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堕とされる牝(おんな)
〜Another Story Of “Hakugin No Delmo Sakusen”〜

第7章 思い知らされる牝

「うっ、うっ、グスッ! グスッ!くすん…」
溜まっていたものを出し切っていたが、
藍華は放心状態で腰まで捲くれ上がったスカートすらも直さず、
ただ、大きく股を開き、はしたなく秘部をさらけ出したまま、むせび泣いていた。
今の自分の姿を見られることに、恥ずかしさを超え、恐怖すら覚え、
藍華の瞳からは幾筋もの涙が次々と零れ床を濡らしていく、
司令は、藍華の側に立ち、
床の上に仰向けで転がっている無様なその女の姿を蔑みの目で見下ろしていた。
「勝負ありって所かしら?」



あまりのショックに意識はボーッとしていたが、
司令の言葉は藍華の胸に深く突き刺さり、
自分の不甲斐なさと惨めさ、
そして自分を見る周りの視線が重圧となって体に圧し掛かる。
「お返事がないようですけれど、どうなさいます、ミス藍華?
まだ続けますか? それとも、負けを認めて降参なさいますか?」
藍華が敗北したことは、藍華自身が一番分っていた。
だが、司令は敢えて、それを藍華の口から言わせようというのだ。
部屋にいる全ての者が、藍華が次に発する言葉に注目し、
水を打ったような静寂が幾拍も流れていく。

「…私の負けです。…降参します。」
弱々しく哀れな女性の声が無音の時間に終わりを告げた。
誰とも目を合わせることが出来ず
床に視線を落としたまま藍華が司令の問いに小さい声で答えたのだった。
「それは、お仲間の開放は諦めるということですか?」
藍華はその質問に暫く黙ってしまうが
粗相までしてしまい、しかも未だに床から起き上がれず、ただ泣くだけの自分と、
その姿を見てせせら笑う相手、
いくら司令との戦いにりおんの身の安全が掛かっていたとは言え、
これ程までに立場の差を突き付けられては、負けを認めるしかない。
藍華は、きつく目を閉じ、震える唇をゆっくり動かしていく。
「……は、はい…諦めます。」
言い終わると、藍華は更に激しく泣き始めた。
「ウフフフ。お仲間を救えなくて残念でしたわね。
しかも、その大切な方達の見ている前で、
こんな醜態まで晒す羽目になるなんて同じ女性として同情しますわ。」
司令の言葉は、藍華の心に出来た屈辱感や敗北感と言う名の傷を、更に大きく広げ、
藍華を、より深い奈落の底へと突き落としていく。
藍華は自分の無力さと、弱い自分への悔しさに、
ただ激しく体を震わせ、そして声を大きくわななかせて泣き続けた。
先の戦いでは、年端もいかぬ少女に完膚なきまで叩きのめされ、
今度は、女性として、これ以上ない痴態を晒した挙句、敗北の宣言までさせられたのだ。
続けて起こったこの2つの惨めな敗北により、
藍華は自分の中で、今まで積み重ねてきた自信が音を立てて崩れ去っていくのを感じる。

司令が顔を微笑ませ、暫く満足そうに、
無様な敗者の姿を眺めてから、自分の椅子に戻ると、
司令に代わり、1つの人影が、未だ動こうとしない藍華に近付き、顔を爪先で小突く。
「アッハッハッハッハー! お前はなんて恥じらいの無い女なんだい。
こんなにたくさんの人の前、それも敵である私達の前でお漏らしするなんてね。
ハハハハッ! すっきりとした顔までしちゃって、どうしようもない変態だね。」
ビアンカがビデオを片手に藍華の顔を覗き込んできたのだ。
「嫌、映さないで、こんな姿。……もしかして? ずっと撮っていたの?」
「もちろん撮ってあるわよ。あそこの毛を剃られるとこも、
恥ずかし固めをされ、お漏らしする姿もね。」
ビアンカの代わりに司令が答える。
「ひ、ひどい…」
藍華は、また目をつぶり、体全体で泣き出した。
だが、すぐビアンカに髪を掴まれ、上半身を引き起こされてしまう。
「良く見な! この水溜まりはお前が作ったんだ! ここはお前のトイレじゃないよ。
ほら! お仲間も、お前の見っとも無い姿に呆れ果ててるよ。見てみな。」
ビアンカはそう言うと、無理矢理藍華の顔をりおん達の方に向けさせる。
藍華を良く知る、りおんと郷造は、藍華の醜態という、
この俄かに信じ難き光景にショックを隠しきれず、
呆然となり目を大きく見開いて藍華を見つめていた。
「いやっ…見ないでっ…私のこんな姿見ないでぇ!
…社長…りおん…そんな目で、私を見ないでぇ…」
藍華は、今、瞳に映った りおんと郷造の顔が頭にこびり付く前に、
記憶から消し去ろうと激しくかぶりを振る。
その姿は、まるで今、起こっていることが全て夢であり、
現実じゃないと否定しているかのようでもあった。
ビアンカは、藍華のその様子に満足そうに高笑いを上げ、
もう一度藍華の顔を、床に出来た恥ずかしい水溜りの方に向けさせる。
「それじゃあ、奇麗に掃除してもらおうかしら? お前の舌でね。
ほら! 早く舐めて奇麗にしな!」
藍華は、一瞬ビカンカを睨み付けるが、今の心身とも傷ついた藍華に逆らう力などなく、
「そんな浅ましいことできないわ。どこまで辱めれば気が済むの?
お願い。それだけは許して頂戴。 後生ですから。ねえ?」
悔しさを堪え、出来うる限り媚びて、惨めに哀願した。
「お前が出来ないなら、そこの眼鏡娘にやらせるよ。それでもいいのかい?」
「それは…」
「はっきりしない女だね。いいからとっと舐めな!」
「アッ!」
痺れを切らしたビアンカに、後頭部を力一杯押され、
藍華は自分の作った水溜まりに顔の側面を押し付けられてまう。
髪が床に出来た敗北の証に触れて少しずつ濡れていく。
「アグゥ! 分かったわ。舐めるわ! だから、手を放して!」
「チッ!」
ビアンカが舌打ちをし、藍華の髪をクシャクシャに乱してから、手を放すと、
藍華は両手を突き上半身を少し起こし、水溜まりと向き合うよう体勢を直して、
まじまじとそれを見詰めた。
『これを全部舐め取らなければならないの?
そんなことしたら、私どうにかなっちゃうわ。
ああ、私なんで漏らしちゃったの? しかも、こんなにたくさん。』
水溜まりは哀れな女の顔を映し出していた。
藍華は「舐める」と言ったが、それをする覚悟が出来ず、固まったまま動けなかった。
「早くやんな!このお漏らし女が!」
苛々する女の声にビクリとし、藍華はおずおずと舌を出して、
顔をゆっくりと水溜りに近付けていく。
体は小刻みに震え、滴る涙が水溜りを少しずつ大きくしていった。
すべての者が固唾を飲んで、藍華のその動きを見詰めていた。

「ダメー! ヤメテー! 藍華お姉様ー! そんなことしちゃダメー!」
藍華の舌が水溜りに触れそうになった時、
甲高い悲鳴のような叫びが上がり、その部屋にいるすべての者の動きを止めた。
それを発したのは、リエであったのだ。
誰もが自分の目を疑う。
リエは司令の前に転ぶように走り寄り、土下座をして懇願し始める。
「お願いです。許してあげて下さい!
こんなの酷すぎます。お願いします。許してあげて下さい。」
司令は、必死に頭を下げるリエの姿を見詰めながら暫く考え込んだ後、溜め息をつき、
「……ふー。分かりました。
今回の作戦の功労者であるあなたの願いを聞き入れましょう。
でも、掃除はやって頂くわよ。
  ミス藍華に雑巾を貸して上げなさい。」
そう答えると、1人の黒デルモに雑巾を出すように促す。
ビアンカが苛立ちながら、その黒デルモから雑巾を奪い、
藍華の顔にそれを投げつけてきたが、
藍華は、リエの思いもよらなかった行動に驚き、雑巾を避けることを忘れ、
リエを見詰め固まったままだった。
「ありがとうございます。」
リエは司令に深々と頭を下げると、瞳に涙を浮かべ、藍華へ走っていき、抱き付く。
「ゴメンナサイ! 私どうかしていました。 ゴメンナサイ!
今すぐ関節も入れ直しますので、横になって下さい。」
ガキッ!
リエは素早く藍華を横に寝かせ関節を入れ直し、
腰まで捲くりあがったままだった藍華のスカートも直すが、
すぐに髪をビアンカに掴まれ無理矢理立たされて藍華と離されてしまう。
「リエ! お前、何やってんだ!」
司令も厳しい視線でリエを睨み付けていた。
「リエ。そこまでしていいとは、言っていないわよ。
貴方には少し教育が必要なようね。連れて行きなさい。」
台詞は表情は静かだが、司令の言葉にはリエに対する激しい怒りが感じられる。
リエは、両脇を黒デルモに抱えられ、部屋から連れ出されて行くが、
何かを言おうと少し口を開けたまま、
最後までずっと、涙で潤んだ瞳で藍華を見詰めていた。
「リエ。あなた…」

……

リエの行動により、異様な空気が流れる部屋の中、
藍華は、自分が作った恥ずかしい水溜りを、一言も発さずに拭いていた。
あらかた拭き取ると、副官と呼ばれる女が、藍華の前に立ち、一枚の布を落とす。
「これで、仕上げにもう一度奇麗に拭きなさい。」
その布は、藍華が先程取り上げられたブラウスだった。
藍華は、口惜しそうに、副官を睨み付けるが、刃向かうだけ無駄だと観念し、
言われるがまま、自分のブラウスを雑巾代りに使い自分の小水を拭き始める。
「貴方がやった不始末なんだから、貴方のもので拭くのは当然でしょう?」
藍華とは対照的に満足な表情を浮かべる副官の高らかな笑いが、藍華の心と部屋に響く。
この耐え難き屈辱に、藍華の体は震えていた。
そして、床を拭き終ると、藍華は副官の顔を見上げ、何も言わずに、また睨み付けた。
「まあ、それだけ奇麗にしたらいいでしょう。
それじゃあ、今度は私と遊んで頂こうかしら?」
副官はそう言うと、藍華の襟を掴み無理矢理立たせて、
一瞬、藍華に微笑みを送ると、
その台詞と笑みに戸惑いを見せた藍華の頬に拳を叩き込む。
「ガッ! アグッアッ。」
股関節を痛めているため踏ん張ることが出来ない藍華の体は
殴れた拍子に吹っ飛び、無様に床を転がっていく。
副官は、床に突っ伏したままの獲物にゆっくり近付き、また体を持ち上げ、
「どうしました? ミス藍華? 戦いは、もう始まっていますよ。」
そう言うと、今度は腹に膝蹴りを入れた。
「ウッグッ」
藍華はその場でうずくまるが、
すぐさま、顎を蹴り上げられ、仰向けに宙へ飛ばされ、床に叩きつけられてしまう。
「アゥゥゥ〜」

藍華には戦う力などもう無く、副官の責めに、ただ悲痛な叫び声を上げるしかなかった。
それでも何とか立ち上がろうと手足に力を込めるが、
痛みと疲労で四つん這いなるのがやっとだった。
リエに直してもらったスカートの裾も、何時の間に、また腰まで捲くれ上がっており、
大人の色香に満ちた臀部と、繁みを剃り取られた哀れな秘部を晒していたが、
裾を直すことも、隠す余裕もなかった。
藍華は息を切らしながら、何とか副官の顔を見上げるが、
藍華の瞳に先程の様な気迫はない。
副官はそんな藍華をせせら笑うかのように口元を歪ませ、
藍華の無防備な腹部に鋭い蹴りを入れる。
「はぅぅぅ! ぅく!」
震えながらも何とか立たせた手足は力を失い、
藍華の体は無惨に床へと崩れていった。
副官は、床の上で悶え苦しみながら咳き込む藍華を冷ややかに見下ろし、
つま先を上手に使い藍華の顔を自分の方に向けさせる。
「調査によるとミス藍華、
貴方って、1対1の格闘では、ほとんど負けたことないらしいけど、
そんな貴方が、良い様に甚振られるのは、どんな気分なのかしら?
やっぱり悔しい? それとも、今、現実として起きていることが信じられない?」
藍華は、息苦しそうに荒々しい呼吸をするのがやっとで何も答えられなかった。
「どんな気分?」
副官は一瞬ニッコリと笑いそう言うと、
髪を荒々しく掴み引っ張り上げ、無理矢理、膝立ちの格好にした。
「あっ! イッ! キャウゥ〜〜ッ!!」
頭部を引き千切られそうな鋭い痛みに藍華は甲高い悲鳴を上げ、
「ぅぐぅぅ! 離してッ!」
藍華は副官の手を髪から外そうと、爪を立てて副官の手首を強く握り締めるのだが、
その瞬間、副官の顔が恐ろしい形相に変わり、
「汚い手で、気安く触るんじゃないよ。この牝ブタが!」
ゴス!
「ハグゥ!」
そして、副官は普段の涼しげな顔からは想像出来ない汚い言葉を吐きながら、
藍華の首筋に手刀を落とす。
目の前が暗転する程の重い衝撃に、副官の手首を掴んでいた手の力が緩み、
藍華はそのまま固い床へと前のめりに倒れ込んで顔と胸を叩きつけることとなった。

藍華は大の字になって伸びていたが、副官の責めに容赦など無い。
副官は、すぐ様、冷徹な笑みを浮かべ、
ハイヒールの細長い踵が深く食い込む程強く藍華の尻を踏みにじって追い討ちを掛ける。
「イぎぃぃぃぃ〜〜!」
全身に電流が駆け巡ったかのような痛みに、
藍華は、混濁し薄れ掛けていた意識を無理矢理引き戻され、無様な悲鳴を上げた。
「こんな風に、痛い目に合いたくなかったら、質問には、すぐ答えなさいね。」
藍華は何とかして、副官の踵から逃れようとするのだが、
踏み付けてくる足を押し返すことはおろか、
這って逃げることすら出来ずに、もがき続けるしかなかった。
今まで戦闘に負けたり、敵の手に落ちたりしたことはあったが、
ここまで一方的に甚振られたことはなかった。
しかも、自分を慕ってくれる りおんと、育ての親である郷造が見ている目の前でなんて。
藍華は、かつて感じた事ない程の重圧的な無力感にさいなまれていた。
今までは、ただ相手や運に恵まれていただけで、
本当は、何も出来ない、か弱い生き物なのだとさえ考えるようになっていた。
もちろん、本当の藍華は、か弱い生き物などでは決してなく、
誰もが認め、憧れる強い女性である。
リエと司令に負けたのは、この2人が藍華の技やクセ、
そして弱点までも調べ尽くしていたからであり、
同じ条件で戦っていれば負けはしなかっただろう。
また、藍華は、どんな時でも、りおんや郷造のことを心配し、
自分のことよりも大事に考える強い心の持ち主でもある。
だが、デルモ達の責めは、
藍華に自分が決して弱い人間でないことを思い出させる隙を与えない程苛烈で、
藍華の精神を極限まで痛めつけていたのだ。
藍華は、暫く、何とかして、
ハイヒールでお尻を踏まれるという屈辱から逃れようとあがいていたが、
次第に、その意志は萎え、ただ体を小刻みに震わせるだけになっていった。

副官は、抵抗することを完全に諦め動かなくなった藍華の髪を掴み、
無理矢理立ち上がらせ、向かい合うようにさせた。
髪を引っ張られる痛みに、藍華は、また副官の手首を掴もうとするが、
先程のことが頭によぎり、寸での所で、腕を引っ込めてしまう。
もう藍華は気持ちでも完全に負けていた。
藍華の足や腰には、ほとんど力が入っておらず、ガタガタ震えと
副官に髪を掴まれていなければ、立っているさえままならぬ状態だった。
副官は、苦痛に顔を歪ませる藍華に、冷淡な笑みを浮かべて話し掛けていく。
「もう1度質問するわよ。良い様に甚振られるのは、どんな気分?」
副官のこの問いに対して、藍華が弱々しく口を動かし無意識に発した言葉は、
言った本人である藍華も耳を疑うものだった。
「…も、もぅ…ゆるしてぇ…」
それは、どんな時も気高さを忘れない強さを持った
あの皇藍華が言ったものとは思えないほど、あまりに情けない惨めな答えだった。
この言葉に、ある者はあざ笑い、また、ある者は落胆を覚えた。
そんな藍華を見ていることしか出来なかった、
りおんと郷造は悲しみに打ちひしがれていた。
そして、藍華のその台詞を最も近くで聞いた副官の反応は、
誰よりも容赦のない惨く残忍なものであった。
副官は、髪を掴んだまま、藍華の頬を殴り飛ばし、
更に、間髪も入れずに、その拳で逆側の頬に裏拳を食らわした後、
止めとばかりに、鳩尾に正拳を突き刺したのだ。
「あっ! アゥゥ! はぐぅぁぁ!」
副官が髪から手を放すと、藍華の体は膝から崩れ落ち、涎を撒き散らしながら、
副官の腰に抱きつくように倒れ込んでいった。

「足や服が汚れるから離れて下さらない?」
副官は眉1つ動かずにそう言うと、無情にも、
太腿に顔を埋めて休む藍華の頭を掴んで力任せに押しやり、自分の体から離れさせる。
藍華は尻や膝の内側を床にペタリと付けた格好で、へたり込むように座り、
力無く両腕を垂れ下げて、
閉じ掛けた瞼の間から僅かに覗ける瞳が床をぼんやりと眺めていた。
だらしなく開いた股の間から覗ける秘部が、これ以上ないほど惨めさを演出した。
「酷い有様ですわね。」
副官がうな垂れる藍華の髪を引っ張り、顔を上げさせるが、
藍華の瞳は虚ろなままで、目の前にいる副官の姿すら、まともに捉えていない。
「許して欲しい? 
でも残念ながら、まだまだこんなものでは私達の怒りは収まりませんし、
何より貴方の犯した罪は決して許されるものではありませんの。
何度、惨めに許しを乞い願っても、その度に地獄に叩きとしてあげるわ。」
副官のこの冷徹な藍華の耳にも入っていたのだが、それを理解する思考はなく、
ただ、締まり無く開いた口から哀れな呻き声を零すだけだった。
「…ぁぁ…ぁふぅぅ…」

藍華を一番近くで、そして一番長く見続けていた郷造でさえ、
これ程までに傷付き弱々しい藍華の姿は見たこと無かった。
大切な物を永遠に失ってしまうのではないかという不安と恐怖が心と体を満たし、
警鐘を鳴り響かせる。
「頼む! もう藍華に手を出さないでくれ! これだけすれば充分だろ!
もう許してやってくれ!
怒りが収まらないというのなら、代わりに私をいくら殴っても構わない。
殺されたって構わない。だから、藍華はもう許してやってくれ!」
郷造は、実の娘のように育ててきた藍華の痛々しい姿に、
心臓が握りつぶされるような苦しみを感じ、
身を乗り出して、デルモ達に涙ながらに許しを懇願した。
そして、藍華の痛めつけられる姿を見せられ、
顔をクシャクシャになるほど激しく泣いていた りおんも
郷造に続いて上ずった声で許しを乞いだ。
「ウッ! ウッ! エッグ! お願いぃ、藍華ざんをもうごれ以上苛めないでぇぇ。
わだしが、がわりになるからぁ! 藍華ざんを苛めないでぇぇ…お願いしますぅぅ…」
だが、2人が涙を流しながらした必死の懇願に対する副官の返答は、
あまりに冷かなものだった。
「麗しき家族愛ね。聞いてて虫唾が走ったわ。
血も繋がらない、こんな情けない女のために、よくもまあ、そこまで出来ますわね。
こいつみたいに惨めな姿になりたくなかったら、大人しく黙って見てなさいな。
貴方達の大事な大事な家族の無様な姿をもっとたくさん見せてあげるから。クス!」
郷造でさえ、この副官の冷徹な返答に、いや、それ以上に、
すでに虫の息である藍華を更に痛めつけることに
微塵の躊躇いも感じさせない目にたじろいでしまう。
しかし藍華を救うためには、気圧されてばかりいられない。
郷造とりおんは叫ぶようにもう1度、懇願をするのだった。
「頼む。私が代わりになるから、藍華はもう許してやってくれ!
お願いだ! 頼む! 許してやってくれ。」
「お願い。藍華さんをもう苛めないでぇ…お願いぃ。許して上げてぇ!」

郷造達の台詞を聞き、副官は、顔を冷徹な物から険しい形相へと変え、
「しつこい人達ですね!
そんなに言うのでしたら、この女と一緒に3人纏めて甚振ってやるよ!」
そう怒鳴りつけると、拳を固く握り締め、りおん達の方に向かって歩み出す。
その瞬間、
「ま…待って…」
2人の危険を察知したことによってか、
りおん達の声を聞いても混濁したままだった藍華の意識が、突然、回復する。
「待って! お願い。2人には手を出さないでぇ。
私が2人の分も代わりに責め苦を受けるから。どんなことでもするから。
ですから2人にだけは手を出さないでぇ! お願いします。」
ほとんど気を失いかけていたはずの藍華が発した、思いもよらぬ台詞に、
全ての者が驚き、動揺を隠せずにいた。
「あ、藍華?」
「藍華さん!?」
藍華は、自分を心配そうに見つめる りおん達に目をやり、優しく語りかけた。
「りおん、社長、いいのよ。私は大丈夫よ。
この位、何ともないわ。だから心配しないで。
それに、私がもっとしっかりしてれば、2人がこんな目に会う事はなかった。
全部私のせいなの。
私が社長の反対も聞かずラグの依頼を受けなければ。私がもっと強かったら。
私が不甲斐無いばっかりに、2人まで巻き込んでしまい、本当にごめんなさい。
だから、絶対2人に手出しさせないわ。私が何とかしてみせるわ。」
りおんと郷造は、自分達を気遣い1人で全て背負い込もうとする藍華の姿に
胸が熱くなるのを感じる。

だが、藍華のそんな崇高で献身的な志さえもあざ笑う残酷な言葉が藍華に言い渡された。
「可愛いこというではありませんか。
でも今の貴方に何が出来ると言うの? 教えて下さらない?」
副官は、そう言いながら、藍華の顎を人差し指で持ち上げ、自分の方に顔を向けさせる。
「クッ!」
藍華は、自分を蔑み見る副官を気丈に睨み返した。
「ま、待ってくれ! 私が代わりになるから藍華には、もう手を…」
郷造は、藍華を見下ろす副官の瞳に言い知れるぬ不安を感じ、
身を乗り出そうとした瞬間、2本のナイフが、目の前に突き出された。
側に立ち2人を監視していた黒デルモリーダーとビアンカは、
郷造の目の前に出したナイフをチラつかせながら恐ろしい台詞を吐く。
「大人しく黙って見てな! いいか、今度、ガタガタ騒いだら、
このナイフが、お前の大切な家族の体に突き刺さることになるよ。」
それは郷造の動きを止めるには、十分過ぎる物だった。
藍華を助けることが出来ない自分に郷造が歯軋りをすると、
「社長。私は大丈夫だから。心配しないで。」
藍華は、そんな郷造の心を察して、
郷造とりおんに暖かくそう言い、ニコリと微笑みを送る。
怖気づかないどころか、仲間を気遣う余裕まで見せる藍華の態度に
神経を逆撫でされた副官は藍華の顎を掴み、再度、顔を無理矢理自分の方に向けさせ、
更に、平手で藍華の頬をペチペチと軽く叩き始めた。
「ミス藍華、貴方って本当に面白い事言う人ですね。
今の貴方に出来ることといったら、私達に良い様に弄ばれ、
ただ見っとも無く悲鳴を上げるだけじゃありませんこと?
それも、私達が手加減して差し上げなければ、
何時、命を落としてもおかしく状況じゃなくて?
少しは身の程をわきまえてから、物事を言って下さらないかしら?」
藍華に言い返す言葉などなかった。
副官の言う通り、藍華には何も出来ないのだ。
幾ら意識が戻ったとはいえ、体の方が傷つけられすぎていて思うように動かず、
抵抗の1つも、まともに出来ない。
また、デルモ達の暴行に何時まで堪えられるかも分らなく、
例え堪え抜いたとしても状況が変わる訳ではない。
むしろ状況は悪化の一途を辿るのみである。
藍華は、冷淡な笑みを浮かべる副官を睨みつけるが、
すぐに悔しさに堪え切れなくなり視線を横に逸らしてしまう。

「他人の心配をする暇があったら、ご自分の心配をなさったらどうです。
スカートが捲くれ上がっていて、恥ずかしい所がさっきからずっと丸見えですよ。
ウフッ! 見っとも無い女。」
藍華とて、好きで秘部を曝け出しているわけでない。
直したくても直す余裕がなかったのだ。
それなのに女性としてこの上ない醜態を指摘され、藍華は恥辱に顔を真っ赤にさせる。
そして、藍華がスカートを直そうと裾に手をやった瞬間、
藍華の下腹部に副官のつま先蹴りが鋭く突き刺さり、
「ハゥゥ!」
藍華は眩暈を催し副官の足に倒れ掛かっていく。
だが、副官は、無常にも、また、荒く息をする藍華の髪を掴み、足から引き離した。
「さっきも言ったでしょ。服や足が汚れるから離れて下さらないって?」

副官の足から引き離された藍華の上半身は
両手を床に付いて支えているにも関わらずフラフラと揺れた。
その姿を見た副官からは溜息が零れ落ちる。
副官は、たった一発本気で蹴りを入れただけで、
気を失いかけてしまう面白みも甚振り甲斐のない藍華に興ざめしたらしく、
汚い豚でも見るかのように蔑み見て鼻で笑いながら、
「本当につまらない女。」
そう言うと、藍華の顔を掴み、
ビアンカと黒デルモリーダーの足元に転がるように投げた。
「この女は貴方達の好きな様にしていいわよ。」
この二人は、藍華への恨みが特に強い。
飢えた野獣の群れに仔ウサギが迷い込むようなものだった。
「たっぷりと苛めてやるよ。」
藍華の瞳が恐怖に歪むと、2人は待っていたとばかりに、
藍華の体と顔に蹴りを入れては踏みにじっていく。
「ウッ! ぐふっ。 アッグッ! イギィィ!」
リンチと呼ぶに相応しい凄まじき暴行により、
藍華から鈍い音やくぐもった叫びが次々と上がる。
「あっ! でも、殺しちゃ駄目よ!
せっかく手に入れたおもちゃなんですもの。 クスッ。」
副官は、冷やかにそう言い放つと、
藍華にはもう何の興味が無いと言わんばかりに背を向け、
自分の椅子に戻っていくのだった。





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