け寄る慎悟。
その背後からは鬼哭忍軍の影が続いていた。

(第三話終了)

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