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堕とされる牝(おんな)
〜Another Story Of “Hakugin No Delmo Sakusen”〜

第3章 踊らせられる牝

「う、うっ…う〜ん。」
藍華は眩しさと体の痛みに目を覚ました。
そして、まだ焦点の定まらないに瞳に、
大きな窓、机そして2つの白い服を着た人影が映る。
「ここは何処なの?」
そうつぶやきながら、起き上がろうとしたが、
痛みと体の不自由さにより起き上がれなかった。
未だ色濃く残るダメージが思考も鈍らせていた。
「あら、やっとお目覚め? でも、ちょっとそのまま待っていてね。
もう少しでこの書類に目を通し終わるから。」
机の真ん中に座る人影が言う。
声から、どうやら女性だということが分かったのだが、
窓から差し込む眩しい陽の光のため、どんな顔だかは影になっていて判別できなかった。
藍華は自分の置かれている状況がまだ理解できず、
一度、頭の中を整理しようと瞼を閉じる。
『大きな仕事を依頼され、なんか すごくあやしくて恥ずかしい検査を、
幼く可愛らしい少女にやらされて……』
「少女」「恥ずかしい」「検査」これらの単語が頭の中を駆け巡り、
藍華は、はっと目を見開く。
『そうだわ。デルモ達の罠にはまり、体の隅々まで調べ尽くされ、
更に、その少女に一方的にやれたんだわ。』
意識がはっきりするととも、屈辱感や、恥ずかしさも呼び覚まされ、
顔が上気し、ほのかに赤くなっていった。
そして、視界もはっきりしてくると、
もう一度、前に座っている白い服の女性を見詰めるのだった。
デルモゲニィでないことを願いつつ。

いちるの儚い希望は一瞬で消え去った。
その2つの人影はやはりデルモゲニィであった。
気を失っている間に、誰かによって救出されていることを期待したのだが、
現実は甘くない。
藍華は、溜め息をつき、聞こえないほど小さい声で呟いた。
「やっぱり、自力で脱出しないと駄目なようね。
まずは自分が置かれている現状を理解しないと。」
藍華は、2人の白デルモと向かい合うよう、
硬質で冷たい床の上に、無慈悲に横たえられていた。
『前に座る二人は、あまり出会ったことが無い白い制服のデルモゲニィね。
でも、この制服は良く知っている。
前にハーゲンに捕らえられた時、着せられたものだわ。
確か、ハーゲンが、デルモゲニィは色によって上下関係がはっきりしていて、
白は最も上の階級で、
美貌と能力ともに秀でた一握りのエリート集団だと言っていたわ。
確かに前にいる二人は、端麗な顔つきで、
女の私でも溜め息が出そうになる程の美人だわ。
また、2人の外見と表情から醸し出る雰囲気は、他のデルモゲニィとは明らかに違う。
座っているだけなのに、威圧感まで感じる。
この2人を相手にして、ここを脱出するのは骨が折れそうね。』
藍華の両手首は後ろ手にきつく縛られ、
足首も両足がぴったり貼り付くように縛られていた。
『これじゃあ起き上がれないはずだわ。』
服はいつもの赤いスーツであり、ご丁寧に靴までも、そのままにされていた。
このことは藍華にとって意外だった。
敵を捕虜にした場合、何を隠し持っているか分からないので、
裸にするか、捕虜用の服などに着替えさせるのが普通である。
事実、藍華は過去に何度かそのようなことを経験している。
もちろん、これは、デルモ達の対応がずぼらなのでなく、
隠し武器等はすでに1つ残らず全部抜き取られているのだ。
それほどまでにチェックに自信がある現れなのだろう。

藍華は、頭の方と足の方にある両側の壁に、大きな鏡があるのに気付く、
そして、鏡にうつる自分の姿を見て、更に驚くことになる。
乱れた髪が奇麗に整っているだけでなく、顔の汚れも拭かれ
化粧まで自分が施したようにされているのだ。
良く見ると服も、
捲くし上げられた裾や下ろされたショーツが元に直されているだけでなく、
きれいに洗濯され、ほころびも直っている。
体の痛みが、つらい現実であったことを物語っているにも関わらず、
まるで、リエとの戦いが夢であったかのようにさえ感じられた。
『至れり尽くせりね。』
藍華の口から僅かに笑みがこぼれる。

次に藍華は寝返り打ったりして、自分のいる部屋の隅々まで観察し始めた。
『部屋の広さは40畳くらいで、窓は前方の壁一面に はめ殺された大きなもののみ。
光の屈折具合から察するに相当分厚いわね。強化ガラスかしら。
また、空しか見えないこの景色を考えると、この部屋はかなり高い所にあるみたい。
窓からの脱出は無理そうね。
周りの壁はコンクリート、両側の壁には横幅4メートルほどの大きな鏡があるけど。
マジックミラーではないようだから割っても壁が出てくるだけね。
換気口はとてもじゃないが出入りできる大きさじゃないし、
脱出経路として使えるのは、やっぱり後方にある唯一の出入り口しかないけど、
しっかり指紋と暗証番号による電子ロック付き。
前にいる白い制服の2人以外に、銃やロッドを装備した黒い服のデルモが
部屋の四隅と出入り口に2人ずつの計10人。監視カメラが6台。状況は最悪ね。』
だが、こんな状況であっても、藍華は脱出を諦めていなかった。
この絶望的状況で、そのように思わせるのはオルタネートメタルの存在である。
事実、オルタネートメタルは何度も藍華のピンチを救ってくれた。
藍華はオルタネートメタルの疑似人格に密かに嫉妬し、
その力を使うことを嫌がりながらも、
一方では、『ピンチになれば助けてくれる』とその力に頼りきっていた。
この甘い考えが危険回避の思考を狂わせ、
何度も自らを窮地に陥らせていることに気付いていないのだ。
今回のリエとの戦いでも「逃げる」という選択肢をなかなか選ばなかったのも
この甘えによるものだった。
確かに、それでも今までは何とかなってきた。
しかし、今回はその期待が叶わないことを 藍華はまだ知らなかった。

エメラルドのように光り輝く、長く美しい髪の女性は
『対皇 藍華用 調教及び折檻方法の考察とその注意点』という名の書類を読み終え、
少しぬるくなった紅茶を一口含くむ。
床に無防備に転がる 哀れな美しき獲物を見ると、
口元に笑みがこぼれずにはいられなかった。
『この牝猫をどう苛めてあげようかしら。』
嗜虐心に体が熱くなっていくのを感じる。
そして、長い沈黙を打ち消すように、まな板の上の鯉となった藍華に喋り始めた。
「お待たせして、御免なさいね。どうしても目を通さなくちゃいけない書類があったの。
自己紹介がまだだったわね。
私はハーゲン様亡き後、デルモゲニィを率いている者です。
皆からは『司令』と呼ばれているわ。以後お見知り置きを。
また、気になっているかもしれないので教えておきますと、
今回の作戦を立案したのも私ですのよ。」
司令はそう言い、藍華に微笑むと、
傍らに座る、髪を肩の辺りで短めに揃えた、どこか憂いを帯びた印象のある、
もう1人の白デルモの方に目をやる。
「そして私の横に座る白デルモが『副官』ですわ。
貴方に会うのは2度目ですけど、『はじめまして』と言っておくわね。」
藍華は、はっとした。
『そうだわ。この2人、仕事を依頼しに事務所に来た女達だわ!
何てことなの! 未だに私たちを目の敵として襲ってくるデルモ達のリーダーと
あんな近くで会っていたなんて。
ちゃんと依頼主のことを調べていれば、こんなことには…。』
藍華は自分の迂闊さは悔やみ、下唇を噛む。
「自分の置かれている状況は大体理解できて?」
司令は、悔しさで肩を震わす藍華を冷淡な瞳で眺めながら更に言葉を続けた。
「ええ。大体は。」
藍華はなるべく毅然とした態度を取る。
こんな状況でも、
いや、こんな状況だからこそ、相手に屈服したり、媚びた態度をとりたくなかったのだ。
「そう。良かったわ。それじゃ…」
司令は近くの黒デルモに目をやり、
「ミス藍華の縄を解きなさい。」
そう命令した。
「えっ! 良いのですか?」
命令を受けた黒デルモは、予想外の台詞に困惑する。
「大丈夫です。この聡明な女性は、今この場で暴れるべきでないことを理解しています。
ねえ? そうでしょう?」
司令は藍華の方に向き直り微笑みながら尋ねた。
「そのようね。」
藍華も負けじと微笑みながら返答する。
司令が言うように、確かに、りおん達の状況が分からぬまま、
行動を起こすのはあまりにも危険だった。

拘束を解かれた藍華は立ち上がり、目の前に座る女性を睨むように見詰める。
『この女の丁寧すぎる口調、危険ね。』
藍華は、司令の冷静で落ち着いた態度の奥に、
ドス黒い感情があるのをヒシヒシと感じていた。
「分かっていると思いますが、貴方の武器は全て没収させて頂きましたわ。」
「でしょうね。」
藍華は、不安や動揺等の感情を悟られない様、強気な口調で答えた。
『いいわ。その気丈な態度。それでこそ、陵辱のし甲斐があるというものだわ。
そのお高くとまった美しい顔がいつまで持つかしら。フフフ。
すぐに、その面を泣きべそに変え、
無様にヒイヒイ言わせて、更に命乞いまでする様にしてあげるわ。』
司令は、体が燃えるように熱くなっていくのを感じる。
皮肉にも、藍華の気丈な態度が、デルモ達の嗜虐心をくすぐり、
藍華への責め苦をより激しいものへと変えるのであった。
「何か聞きたいことはあるかしら?」
「りおん達はどうしたの?」
藍華は、司令の言葉の後、ほとんど間を空けずに、その質問をした。
藍華にとって、何よりも気がかりなことは、りおん達の安否であった。
「別室で丁重にもてなしているわ。
貴方が変な気が起こさなければ、命の保証はいたします。」
『人質というわけね。』
藍華は、司令に聞こえない程の小声でポツリとつぶやき、すぐに次の質問をする。
「私はどのくらい眠っていたの? ここは何処なの?」
「丸1日ほどよ。ここは私達デルモの秘密基地の一つと言っておくわ。
昨日いた所とは、また別の場所よ。」
「そう分かったわ。これから私達をどうするつもり?」
「それはこれから少しずつ分かっていくわ。でも、安心して殺すつもりはないから。」
『だって折角手に入れたおもちゃなんですもの、
簡単に壊しわたりしないわ。たぁ〜っぷりと可愛がってあげるから。』と
司令は心の中で続けた。
「昨日のデータはどうしたの?」
藍華は顔を少し赤らめながら尋ねた。
「何のデータのことでしょう?」
わざと分からないふりをする司令に、藍華は苛立ちを覚え、吐きつけるように言った。
「私の体を調べたものよ!」
「ああ、あれのことでしたのね。
もうすでにコピーしたものを私達デルモゲニィの本部基地に送ってあるわ。
貴重な資料として色々と利用させて頂くわ。
外部に漏らすかどうかは貴方の態度次第ね。
他に何か聞きたいことはあります?」
「もう、いいわ。」
りおん達と、体の中までも調べられているあの恥ずかしいデータが、
デルモ達の手にあることを知り、
藍華は、見えない首輪や枷を付けられたような感覚を受け、
ここから脱出することの難しさを改めて実感した。

「それでは、こっちの番ね。
報告によると、貴方の体って胸やお尻は豊満なのに均整が取れていて
芸術的なほどの美しさらしいわね。」
司令は、そう言うと、藍華の体を頭の天辺から爪先まで、じっくりと舐めるように見た。
「誉めて頂いて、うれしいわ。」
藍華は、これから起こることに一抹の不安を感じるが、
なるべく動揺しないように凛と答える。
「それでは、今この場で服を脱いで、裸になって見せて頂戴?」
「! そんなこと…」
藍華は予想していたとはいえ、この言葉に、
いや、この後やらされる恥ずかしい行為に激しく動揺した。
「どうしたのできないの? 別にいいのよ、やらなくても。
それならこっちにも考えがあるから。」
司令はそう言うと、電話に手を掛ける。
『まさか、りおん達に…』
りおん達を人質に取られている今、どんなに屈辱的な命令であろうとも、
藍華に拒否することを選ぶ余地などなかった。
「待って! わかったわ。脱ぐわ。」
藍華は足元に目を落として、言い渡された恥ずかしい命令に従うことを誓うが、
それでもなお、司令は受話器を取り、どこかに連絡を取ろうとした。
「待って! りおん達に手を出さないで!
もう決して逆らわないから。お願い。やめて!」
藍華は必死に懇願するが、司令は、それを無視して、電話の向こうの相手と話を始める。
「…ええ。…そうよ。お願いします。待っているわ。なるべく急いでね。」
藍華は、しばし呆然と立ったままだった。
「ちょっと待っていてね。もうすぐ、この部屋に来るから。」
「お願い! りおん達は許して! 何でもするから。この通りよ。」
藍華は見栄を捨てて、その場に跪き土下座して嘆願をするのだが、
司令は、何も答えず、絶望の表情を浮かべる藍華の姿を見て、ほくそ笑むだけだった。

「失礼します。」
背後から聞こえた声の方に、藍華は素早く振り向く。
プシュー。
開いたドアからは、紅茶を乗せたワゴンを押す黒デルモが1人入って来るだけだった。
予想外の光景に、藍華は床に座ったまま口を少し開き、
その黒デルモが司令と副官に紅茶を入れ直しているのを、きょとんと眺めていた。
「どうしたの脱ぐんじゃなかったかしら?」
司令は優雅に紅茶を飲み、固まったままの藍華を嘲るように聞く。
藍華は、小馬鹿にされていることが分かり、怒りと恥ずかしさに顔を真っ赤にさせる。
「どうしたの私を見詰めたまま、動かないで。…あら、御免なさい。
ビデオに撮って欲しかったのね。それならそうと言ってくれないと。」
司令は黙ったままの藍華にそう言うと、ビデオカメラを机の上に出し、回し始めた。
「どう? これで満足。さあ、思う存分脱ぎなさい。」
「なっ、何を言っているの?! 貴方! 誰がそんなことを!
私はビデオに撮ってくれだなんて、思ってなんかいないわよ!」
藍華は取り乱しながら、司令に向かって激しく言う。
「違うの? だったら何故、まだ脱がないのかしら?
自分で脱ぐと言ったんだから、とっとと脱ぎなさい。
それとも、まだ私達に反抗しようっていうの?」
藍華の言葉に、司令は顔に冷酷な表情が浮かび上がらせる。
「くっ、分かったわ。御免なさい。今すぐ脱ぎます。
だからビデオだけは許して下さい。ねえ?」
藍華は悔しさに顔を俯かせて、拳を握り締めて肩を震わすが、
今、司令の命令に逆らっても、更に酷い目に合わされるだけだと観念し、
哀れみを乞うように司令へ視線を送り、許しを願った。
「駄目よ! 私はもう撮ると決めたの。すぐ脱がない貴方が悪いのよ。
それに何でもするんでしょ? 逆らわないのよね?
確か、さっきそう言ってたわよねぇ? ウフフッ!」
藍華は口惜しそうに歯ぎしりをして、立ち上がり無言のままジャケットから脱ぎ始めた。

「そうそう、そうやって大人しく脱げばいいのよ。
まずは上半身から裸になりなさい。スカートはまだ脱いじゃ駄目よ。」
司令達は、今まで散々手を焼いてきた憎き強敵が堕ちてく様に、嗜虐の笑みを浮かべる。
藍華は、最早、デルモ達の思い通りに動く操り人形に成り果てていたのだった。





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