ノンタソさん

題名:「パズズ教団に潜む淫獣」

完結編

第九章 再開と言う名の悪夢
  流璃子が囚われてから、すでに十日が経っていた。
「そろそろ始めようかしら・・・。」
  リリスは親衛隊を連れ立ってある扉の前に立った。親衛隊が扉を開けると、中は光のな
い漆黒の闇であった。親衛隊にライトを照らさせ、リリスは奥へと進んでいった。
「久しぶりねえ、流璃子。気分はどうかしら?」
  部屋の奥には、十字架に貼り付けられていた流璃子がいた。この部屋に監禁されて以来、
何一つ口にしていなかった。食料も、そして水さえも。
  流璃子の表情はすっかり変わり果てていた。肌はかさかさになり、頬はコケ、脂ぎった
髪が額に張り付き、唇は紫に変色し、眼球が飛び出しそうなくらい目は隆起していた。あ
の美しかった流璃子とは、まったく別人のようになっていた。
「・・・・・」
「何も言えないのか、それとも言わないのか・・・。おい、拘束を解いてやれ。」
  拘束を解きリリスが親衛隊に両脇を抱えられた流璃子の髪をつかむと、流璃子は意識を
取り戻した。
「・・・リ・・・リリ・・・ス・・・」
「久しぶりね。じっくりと考えて、話す気になったかしら?」
「・・・・・・」
「そういうことね。話せば水を飲ませようと思ったのに。」
「み・・・・みず・・・を・・・」
  今の流璃子にとって、何よりもほしいものだった。それゆえあれほど強かった意志が揺
らぎ始めた。
「か・・隠れ・・て・・いる・・場所は・・・」
「さあ、どこなの!霊気たちはどこにいるの!」
  霊気・・・その名前を聞いたとき、流璃子はわれに返った。仲間たちの顔が頭の中に浮
かぶ。そして、わずかながら力が湧いた。
「・・ゴッド・・サイダーたちが・・・お前を・・・」
  流璃子の抵抗にも、リリスはうろたえるどころか、少し満足したような表情を見せた。
「言わないことも予想はしていたからねえ。準備にぬかりはないわ。絶対に言いたくなる
から。」
  リリスたちは流璃子をある部屋に運んだ。そして両脇にある柱につながれている鎖と手
錠でつなぎ、大の字にして立たせた。
「今から面白いものを見せてあげるわ。」
  うなだれたままの流璃子にアイマスクをかけると、親衛隊に何かを運び込ませた。どう
やら人間のようだ。一人は後ろでの上半身を縛り上げて吊るした。そしてもう一人は両腕
を左右に広げたまま、天井につながれている縄で手首を縛った。
「お楽しみをはじめるわよ。」
  リリスは流璃子のアイマスクをとった。頭を上げた流璃子は、信じられない光景を目に
した。
「紗耶香・・・綾乃・・・どうして・・・」
  流璃子は自分を慕っていた二人が、この教団内にいること、しかもボロボロにされてい
ることが、信じられなかった。
「二人ともお前を助けたったの。しかも紗耶香ちゃんなんかゴッドサイダーと一緒になっ
て暴れていたのよ。だからお前に会わせてやろうと思ってね。」
「流璃子さん・・・ごめんなさい・・・」
「勝手な・・こと・・ばかりして・・・・ごめんなさい・・・」
二人は流璃子に助けを求めるどころか、自分たちが迷惑をかけたと反省を口にした。
(自分が囚われたから・・・いや、自分に出会っていなかったら、二人はこんな目にあう
ことはなかったのに・・・。)
流璃子は泣きたかった。しかし乾ききった流璃子から、涙は流れなかった。
  リリスは流璃子にボールギャグをかませると、綾乃の前へ歩いていった。
「さあ、流璃子の代わりに答えなさい。」
「何も・・・答えることなんて・・・ありません・・・」
  綾乃はおびえながらも答えようとはしない。すると、リリスは親衛隊に鋭い凹凸のつい
た板と、かなりの重さと思われる石版を用意させた。それを見た綾乃は、何に使うのかは
わからなかったが、自分に苦痛を与えるものであることは理解できた。
「生意気な小娘にはお仕置きしないとね・・・。」
  親衛隊は綾乃をその板の上に正座させると、足のうえに石版を置いた。
「くっ・・・」
  苦痛に顔をゆがめながらも、悲鳴も上げず耐えていた。
「や・・・やめてっ!綾乃・・・綾乃ーーーー」
「やかましい!!!!」
  叫ぶ紗耶香に、リリスは顔面を殴りつけた。紗耶香はぐったりとして声を上げなくなっ
た。
「叫んでほしいのは綾乃ちゃん、あなたよ。」
  親衛隊はさらに2枚の石版を乗せた。綾乃は大きく目を開くも、悲鳴も上げず耐えてい
る。
「1枚20㎏の板なのに、痛くないの?」
  リリスは石版を踏みつけ、さらにゆすりだした。
「うぐっ・・・」
  綾乃は小さくうめきながらも耐えていた。
(これ以上流璃子さんに迷惑をかけるなんて、そんなことできない。それに紗耶香だって
私以上につらい目にあってきたんだから。)
  歯を食いしばり耐える綾乃を見て、リリスは紗耶香の方へ歩き出した。
「あの子にはしばらくああしていてもらいましょう。どこまで我慢できるかしら。その前
にあなたにお仕置きしようかしらねえ、紗耶香ちゃん?」
  リリスは数本の5寸釘を手に取った。紗耶香はただおびえるだけだった。そして紗耶香
の左の二の腕をつかむと、釘を突き刺した。
「ああっ・・・くぅ・・」
  鋭い痛みに声が漏れる。
「さあ、話しなさい。それとももっと刺されたい?」
「お前に話すこと?私の好きなバスケットの話でもしようか?」
  紗耶香は脂汗を流しながらも、笑みを浮かべ挑発するかのように言った。すると、リリ
スの目の色が変わった。
「所詮流璃子がしつけたガキどもね。私にたてついたらどうなるか思い知らせてやる。」
  リリスは紗耶香の右の二の腕、両足の太ももに釘を刺した。
「ぎゃあぁぁぁ・・いっ・・・いたあああぁぁぁ・・・」
  紗耶香の悲鳴が響き渡った。流璃子と綾乃はただ見ていることしかできなかった。
「ほらほらっ、まだ終わりじゃないよ。」
  すると、リリスは紗耶香の両乳房にも釘を刺した。
「ひぎぃぃ・・・あうぅ・・・」
  紗耶香は力尽きたかのように頭をたれ、失神した。
「おねんねにはまだ早すぎるぞ。」
  リリスは紗耶香に何度か平手打ちをすると、紗耶香は意識を取り戻した。
「絶対に・・・お前らは・・・許さない・・・」
  紗耶香はリリスを見るなり、そう言い放った。リリスは親衛隊に次なる準備をさせた。
「何に使うか、大体想像できるわね。大事なところを徹底的に責めてあげるから。」
  紗耶香は両手を開いたまま吊り上げられると、足を曲げた状態で縛られ、ひざに縄を巻
かれた。
「さあ、乗馬の時間よ。」
リリスの指示で、三角木馬の上に降ろされた。
「くぅっ・・・」
  太ももではさんで耐えていた。しかし親衛隊は両膝をつなぐように縄をつなげると、リ
リスは重りをつけた。無常にも紗耶香の体は沈み、木馬の背が紗耶香の秘部を直撃した。
「ぐあああああーーーーー」
  その悲鳴は、もはや少女の声ではなかった。紗耶香の表情は、涙と、脂汗と、よだれで
いっそう無残なものとなっていた。
「話せばこんな地獄の苦しみから逃れられるのよ。話してごらん。」
「いやだ・・・父さんや母さんを殺したお前なんかに・・・」
  紗耶香はリリスをにらみつける。リリスはさらに恐ろしい表情になった。
「だったらもっと苦しめ!」
  親衛隊は木馬を大きく揺らしだした。
「ぐぎゃああああぁぁぁぁーーーー・・・・」
  断末魔のような悲鳴を上げ、紗耶香は失神した。涙を流し、白目をむき、脂汗を流し、
よだれをたれ、痙攣している。失禁した尿が、足を沿うように流れている。
「ちょっとやりすぎたみたいね。」
  リリスは満足したような表情をしていたが、綾乃のほうを向くと、表情が一変した。
「その顔を見る限り、まだ話す気にはならないみたいね。だったら紗耶香同様地獄へ落と
してやるわ。」
  リリスは木刀を持つと、綾乃の背中を打ち出した。
「ぐっ・・・ううっ・・・ぐうう・・・」
  綾乃は歯を食いしばったまま耐えている。やがて背中にはいくつものあざができた。
「フフフ、楽しませてくれるわね。」
  リリスは今度は鞭で打ち出した。皮膚が裂け、血が滴りだした。
「あぐぅ・・・ハァハァハァ・・・・」
  鞭打ちが終わり、少しだけ開放された。しかし足を襲う激痛は休むことなく襲ってくる。
「霊気さんたちが・・・絶対に・・助けてくれる・・・。だから・・・それまでは・・絶
対に負けない・・・。」
涙を流しながら、綾乃は決意を口にした。
「本気で霊気が助けてくれるとでも思っているの?何も知らない小娘が。それよりも、あな
たの悲鳴が聞きたくなったわ。」
  親衛隊は桶に水を汲んでくると、その中に大量の塩を入れた。
「お清めしてあげるから、感謝しなさい。」
  その水を、綾乃の背中から数回浴びせかけた。
「あぎゃぁぁぁ・・・ひいいいぃぃぃぃ・・・・・」
  白目を向き失神した。そのまま前のめりに石版に伏せるような格好になった。リリスは
親衛隊に指示し、二人を解放し、床に並べて寝かせた。
「お前たち、出番よ。」
  扉が開き、数人の女が入ってきた。全身ボンテージ、網タイツにハイヒ-ルという姿で
ある。女たちは二人を抱え上げると、部屋を出て行った。
「流璃子・・・今度はあなたの番よ。」
  鞭を持ったまま流璃子のそばに来ると、ボールギャグをはずした。
「二人に・・・何を・・する・・・つもりなの・・・」
  力を振り絞るように流璃子は言った。
「二人にはまだまだお仕置きが必要なの。これから処女を奪われ、何度も犯され、そして
痛めつけられる。そう、このように生まれてきたことさえも後悔するくらいね。まあ、お
前が話せばそんなことする必要もないけど。」
  流璃子は何もいえなかった。自分が話せば、世界を救うことができなくなるかもしれな
い。しかし二人をこのままにしておくわけにはいかなかった。
「早く話しなさいよ。二人はどうなっても言いわけ?まあ世界を救うための犠牲としては、
二人ぐらいは少なすぎるでしょうけど。」
「は・・・話すから・・・・二人を・・・・」
  流璃子はもう耐えられなかった。自分のことだったらどんな苦しみも耐えられるが、二
人が苦しむことには耐えられなかった。二人にとって流璃子が特別な存在であるように、
流璃子にとっても二人は特別な存在であった。
「フフフ、やっと話してくれるのね。さあ、言いなさい。」
  リリスが迫るも、流璃子はまだ沈黙のままであった。
「やっぱり話さないのね。二人だけじゃない、お前自身もたっぷり痛めつけてあげるわ。」
  リリスは何度も鞭を床に打ちつけた。
「や・・・やめ・・・あっ・・・・ぎぃやぁぁぁーーーー・・・・」
  リリスの鞭が、流璃子の衰弱しきった体を襲う。この世のものとは思えない痛みが、流
璃子に襲い掛かった。そして、いつまでも流璃子の悲鳴が響き渡った。

第十章 救出、そして・・・・
  あれから3日が経った。流璃子は地下牢にうつぶせになっていた。拘束するものは何も
ない。目の前には鉄格子が見える。水や食事も口にし、わずかながら体力も回復していた。
  あの後、すべてを吐かされた。体を襲う痛みと、紗耶香と綾乃を人質にとられ、耐える
ことができなかった。そして、服従を誓わされた。それから何度も洗脳するための仕打ち
を受けた。もはや身も心もボロボロだった。
  なにやら物音がする。しかし何の音だかわからない。足音が近づいてきた。流璃子は、
また洗脳が始まるのだろうと思った。
「流璃子さん!」
  聞き覚えのある声だった。顔を上げた流璃子の目の前に、ジェミニーがいた。ジェミニ
ーは鍵を壊し入ってくると、流璃子の体を抱き上げた。
「今みんなで総攻撃を仕掛けているの。もう心配ないわ。でもこんな目にあわせるなん
て・・・・ひどすぎる。」
  流璃子は安堵感から涙を流した。しかし次の瞬間、あることが頭をよぎった。
「さ・・・紗耶香と・・・綾乃は・・・・」
「大丈夫よ、今はもう外にいるわ。ずいぶんひどい目に合わされていたわ。」
  流璃子は手で顔を覆った。しかしジェミニーはその手をしっかりと握った。
「流璃子さんの責任じゃないの。これは私たちの責任よ。だから、教団を・・・」
「私を・・・霊気の元に・・・連れて行って・・・」
  ジェミニーをさえぎるように流璃子は言った。
「こんな体で何をするつもり。」
「パズズを倒すためには・・・あれしかないの・・・霊気と二人でないと・・・」
  ジェミニーは戸惑いながらも、流璃子の意志の強い目に押されるように、立ち上がった。
「さあ、いきましょう。あいつを倒すことが、われわれゴッドサイダーの任務なのだから。」
  二人は最終決戦の場へと駆け出して行った。

第十一章  戦いの後
  あれから3年後。世界は平和に見えた。あの決戦において、パズズは消滅した。そして
ゴッドサイダーたちも犠牲となった。生き残ったのは、デビルサイダーであった。世界は
恐怖に覆われていた。
  デビルサイダーが支配しているが、サタンはもういなかった。あの戦いは、デビルサイ
ダーが生き残るために仕掛けたものだった。現在はラスネール、そして記憶を取り戻した
リリスとアスタロトが支配していた。そして、それらをたばねているものは、霊気だった。
流璃子を捨て駒にしたのも、ラスネールと手を組んだのも、すべてこのためであった。
そして流璃子は、霊気の手の中にいた。しかし、あの戦いのダメージで今もなお意識を
取り戻してはいない。

ある夜、3人の女性が走っていた。デビルサイダーに追われていたのだ。そのうちの一人
が転倒した。
「へっへっへっ、もう逃げられないな。」
  デビルサイダーたちは3人を取り囲んだ。3人はただ泣くことしかできなかった。
「そろそろお楽しみの時間に入ろうぜ。」
  デビルサイダーが手をかけようとしたときだった。横から人影が現れ、デビルサイダー
を蹴散らした。
「早く逃げて。」
  女性たちは走り去った。
「何しやがんだ、てめえ。」
  その人物は、ゆっくりとデビルサイダーたちを見回した。
「ほお、よく見れば、こいつ女じゃねえか。しかも結構上物だぞ。」
  デビルサイダーたちは、獲物を狙う目になった。
「お前らのようなクズに相手にしてもらうほど、私は安くはないわ。」
  鋭い目つきでそう言うと、デビルサイダーたちは怒りだした。
「さっきはよくもぶっ飛ばしてくれたな、覚悟しろ!」
  一匹が襲い掛かると、その女はひじ打ちで弾き飛ばし、そのまま回転して蹴りを見舞っ
た。さらにそのほかのデビルサイダーたちも蹴り飛ばした。
「口ほどにもないわね。所詮は雑魚だから。」
  5匹いたデビルサイダーが一匹になった。
「お・・・お前は何者だ!」
「私を安く見ないで。お前たちに名乗る名前など持っていないわ。」
「くそおおおーーー」
  残りの一匹が襲い掛かった。しかしすばやい動きで腹部にパンチを入れた。デビルサイ
ダーは痛みにのた打ち回っている。
「わたしの手でほうむってあげるわ・・・」
女は腕を少し引いた。こぶしかうっすらと光りだした。
「やっ!!」
  デビルサイダーはこぶしで打ち抜かれると、跡形もなく灰になった。
「ふぅ。」
  一息ついたときだった。倒れていた一匹が突如として襲い掛かった。
「くらいやがれ!!!」
「やばっ・・・」
  次の瞬間、デビルサイダーは跡形もなく消えていた。
「油断は禁物よ、紗耶香。でもよくやったわね。」
「まあね。でもまだまだこれからだから。」
  デビルサイダーを倒したのは、唯一の生き残り・ジェミニーだった。そして、一人敢然
と立ち向かった女は、あの紗耶香であった。あの戦いの後、傷の癒えた紗耶香はジェミニ
ーと修行をしていたのだ。そしてその親友の綾乃は、今孤児院で働いている。しかし拷問
の恐怖によって、記憶を失っていたのだ。
「霊気を倒すまで、絶対に負けられない。」
  紗耶香の戦いは、まだ始まったばかりであった。

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